作品タイトル不明
58「方向性の違いじゃね?」
「あ、ちょっとタイム。ごめんね」
「お、おう」
ドン引きして言葉もない鬼たちに、夏樹は待ったを要求した。
動揺していたせいか、鬼たちはすんなり頷いてしまう。
そんな鬼たちには目もくれず、夏樹は仲間たちに振り返る。
「あのさぁ、小梅ちゃん、千手さん、祐介くんさぁ。新幹線の中で打ち合わせしたよね? 即席で付き合ってくれたしののんは仕方がないとして、なんで戦隊名が違うのかな? これは、マジで解散理由になるよ!?」
「なーんで、俺様たちが河童の信者になりたがっとる前提でチーム名決めとるんじゃ!」
「いやいやいやいや、美少女戦隊って、小梅ちゃん以外美少女いないじゃん! 千手さんだって、魔眼とか自分だけだし! 祐介くんに至っては、もう自虐ネタやめようよ! 悲しくなっちゃう!」
「河童だって俺様たちに要素ないわ!」
「いやいや、魔眼要素は外せねえだろう。俺のチャームポイントだろ!」
「異世界で辛い目にあったことアピールしないと、僕のアイデンティティが!」
「祐介くんは悲しいから一回カウンセリングしよ?」
「まあ、なんじゃ、きっと良いことあると思うんじゃ。リリスママ案件で」
「お前は京都から帰って精神科行ってこい!」
夏樹たちは喧嘩したり、慰めたり、忙しいようだ。
そんな夏樹たちから少し離れて夜空を見ている東雲に、鎧を身につけた鬼――星熊童子が声をかける。
「お、おい、安倍東雲!」
「自分?」
「そうだよ、お前だよ! ちょっと来い、ほら、早く!」
手招きされた東雲は素直に鬼たちに近づく。
すると、彼女たちがしゃがんで東雲にもしゃがみ込むように促した。
「なんやの、危機感がない鬼やね」
「いやいや、危機感がねえのは俺たちじゃねえから。お前らだから!」
「あたいらに奇襲しておきながらなんで方向性の違いみたいなことで揉めてんだよ!」
「べあべあ!」
「ほら、熊童子だってちゃんと打ち合わせしてこいって文句言ってるじゃねえか!」
「……残念やけど、僕にはべあべあしか聞こえんかったけどなぁ」
「――熊童子の声は、ハートがピュアな奴しか聞こえねんだよ」
「さ、散々人間食い散らかしとる鬼にピュアとか言われてもうた!」
「あんだと!? 人間だって人間を散々殺していたじゃねえか。ちゃんといただきますしてごちそうさましていた俺らの方がマシだろ!」
「面倒臭い鬼やね!」
東雲にとって命を奪うことにどちらもマシではないのだが、幾分話せるだけ星熊童子たちは厄介に思えた。
「まったく最近の若い奴はさ、鬼を信じないし、コスプレ扱いするし」
「この間、あたいの部下の鬼娘が人間襲ったんだけど、なんやかんやあって結婚しちまったんだぜ。人間すごくね?」
「べあべあ!」
「……なんで自分は君らとこんな談笑せなあかんの? ほんま人間と鬼娘が結婚しちゃったん?」
「マジだよ、まじまじ。先日、みんなで披露宴行ってきたんだぜ」
「……普通の人間みたいな生活しよって! ま、まさか式場で惨劇を」
「してねえから! なんならひとり五万ずつ包んだんだからな!」
「……べあべあ」
「金童子なんて、その鬼娘にほんのり恋心を抱いていたから、もう号泣だったんだぞ!」
「それこそ知らんよ!」
東雲は、なぜ自分は鬼と腰を下ろして話をしているのかわからなかった。
「つーか、あいつらはまだ内輪揉めしていやがるのか!」
星熊童子が、しびれを切らして叫んだ。
すると、円陣を組んで話をしていた四人の中から代表して、夏樹が前に出た。
「えー、大変残念ではありますが、方向性の違いで解散することになりました。長年の応援、心からありがとうございました。これからも俺たち個人の活動を見守っていただけたら嬉しいです」
「方向性の違いで解散したバンドみたいなこと言ってんじゃねえよ!」