作品タイトル不明
54「挨拶代わりの一撃じゃね?」①
「それでね、しののん。安倍家と茨木童子のどっちからぶっ殺す?」
「えー、あの、どうしたらええんやろうか?」
涙を流していた東雲だったが、困惑した顔をしてしまう。それでも、しばらく考えると、夏樹に告げた。
「茨木童子を先にした方がええと思う。安倍家は自分ひとりでも潰そうと思えば潰せるんけど、先に潰すと鬼に動きがバレてまう」
「了解!ってなわけで、裏京都行きまーす! しーくーよーろー!」
「では、案内するのじゃ! 鬼と妖怪が跋扈する――裏京都へ!」
玉藻前が、トンカツ屋の襖を開けると――向こう側は夜だった。
「ふわわぁ! しゅごい!」
「ふふふん。実を言うと、こちらのトンカツ屋は妾や酒呑童子のような京都妖怪でもそれなりの者が利用できるVIP御用達なのじゃよ。ゆえに、こうして異界にも簡単に繋がる」
廊下に並べてある靴をとって、夏樹は異界に飛び込んだ。
「ふぉおおおおおおおおおおおおお! 闇夜に真っ赤な満月! 最高だ! この世界を今から破壊すると思うと――滾るね!」
「破壊されたら困るんじゃが!?」
「ジョーク! 勇者ジョーク!」
宙に浮かび異界を見渡す。
山や川に囲まれた街並みは、いつかどこかで見た平安時代の京都のような感じだ。
そこに現代要素が混ざっていて混沌としている。
夏樹の目には、まるで人のように生活している妖怪や、牛や豚に齧り付いている鬼が目に見てとれた。
「ふう。どうやらここに河童さんはいないようだね。なら、話は早い」
「……そなた、相当目が良いのう」
「勇者ですから。きりっ」
「自分できりっとか言う子は初めて会ったんじゃよ。まあ、よいじゃろう。あちらに見える、武家屋敷があるじゃろう?」
北には大きな山と、山の麓に構える大きな武家屋敷があった。
「なるほど、あそこに茨木童子がいるのか。めちゃくちゃ強い霊気を感じるな。うん、かなり本気で戦う羽目になりそうだなぁ」
「……今の茨木童子の力を感じとった上で、その感想なのは恐れ入るのじゃよ。妾も、後先を考えなければなんとかなるかもしれぬが、それでも五分五分の賭けに近いところがあるんじゃから、おいそれと戦えんのじゃよ」
「玉藻ちゃんが戦う必要はないさ。戦いなんて、どうせ誰かを傷つけることしかできない馬鹿がやることなんだから」
「……なんじゃか、そなたは危ういのう。よければ、今回の件が片付いたらゆっくり遊びに来ると良いんじゃよ。妾が見る限り、なっちゃんは本当の意味での休息が必要に見えるのじゃ」
「うん。この件が片付いたら、また今度ゆっくり遊びに来るよ」
にこり、と玉藻の前に微笑んだ夏樹は聖剣さんを呼んだ。
(聖剣さーん! 出番ですよー!)
(わかってるわよ。ショタ夏樹を襲った犯罪者をぶっ殺すんでしょう)
(間違ってないけど、間違っている気がする! あと、ショタとか言うのやめてくれませんかね!? 異世界の聖剣さんからそんな俗っぽい言葉聞きたくなかった!)
(でも、腐った女の本に……)
(そんなの読んじゃらめぇ!)
そんなやりとりを念話でしながら、夏樹が虚空から聖剣を抜いた。
聖剣さんはやる気に満ち溢れ、紫電を纏わせ昂っているのがわかる。
「ほう。素晴らしい力じゃ。これほどの剣はそうそうなかろうて」
「でしょう。俺の自慢の――相棒だよ」
夏樹は自慢するように聖剣を軽く宙に投げると、槍でも持つように聖剣の柄を掴んだ。
そして、今できる魔力を限界まで高める。
「いきなり五割で行くぜぇえええええええええええええええ!」
「ちょ、ま」
「死に晒せ、このクソ鬼ども! ショタなっちゃんとショタ円ちゃんの仇討ちじゃぁああああああああああああああああああああ!」
これでもかと魔力を込めて、紫電から稲光纏う雷光を変化させた聖剣を、思いっきり投擲した。
――刹那、茨木童子が住むと言う武家屋敷の中心部分が大爆発した。
「……最近の子ってめっちゃ怖いんじゃが。あ、ちょっと出ちゃったのじゃ」