作品タイトル不明
52「裏京都ってテンション上がるんじゃね?」①
完全なる血統やら、美脚やらで混沌と化していた一同だったが、十五分の小休憩を挟んだとことでそれぞれ正気に戻り、再び座敷で顔を合わせていた。
「まず、じゃ」
口を開いたのは妖艶な美女となった玉藻前だった。
「妾たち妖狐と、妾の配下である妖怪たちには今回の一件に関わらせないと約束するのじゃ」
「――ありがたく」
玉藻前の決定に、安倍東雲が感謝と共に深々と頭を下げた。
「よいのじゃ、よいのじゃ。妾たちも鬼とはやりあってきたからのう、いなくなってくれるならせいせいするのじゃよ」
「……よくもまあ、それを俺の前で言えるな、クソババァ」
「お主がしっかり鬼を束ねとらんから悪いのじゃぞ、クソジジィ」
酒呑童子の嫌味に、玉藻前は鼻を鳴らして返した。
「鬼は跳ねっ返りが多いんだぜ。言うこと聞かねえ奴は最初から聞かねえっつーの」
酒呑童子は東雲に向く。
「ま、鬼というか、俺も関わらねえ。茨木童子だろうと、他のガキだろうと、殺したけりゃ殺しな。ただ、殺されて文句言うなよ。一応、強えぞ」
「感謝します」
東雲は静かに礼をした。
厄介な鬼と妖狐がノータッチであることは、動きやすい。
一番の懸念は酒呑童子と戦うかどうかなのだが、戦わなくて済むのなら戦わずにいたいだろう。
「なっちゃんや、そなたはどうするのじゃ?」
「俺?」
「そうじゃ。安倍東雲のプランが狂ったのはそなたが京都に来たからであろう? 酒呑童子は、トラブルがあって全盛期の力を取り戻してしまったのじゃが、手を出す気はない。ならば、そなたはどうするのじゃ?」
夏樹の答えは決まっている。
「――茨木童子をぶっ殺して、安倍家もぶっ潰して、円くんとちゃんと仲直りして八つ橋と七味とあぶらとり紙を買って向島に帰る!」
酒呑童子を対象から外してはいるが、他は最初と変わらない。
茨木童子は殺すリストに入れていたが、やりたい放題であることと、過去の因縁もあったので必ず殺す。絶対に殺す。どんな手を使ってでも殺す、と決めた。
安倍家は正直、どうでも良くなっているが、ついでに潰しておこうと思う。なくてもきっと困らないはずだ。
(……しののんなら安倍家がなくなっても、京都の霊能力者を仕切るだろうな。するかしないかはわからないけど、それだけの力はあるはずだから)
「いいのか、なっちゃん?」
「おっちゃん?」
「言っておくが、茨木童子は今のおっちゃんよりも強いぜ」
「あー、うーん。多分平気」
「……マジかよ」
「生け取りにしろとか、改心させろとかなら無理だけど、殺すだけなら……無茶すればいけるいける!」
「普通の人間は無茶しても勝てねえレベルなんだけどなぁ。ま、それならいいさ。ただ、茨木童子もただの馬鹿じゃねえ、いくつか力を隠している可能性もあるから気をつけろよ。ついでに、あいつの力を教えてやろうか?」
どこか試すような言葉をかけてきた酒呑童子に、夏樹は「いらない」と一蹴した。
「俺は敵がどんな力を持とうと、今まで戦い潰してきた。それはこっちでも変わらない。殺すもんは殺す。俺は勇者だから」
きりっ、とした顔でそう言い放った夏樹に隣に座っていた小梅が「とぅくん」となる。
が、もう何度目かわからないので誰もツッコミを入れなかった。
当然のように、夏樹のキメ顔もスルーだ。
「問題は、戦いの場じゃのう」
「面倒臭え。表で戦わせて問題になっても仕方がねえから、鬼の本拠地で戦わせればいいんじゃねえの。なっちゃん以外にも強えのがいるんだから、雑魚鬼は任せりゃいい」
「それもそうじゃな。ならば、特別に案内してやるんじゃ、――裏京都へ!」
「裏京都!? なにそれかっこいい!?」
京都ファンタジー増し増しの単語に、夏樹は、いや、千手と祐介も瞳を輝かせるのだった。