作品タイトル不明
50「テイスティングじゃね!?」
「えー、本日はお日柄も良いんじゃ。とりあえず、安倍家の終焉と、クソ茨木童子の最期、そして襲われたはずの夏樹がなぜ生きとるんじゃと疑問はあるけどこまけえことは気にしない方向で行くんじゃよってことを祝って、乾杯じゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
「かんぱーい!」
「うむ。いただくのじゃ!」
「ご相伴に預かろう」
トンカツ屋さんの一室を借りて、なぜか上座に座らされた夏樹の血を入れたハイカラなワイングラスを掲げて大天使、鬼、妖狐、小さいおじさんは乾杯した。
急遽、テイスティンググラスを用意しようとしたが、トンカツ屋さんにそのようなものがあるはずもなく、自らの影に手を突っ込んだ玉藻前がかなり前に織田さんから頂いたという舶来物のグラスを出した。
もうテイスティングの流れになってしまったので、「ま、いいか」と深く考えずに夏樹は手のひらを手刀で切ると、四人分の血をグラスに注いで回復魔法を施したのだ。
「まずは、俺様からじゃ! 一度味わっておるが緊張するのう」
恐る恐るグラスに口を近づけて、ぐいっと煽った小梅は静かにグラスを置くとタブルピースとなった。
「あへぇえええええええええええええええええええええええええ!」
「ああっ、小梅ちゃんがアヘ顔ダブルピースをしちゃった!?」
「いや、意味がわかんねえから!」
とても女性がしてはいけない顔をして叫んだ小梅に夏樹がときめくが、千手はそうじゃない、と冷静なツッコミを入れる。
その間にも、神々しい光を発し、小梅が純白の翼を広げた。
「うまいんじゃぁんほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「オーバーリアクションやねぇ……いや、これなんなん?」
「それよりも僕は玉藻前様がどんなアヘ顔を晒してくれるのか楽しみで、わくわくしているよ!」
口から閃光を吐き出した小梅の絶叫に、東雲はもうどういう反応をしていいのかわからない様子だった。
祐介は祐介で、小梅ではなく今か今かと玉藻前のアヘ顔を待っている。
「ま、まじかよ。おっちゃんも長く生きているが、完全なる血統の血は初めてだぜ。純血に近い人間は食らったことがあるが、あれ以上なんて想像できないぜ。まずは、香りから楽しませていただくぜ」
物騒な過去を語りながら、少し気取った感じで香りを嗅ぎ始めるのは酒呑童子だ。
「ふーむ。まず、濃厚な魔力がアタックしてくるな。次に、どこか優しい柔らかな甘味と、荒々しい血特有の香りがマーベラスだ」
「俺の血ってどんなことになってるの!?」
「では、いただきます」
一気に飲み干した小梅とは違い、酒呑童子は舐めるように小さく血を口に含む。
しばらく口の中で味わったあと、嚥下すると、次の瞬間、かっ、と酒呑童子の目が見開いた。
「嗚呼っ、きちゃうぅ、全盛期きちゃうぅううううううううううううううううううううううううううう! あ、全盛期きちゃった」
「きんもー」
「気持ち悪いな」
「せやね、悍ましいね」
「眼球が汚れちゃった」
おっさんのアヘ顔からの絶頂顔に、夏樹たち男性陣は心底気持ち悪いと感想を漏らした。
その間にも酒呑童子の額からは二本の角が伸び、霊力がこれでもかと爆発したように強くなるのがわかった。
本当に全盛期に近い力を取り戻したのかもしれない。
「では、次に私がいただこう」
雅也は体格が小さいため、小さな盃を用意してもらっている。それでも杯は大きく、よっこいしょと持ち上げて血を飲み干した。
「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 小さいおじさんなのに、ダイダラボッチになってしまうぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「えー!?」
雅也は言葉通り、みるみる大きくなっていく。
まさか本当にダイダラボッチになってしまうのか、とワクワクしてしまう夏樹だったが、残念だが、四十五センチほどで巨大化は止まってしまった。
とても残念である。
「つ、次は妾か……三人の反応を見ていると、血を飲むのが怖いんじゃが」
「そんなことありませんよ、玉藻前様! ささっ、ずいっと! ずいっと!」
「う、うむ。では――」
祐介が飲め飲めと言うと、好奇心のほうが勝ったのだろう玉藻前が夏樹の血を含んだ。
ごくり、と喉がなった瞬間、
「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
玉藻前のぺったんこな幼女ボディに、急激な変化が起きた。
ぼいん、きゅっ、ばーんっ、と効果音がつきそうなほど肉付きが良くなり、二十歳ほどの美女に成長してしまう。
その姿はまさにかつて傾国の美女と呼ばれるには十分過ぎるほど美しかった。
――アヘ顔を晒してなければだが。
「玉藻前様のアヘ顔きたぁあああああああああああああ! さりげなくほっぺにお髭がぴょこんとなったのも祐介くんポイント高いよぉおおおおおおおおおおお!」
「……絶好調だな、佐渡!」
「この子、こわっ」
人外娘が大好きな祐介には、玉藻前の今の姿は最高の一言だった。
だが、夏樹は違う。
異世界で無双した勇者はもっと違うところを見ていた。
「――まさかの美脚、だと!?」
巫女装束から覗く、すらりとした細く長い御御足に思春期中学生の胸は大きく高鳴るのだった。