作品タイトル不明
49「原因は俺みたいだけど被害者だからセーフじゃね?」
「な、なんや? どうしたんや?」
叫んだ夏樹たちに、驚く東雲たち。
夏樹は、正直焦った。
このまま知らぬ存ぜぬとしたいが、スルーしておくとあとでまずいことになるかもしれないと思い、
「――最初に言っておくけど、俺は悪くない!」
「はい?」
まず、予防線を張っておくことにした。
「どうかしたのかえ?」
「なーんか隠し事してるだろぉ」
急な夏樹たちの同様に、玉藻前と酒呑童子も怪しむような目を向けてくる。
(俺は悪くないもんね! むしろ、被害者だもんね!)
「えー、茨木童子さんの強化理由についてですが……」
「まさか、夏樹くんは何か知っとるん?」
「知ってるといいますか、なんといいますか」
「知っとるなら勿体ぶらずに教えて欲しい! この通りや!」
深く頭を下げた東雲に、夏樹はきまずそうに告げた。
「俺の血とか肉をもぐもぐしちゃったせいかも?」
「は?」
意味がわからないという顔をする、東雲、酒呑童子、玉藻前、そして雅也。
夏樹としても、自分が悪くないことは承知しているが、なんとなく言い辛そうだ。
「えー、実はわたくし……純血の人間なんです。あ、ちょっとエッチな響きの純潔じゃなくて、純粋な血と書いて純血といいますか、なんといいますか」
「――にいちゃん……もしかして完全なる血統なのか!?」
「うっす!」
遠回しな夏樹の物言いにすぐに気づいたのは、酒呑童子だった。
夏樹が肯定すると、酒呑童子だけではなく、東雲も、玉藻前も、雅也も愕然としている。
「馬鹿な! 完全なる血統は失われてはおらぬのじゃが、探して見つかる存在ではないのじゃ! それが、まさか、ここにいるなっちゃんであり、過去に茨木童子に襲われていたというのか!?」
「そうみたいっすねぇ」
「完全なる血統の血肉を食らったのなら、馬鹿みたいに強くなるのもわかるぜ。妖怪としての格が上がっちまったんだな」
「これは、あくまでも推測じゃが、茨木童子は完全なる血統の血の匂いに誘われたのやもしれぬのじゃ」
完全なる血統、パーフェクトブラッド、純血と称される、特定の種族が自身の種族の血だけを受け継ぐ混ざりもののない者を指す。
夏樹の場合は、純度百パーセント人間である。
その血は、翼を焼かれ失っていた天使小梅を全快させてしまうほどだ。
幼かったとしても、完全なる血統は完全なる血統であることには違いない。
茨木童子が幼い夏樹を襲い食らったのであれば、信じられないほどの強化が与えられたのも、大妖怪には納得できた。
「……まさか夏樹くんが完全なる血統やなんて」
「都市伝説よりも都市伝説ではないか」
東雲はもちろん、雅也もにわかには信じられないほどの衝撃を受けていた。
「信じられぬのなら、教えてやればいいんじゃ!」
「小梅ちゃん?」
「論より証拠じゃ!」
「えっと、つまり?」
何が起きるのかなんとなく嫌な予感がした夏樹に、小梅はにいっと笑って親指を立てた。
「――テイスティングじゃ!」
「いや、俺の血は酒じゃねえから!」