軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39「酒呑童子と玉藻前って豪華じゃね?」②

「酒呑童子のおっちゃんが人間に害を与える気がないのはわかった。玉藻前さんのことはよくわからないけど、偉い妖怪さんが酒呑童子のおっちゃんのことを保証してくれるならそれでいいよ。……万が一の時は両方殺せばいいだけだし」

「今、この子とても物騒なことを言った気がするんじゃがのう!?」

「気のせい気のせい」

夏樹のぼそりと呟いた台詞を聞き逃せなかった玉藻前が慌てるが、気にしないことにする。

「おい、由良。仮にも玉藻前殿を相手に」

「そこだよ!」

「どこだよ!?」

「玉藻前さんって九尾の狐さんだよね?」

「お、おう」

ちらり、と玉藻前に視線を向けると、彼女が肯定するように頷いた。

「栃木で殺生石になってるんじゃね?」

観光名所にもなっている殺生石を思い浮かべた夏樹に対し、玉藻前が、かっ、と目を見開き霊力を解放した。

「由良夏樹殿っ!」

「は、はい」

「それはそれ、これはこれ、じゃ!」

「う、うっす」

なにやら触れてはいけなかったようだ。

玉藻前も外見こそ幼女であるが、酒呑童子と同格であるようだ。

一度だけ膨れ上がった霊力は、酒呑童子に匹敵するか、超えるほどだ。

そしてやはり、彼女も神格を持っている。

(京都ってこわいなぁー。聖剣さん、いつでも力出せるようにスタンバイよろしくです)

(嫌よ。無駄な破壊活動に手を貸さないから)

(あれ? 聖剣さんにも誤解されてね?)

「あの、ところでさ」

小さく手を上げて、酒呑童子と玉藻前に夏樹は尋ねた。

「俺は結局誰をぶっ殺せばいいの?」

「さてはて……こちらとしては人間と鬼の小競り合いに介入するつもりはないのじゃが、酒呑童子……よいのか?」

「おう。つーか、安倍とにいちゃんが動いてなければ、遅かれ早かれおっちゃん自身がガキどもを殺していたぜ」

「つまり、酒呑童子のおっちゃんの子供を殺せばミッションコンプリート?」

「いや、ついでに安倍家も滅ぼしておけ」

「それはもうやることリストに入っているから大丈夫」

「……やっぱりこの子怖い」

「でも、なんで酒呑童子のおっちゃんまで安倍さん家を滅ぼせって? なんかされた?」

「ちげえよ。俺に何かできる奴なんて安倍東雲くらいだろ。そうじゃなくてな、安倍家現当主は鬼と繋がってんだよ」

「ほえー?」

おそらく安倍家と安倍東雲たち兄弟は別物だろう。

「酒呑童子。その言い方では、悪く聞こえすぎじゃ。由良殿、京都の妖怪は人間と共存を願っておるんじゃよ。少なくとも、妾たちはそう考えているし、酒呑童子のように人として生きている場合もある」

「遠野のぬらぬらりひょんも同じこと言っていたよ」

「あやつらも妖怪の未来を考えているのだろう。じゃが、鬼や妖怪の中にも跳ねっ返りはおる。人間は食いたい。弱者を踏みつけたい。下っ端ほどそういう思いじゃ」

「それはそれでいいんだよ。俺らに従えないのなら、殺せばいい。妖怪なんてそんなもんだ。だが、ちとまずいことになった」

「安倍家の当主が一部の鬼どもと手を組んだのじゃよ」

はて、と夏樹は首をかしげる。

それは共存という意味でいいのではないか、と。

「京都の霊能力者には、妖怪をすべて殺すという強硬派と共存できる妖怪とは手を取り合って生きる穏健派がいるんだがなぁ」

「その穏健派が、じつは口だけで跳ねっ返りの妖怪どもと手を組み金稼ぎをしようと企んでおるのじゃよ」

「……なっちゃんポイントマイナス一万」

「まあ、強硬派はおっちゃんのことも殺したいが鬼は全部殺してぇ。穏健派はいうことをきかねえおっちゃんやその他妖怪どもを殺してぇ。だから、必ず俺の名前が出てくるんだよ! おっちゃん迷惑!」

「……なっちゃんポイントマイナス六千万」

「おいおい、待ってくれ」

待ったをかけたのは千手だった。

「妖怪と手を組んで金儲けってどういうことだ?」

「……あまり妖怪を誤解されたくないのじゃが……。好き勝手したい妖怪どもと霊能力者が組むことで、どちらにとっても邪魔な鬼や妖怪を殺す。他にも、裏家業として妖怪に人を殺させる。食ってしまえば証拠も残らん。霊能力者と繋がっておるから、追われることもないんじゃ」

「クソだな」

「さらに言うのなら、鬼を使役して院に喧嘩を売って霊能力者のトップに立ちたいと考えておるんじゃよ」

「――本当にクソだな。絶対に無理だろ。院なめんな」

「じゃろうなぁ。だが、現安倍当主は俗物なんじゃよ。自分達と手を組んでくれるならば、人を食おうと関係ないんじゃ」

夏樹は立ち上がる。

とりあえず、安倍家が悪い鬼と組んで好き勝手やろうとしていることはわかった。

その煽りで、酒呑童子の名は利用されていることも理解した。

「一応、聞いておくけど、そのクソ安倍さんに手を貸す下っ端はさておくとして、強い鬼ももちろん関わっているよね」

「……そこで俺のガキどもが出てくるわけだ。あいつらにとっておっちゃんは目の上のたんこぶだからなぁ。人間利用してなんとか力を削って殺したいんだろうなぁ」

「なっちゃんポイントマイナス三億! もう殺す。絶対殺す! そんな妖怪と人間の俗っぽいことに俺を巻き込まないでくださる!?」

「おっちゃん的にも同じなんだけどなぁ」

「わかった。一緒に安倍家を更地にして、鬼どもを血祭りにあげよう!」

「……酒呑童子でもこんな物騒じゃねえし」

「……玉藻前でもこんな物騒じゃないんじゃが」

結局のところ、人間も鬼も私利私欲だったことが判明したので、夏樹は考えるのをやめて殺すことを決めた。