作品タイトル不明
36「テンション爆上がりじゃね?」①
佐渡祐介にとって、由良夏樹、七森千手、三原一登、神奈征四郎、小林蓮は大切な友人だ。
夏樹と千手が京都に戦いに行くのなら、友として一緒に行くことなど躊躇いはない。
異世界に召喚され、人間の負の部分をこれでもかと見せつけられたことで人間不信に陥ってもいた。
そんな彼を救ったのは同じ境遇の夏樹であり、また心優しい友人たちであった。
だからこそサキュバスの女の子を紹介してもらえるかもしれない場面で、夏樹たちを選んだ。
祐介は知っているのだ。
夏樹たちと出会えたことは、奇跡的なことであると。
だから京都に来た。
鬼だろうとなんだろうと、戦ってやろうという気概だ。
遠野の妖怪の村で、妖怪と人間の関係性に動揺は見せたが、次はそんなことはしない。
友のために、戦うと決めたのだ。
――と、それはそれとして、京都の妖怪娘との出会いも期待していた。
そんな祐介の耳に聞き逃してはならない言葉が聞こえた。
――玉藻前。
九尾の狐と言われる、大妖怪である。
おそらく狐耳と九本の尻尾が生えた女の子だ。
間違いない。
為政者を惑わす美女だ。
――つまり、めっちゃ会いたかった。
「た・ま・も・の・ま・えっ! いえっ、ふぅうううううううううううううううう!」
「ひえっ」
これでもかとテンションを上げた祐介が仲居さんに壁ドンする。
仲居さんこと、花川水江二十六歳は整った顔をした青年の壁ドンに胸をときめきかけたが、奇声を発した祐介の行動を思い出す、恐怖のほうが勝った。
「あ、あの、近いです」
「た・ま・も・の・ま・えっ! ひゃっはああああああああああああああああああああ!」
「ぴえっ」
仲居さんがあまりにも可哀想だったので、夏樹と千手が祐介を羽交い締めにして引き離すと、小梅が何度も頭を下げて謝罪した。
「……なんじゃか本当に妖怪娘フェチがすまんのじゃ。んで、九尾には会いに行けばいいんか? それとも向こうがこっちへ来るんか?」
「え、えっと、あの、お座敷にいらっしゃいます。あちらの方が広いので、足を運んでいただけると助かります」
「うむ。わかった。では、行くとしようかのう。ほれ、酒呑童子。あと、そこの妖怪娘フェチを連れていくんじゃ、ギャラクシー河童勇者と呪われし堕天の魔眼を背負いし者」
「カッパー!」
「ちょ、待ってくれ、小梅の姉さん。なんで俺の中学時代の黒歴史を……」
元気よく返事をする夏樹と、若気の至りを知られていることに動揺を隠せない千手が「くけけけけけ」と感極まって壊れた笑いが止まらない祐介を引きずっていく。
「……濃いなぁ。酒呑童子が働いているのかよっ、とか人食べてない理由はとか、好きなお酒は、とかなんか驚くことなんかあるじゃん? ないんだぁ。なんかショックっていうか、濃いなぁ」
癖の強い夏樹たちに、さすがの酒呑童子も困惑顔だった。