作品タイトル不明
間話「青森はやっぱり平和じゃね?」
青森某所。
七つの大罪の強欲を司る魔族マモンは、上司である魔族サマエルと一緒にレジャーシートの上でおむすびを食べていた。
「まもんまもん! やはりおにぎりは日本人の魂でまもんまもん!」
「いや、お前は日本人じゃねえだろ」
「ふっ。これだからさまたんは。私の魂は日本人でまもんまもん!」
「それこそ嘘に決まってんだろ!」
モンペにヤッケ姿のさまたんが水筒から冷たいお茶を注ぎながら、絶好調なマモンにツッコミを入れる。
スーツにヤッケを装備したマモンは美味しそうにおにぎりを食べては、グルメ漫画のように鬱陶しい感想を宣う。
その理由は、簡単だ。
マモンのガールフレンドである真門亜子が作ってくれたお昼ご飯なのだ。美味いに決まっている。
「……ここに亜子さんがいたらうーまーいーぞー、と口からビームするのにまもんまもん」
「いや、すんなよ! いくら亜子ちゃんが魔族だって受け入れてくれたからって、うっぜえなぁ」
実を言うと、本格的に交際を始める前に、マモンは誠意として自らが魔族であると言うことを打ち明けた。
ついでにさまたんがサマエルであるということも、だ。
だが、亜子は驚かなかった。
いや、驚いたには驚いたのだが、もともとサマエルとマモンが人外であるというのはなんとなく察しられていたらしい。
なんでも、サマエルが農業を始めたとき、猪相手にワンパンしたことで「あ、なんか人間じゃなくね?」と噂があったらしい。
近所に猪が出るたびに、サマエルが一撃で仕留めていくことで、噂から確信となった。
ただ魔族ではなく、山神かなにかの部類だと思われていたようだ。
もともと山などの自然には神がいると教えられていた年寄りたちは、サマエルをありのまま受け入れることにしていたのだ。
そんなサマエルの家に住み着いたのだから、マモンだって普通ではないと察したのだ。
そんなマモンに孫を紹介するおばあちゃんも良い性格をしているというか、胆力があるというか、である。
亜子はマモンが七つの大罪の魔族であるマモンであることに驚いたのだが、次の瞬間「じゃあ、サタンとかルシファーとかもいるんですか!?」と興味深々。
やはり日本ではマイナーか、とマモンがその日はやけ酒をし、もう一回くらい反旗を翻そうと企んだりもしたのはご愛嬌。
だが、隠し事がなくなったおかげでマモンは真っ直ぐに亜子とお付き合いできることとなった。
「……まもんまもん、ところでさまたん様」
「あんだよ?」
「あちらの畑の近くで昼食を取っている少年少女たちはどちらさまもんまもん?」
「ああ、ちょっと飲みに歩いたときに、絡まれてな。暴走族らしいんで軽く絞めてやったら、舎弟にしてくださいとか言ってきたから更生を兼ねて働かせてみた」
「ま、まもん!? で、では、インドネシアから出稼ぎにきているモハマッドくんの立場は!?」
「どっちもちゃんとするよ! お前、モハマッドくんと仲良いよな! こないだ恋バナしてたもんな!」
「まもん! 男子の話を女子が盗み聞きしないでくださいまもんまもん!」
「男子中学生みたいなことを言うなよ!」
おにぎりを食べ終えると、サマエルは立ち上がる。
「午後は動画撮影だ。数本まとめて撮るぞ!」
「まもん?」
「動画を編集して、時間ができたら、畑はお前に数日任せる」
「まもん!? まさかついにさまたんさま!?」
「ああ、私はかずたんに会いに行くぜ!」
「……まもん。会いに行くことを決めただけでドヤ顔されてまもんまもん」
「いいじゃん! 一大決心だよ!」
――元暴走族の少年と少女を交えた動画は視聴者を感動させ、バズった。