作品タイトル不明
28「円と東雲のお話じゃね?」①
勇者夏樹一行が京都に向かっている頃。
「あれ? ボク……いつの間に寝ておったんや?」
安倍円は目を覚ました。
自室の、自分のベッドの上だが、円には自分が眠った記憶がない。
「最近疲れとったからか?」
不思議と体調は良い。
結構な時間を寝ていたようで、少し腰や首が痛かったが、問題はそのくらいだ。
ベッドから静かに起き上がり、リビングに行くと、長男安部東雲がいた。
「……兄貴」
「円。ずいぶん寝とったね」
「あ、うん。来てたなら起こしてくれればええのに」
「可愛い弟が寝とるところを起こすような鬼畜な真似はせえへんよ。それよりも、ちょっとお話せんか?」
「かまへんけど」
キッチンの冷蔵庫を開けると熊崎の母が作ってくれたと思われる朝食がラップを掛けておいてあった。
あとで食べようと思い、まずは兄と話をするため冷えたミネラルウォーターを取り出しひとくち飲む。
「兄貴、なんか飲むん?」
「お構いなく」
「ならええけど」
安部兄弟はそれぞれ別室で暮らしているが、兄弟が集まれるようにリビングには違いはあれ、人数分のソファーが置かれている。
円は東雲が座るソファーの隣に腰を降ろした。
「それで、話ってなんや」
「昨日のことはなんか覚えてるん?」
「……熊と話をしていたんやけど、なんか眠うなって」
「そか。それならええんや」
「なんや……そんなこと聞く必要あるんか?」
「お兄ちゃんとして弟がどんな一日やったか気になっただけやん。それよりも、真面目な話をしよか」
円は身を固くした。
真面目な話と言われ、真っ先に思い浮かぶのは、兄と茨木童子の関係だ。
先日、ふたりの関係を知ってしまったときは、本人が言い訳する間も無く、去ってしまったが、冷静になっている今なら詳細を聞きたいと思う。
兄が鬼と仲睦まじくなろうと、円のすべきことはかわらない。
きちんと考えれば、ムキになることではなかったと反省している。
「真面目な話ってなんや?」
円の問いかけに、東雲は冷たい笑みを浮かべた。
「――安部家の老害どもを全部排除しようと思うんや」
「――は?」
予想していなかった東雲の言葉に、円は目を丸くし、ペットボトルを落とした。