作品タイトル不明
24「炒飯と餃子は最高じゃね?」③
「……夏樹、座りなさい」
「……はい」
ビールを置いて、台所に移った母が椅子に座ると夏樹も座るように促した。
なぜか小梅たちもテレビを消して、それぞれ正座して姿勢を正す。
助け舟を出してくれる様子はない。
「この間、京都のことを聞いたからおかしいと思っていたわ。夏樹の行動力を考えると、もしかしたら京都に行くと思っていたけど……はぁ。許可を取るだけマシだと思うべきか」
「……ごめんなさい。だけど、俺、京都に行かないといけないんです」
「ちゃんとした理由があるのよね?」
夏樹が困る。
母に、酒呑童子をぶっ殺してくる、などとは口が裂けても言えないし、言ったところで信じてもらえるとは思えない。
(どうしよう? おい、小梅ちゃんも銀子さんも視線逸らさないで! 唯一、目を合わせてくれているリヴァ子さんは何のことかわからないで首を傾げているし! 神よ! あ、ゴッドじゃなくて、息子の方! 会ったことないけど助けて!)
心で神に祈ってみるも、反応はない。
どうやら本当に神々は人間に興味がないようだ。夏樹は絶望した。
「京都の平和を守りに」
「……私は真面目に話しているのだけど」
「……昔に会った、円ちゃんに会いに」
「居場所がわかったの?」
「うん。偶然、再会したっていうか、お兄さんとお姉さんとも会った感じかな。で、なんか向こうでちょっとゴタゴタしているみたいだからちょっと力になってこうようかなって」
「嘘じゃないでしょうね」
「うん、うん。本当、本当!」
母は腕を組み、しばし考えるように目を閉じた。
静寂が由良家の茶の間を包む。
「……夏樹の目を見れば、嘘じゃないのはわかったわ。男の子はあっという間に成長するものね。きっとお母さんには言えない理由もあるんでしょう」
「……お母さん」
「夏樹がしたいことをしなさい。ちゃんと無事に帰ってくるのよ――なんて、ドラマみたいなことを言うとでも思っていたの?」
「ふえ?」
立ち上がった母が夏樹の顔面を掴む。
ぎりぎりと力が入り、夏樹の顔に砕けそうなほど痛みが襲う。
「いたたたたたたたたたたたたたた!」
「自由業の方の事務所に殴り込んだ時も、高校に殴り込んで不良生徒のズボンを脱がして回った時も、大学生を泣かすほど喧嘩した時も、誰かのためになにかをしている子なのはわかっているけど、よりによって京都って! 小さい頃に怖い思いして記憶まで失ってるのになにをしようっていうの!?」
「お、男の子にはお母さんに怒られてもやらなきゃならないことがあるんです!」
「文化財を壊したら弁償なんてできないのよ!?」
「なんで俺が文化財壊すの前提で話をしているの!?」
「夏樹のことだから、最悪国宝を燃やすくらいのことをするかもしれないじゃない!」
「俺はどこの蛮族だよ!?」
抗議する夏樹だったが、一登を含めた小梅たちが春子に同意するように「うんうん」と頷いていたので、夏樹は泣いた。
■
数分後。
「あ、あのさ、俺の頭ひょうたんみたいになってない? 平気?」
畳の上で頭を抱えている夏樹を見下ろしながら、母がため息をつく。
「はぁ。まったく、家出みたいに京都に行かれても仕方がないから、今回は見逃してあげる。その代わり、やりすぎない! いいわね!」
「へい!」
「まったく調子がいいんだから。ちょっと心配だから、蘆屋くんに連絡して京都滞在中に見張ってもらおうかしら」
嘆息する母だったが、なんとか京都行きは許可された。
(京都の鬼ども……この痛みもすべてお前らのせいだ。この恨みの怖さをとくと思い知れ! これから京都に訪れるのはただの勇者ではない! ギャラクシー河童勇者YURA・NATSUKIだ!)
だが、夏樹はものすごく京都の鬼たちを逆恨みしていた。
■
同時刻。京都某所。
「おいおい、金童子のやつ死んじまったぞ」
「ふんっ。あんな雑魚、あたいら四天王のなかでも最弱だからな! 人間なんかに負けてなさけねぇ」
「べぁあああああああああああああああああああああああ!」