作品タイトル不明
22「餃子と炒飯は最高じゃね?」①
「ただいまー」
帰宅した夏樹は、うがい手洗いをすると、一足先に帰宅していた小梅たちがいる茶の間に向かった。
「おう、遅かったのう。今日は、炒飯と餃子じゃぞ」
「小梅さんと一緒に頑張って餃子を包んだっすよ。味わって食べてくださいっすね」
「マジ!? 楽しみだなぁ」
小梅と銀子が包んでくれた餃子が楽しみだ。
できることなら、一緒に包みたかった。
間に合わなかったのは金童子のせいだ。酒呑童子ども、本気で許さねえ、と夏樹は笑顔を浮かべながら内心で憤る。
「炒飯はフライパンでみんなの分をまとめて炒めて、餃子はホットプレートで焼くみたいだよ」
水無月家から一緒に来たようで、一登がピンクのふりふりエプロンを装備して台所から声をかけてくる。
彼の隣では、サタンが同じくフリフリのエプロンを装備して、本格的な中華鍋を振るっていた。
由良家のキッチンはIHなのだが、どうやらガスコンロをどこからか持ってきたようだ。
なんとなく禍々しい雰囲気がするので、魔界製かもしれない。だが、そっとしておくことにした。
「今宵はビールが楽しみじゃのう」
「私の胃袋が麦汁を求めて唸っているっす」
「こーの、飲兵衛さん!」
小梅と銀子はホットプレートの温度を調節しながら、触るのが怖くなるほど薄いグラスを持って飲む準備をしている。
毎日楽しそうだなぁ、と夏樹は思う。
いつか自分もこういう大人になるのかな、と少し楽しみであり、不安であった。
「あれ? そういえば、千手さんと祐介くん、征四郎さんと義政さんがいないんだけど。帰っちゃった?」
「なんで、あの小僧にさんづけなんじゃ。いや、無駄に風格があるので、俺様もついさん付けしてしまいたくなるんじゃが」
「あの子は転生者で間違いねえっすよ! 中身は三十くらいの過労で倒れたサラリーマンっす」
「それならもっと無双してそうじゃない!?」
千手と征四郎は、義政少年を連れて観光がてら夕食に向かったそうだ。
さすがに由良家に押しかけることはできない、と言ってまた後日、一緒に食事をしようと言っていたようだ。
スマホを見れば、そのような旨のメールが入っている。
祐介は家族と一緒に、食事らしい。彼も、異世界のトラウマで引きこもっていたこともあるので、家族に心配をかけたくないそうだ。
「そういえば、ママから連絡があったんじゃが」
「ママってリリスさん?」
「そうじゃ。祐介に紹介するサッキュバスどもの面接が終わったようじゃぞ。あとは祐介の選びたい放題らしいようじゃぞ」
「なにそれしゅごい」
「サキュバスさんたちはそんな扱いでいいんすか?」
「サキュバスもなぁ、あやつらなんだかんだいって人間が大好きなんじゃよ。下級淫魔と違ってときめいた相手としかにゃんにゃんせんのじゃ」
「……にゃんにゃんって、小梅さん……いくつっすか?」
「紀元前生まれじゃけど!」
「なんかすんません」
小梅と銀子のやりとりを笑って見ていた夏樹は、ジャックとナンシーがいないことに気がついた。
「あれ? ジャックとナンシーは?」
「グレイカップルなら、パピーからの通信があったようじゃぞ」
「ご飯は先に食べてほしいそうっす」
「きっと、宇宙海賊が俺たちに潰された仕返しに、徒党を組んで地球に来てるんだよ! しかたがないから、宇宙河童勇者ジェームス・N・Y・カッパー二世の第二弾が始まるみたいだね」
「ジェームス・N・Y・カッパーってなんじゃ!?」
「宇宙河童勇者って意味わかんねーっすから!」
「ちゃんとファーストシーズンを観てから、セカンドシーズンを観てね!」
「……夏樹は河童にどんな想い入れがあるんじゃ?」
「正直、ちょっと引くっす」
「なん、だと」
乙女たちには少年心が理解されないのだと、夏樹は少し寂しい気持ちになった。
今度、河童さんたちを家にお招きする計画を進めるにはもう少し理解を深めていただいた方がいいだろう。
「ご飯できたわよー」
「……仮にも魔王がお母さんみたいにしてるのってどうっすかねぇ」
「……娘的には無しじゃ、と言いたかったんじゃが、クソ親父は昔からこんな感じじゃ」
「サタンさん……もっとイメージ大事にしてほしいっす」
銀子と小梅の感想を気にせず、サタンはテキパキと一登と一緒に食事を並べている。
「ちょっと待たんかい、くそ親父。まだ春子ママが帰ってきとらんじゃろ」
「ふっ。甘いな、小梅たん。春子さんの匂いが近づいてくるのが、この魔界の王の嗅覚を持ってして把握済みだ。三、二、一、――カモン!」
「ただいまー! あら、いい匂い」
サタンの言葉通り、春子がぴったり帰宅した。
これには娘もドン引きだ。
「きんもー!」