軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15「安倍さんが帰るんじゃね?」

「さてと、院の霊能力者と自分は相性が悪いんやけど、君らは別や。みんなええ子たちやから、好きになってもうたよ」

「そりゃありがとう」

「できるんなら、この後、飲みに行きたかったんやけど、そろそろ京都に戻らんとね。こんな自分やけど、いるといないじゃ違うんよ」

だろうな、と夏樹は東雲に反論しなかった。

安倍東雲の霊力は凄まじいものがある。

会話をしながらずっと探っていたが、夏樹の魔力ほどではないが、それに準じる霊力を持っている。さらに言えば、すべてを探れたわけではない。

場合によっては、魔力と霊力の違いがあっても、夏樹と同等の可能性がある。

肉体的にも、魔力的にも全盛期には及ばず、成長途中の不安定な夏樹に対して、東雲の力は安定しているように思われる。

本気で戦えば、間違いなく殺し合いだ。

そんな東雲が京都にいれば、鬼だけではなく霊能力者たちにも制止力となっているのだろう。

「ほれほれ、音叉、きらら、いつまでも妄想に耽っとらんで正気に戻らんかい」

未だぶつぶつ呟きながら妄想に耽っている妹たちの頭を、割と強めに引っ叩くと、ふたりははっとした。

「あ、あら? 三人の子供に囲まれて幸せな生活をしていたのに」

「あれ? ひ孫に囲まれて大往生しかけていたんだけどなぁ」

「……妄想力凄まじすぎへんか? お兄ちゃんはふたりが心配やわ」

呆れた東雲は立ち上がり、まず水無月姉妹に深々と頭を下げた。

「不作法に現れた自分を家に招いてくださり、感謝します。安倍家は、水無月家になにかしようなど一切思っておらへんので、できればこれを機にお付き合いいただけますと幸いです」

「……母に告げておきます」

「ほんま、ありがとうございます」

もう一度、頭を下げると、東雲は夏樹たちに向いた。

「君らのこと気に入ってしもうたから連絡先を教えてくれへん? 霊能とか抜きにして今度遊ぼうや。夏樹くんには円の件で話もしたいんし、ええやろ?」

「京都観光は任せたよ」

「ははは、任されました。あ、そうやった。これお土産。この間、八つ橋気にいってくれとったみたいやから、今度はお饅頭と、硬い方の八つ橋や。みんなで食べてや」

「おおっ、これが伝説の硬い八つ橋!」

「いや、伝説ではないんやけどね」

夏樹たちは東雲と連絡先を交換した。

特に夏樹は、円と自分に何があったのか気になってもいたのでちょうどよかった。

「ほな、自分らはこれで。そうそう、月読命様に捕らえられた強硬派に関してやけど、奴らは結構あくどいことをしとる子たちでなぁ。鬼に復讐心を持つ子らなんやけど、それはそれ、これはこれやから、月読命様にお任せします。落ち着いたら、ご挨拶に参りますゆえ、よろしゅうお願いします」

天照大神にも深々と礼をしたのだが、彼女は「大蛇、大蛇、うへへへ」と意識が飛んでいるので、聞こえていないようだ。

もしくは、先ほどの発言は月読がこの場を見ている可能性を考えて、口にしたのかもしれない。

東雲は妹たちの襟首を掴んで庭に出ると、夏樹たちに向かい飄々とした笑みを消した。

「君たちのことは好きんなったから、忠告しておくんよ。――しばらく京都には来たらあかんよ」

それをどういう意味なのか、と問いかける前に東雲は炎に包まれる。

「ほな、皆さんさようなら。またお会いしましょ。――飛べ、朱雀」

「こけぇええええええええええええええええええええ!」

「え、ちょ、朱雀ってあの朱雀!? 朱雀ってこけえええええでいいの!? 鳴き方それでいいの!?」

夏樹のツッコミに返事はなく、東雲ときらら、音叉は炎の翼を羽ばたかせ空へ消えていった。

「……待って! 朱雀さんがその鳴き声でいいのぉおおおおおおおおおお!?」

青空に手を伸ばした夏樹の問いに応えてくれる者は誰ひとりとしていなかった。