作品タイトル不明
14「祐介くんが嫉妬じゃね?」
茨木童子犯人説に慌てたのは安倍東雲だった。
「彼女はそんな子ちゃうよ」
「え? なんで庇うの?」
「いばちゃんは、とても心の優しい女の子や」
「いばちゃんって」
「あんな心の優しい子には出会ったことはないんや。人でもあんな心が美しい子はおらん」
力説する東雲に向かって、夏樹は指を指して叫んだ。
「この人、籠絡されてるぅううううううううううううううううううう!」
「ちゃ、ちゃいますって。そんなんやないです。そりゃ、カップルチャンネル作って動画配信しようとしたんけど、円に見つかって延期になったし」
「……円くんが鬼に襲われているのに鬼とカップルチャンネル始めようとするなよぉ」
京都にいる円を、夏樹は不憫に思った。
「そりゃ、円からしたら面白くないやろうけど、鬼が全部悪いわけやないんや」
「なにを根拠に?」
「いばちゃん――茨木童子は、円の命の恩人であり、酒呑童子を裏切り自分らに情報をくれる大事な女性や。最初は利用してやろうと思ったくらいやったけど、次第に惹かれ合ってもうた」
拳を握りしめ、まるで演歌でも歌うように茨木童子とのことを語ろうとする東雲をどうすればいいのか悩み、一登たちに助けを求める。
だが、一登も困り顔であり、千手は「しーらね」と突っ込む気力すらないようだ。征四郎は「いや、俺が男女に関してなにも言えん」と控えめに、義政少年も急に「子供だから僕わかりません」と頼りにならない。
そして、
「茨木童子といえば、酒呑童子と並ぶ強さを持つとか言われる鬼の中の鬼! そんな茨木童子が女の子で、しかも恋仲だとぉおおおおおおおおおおおおおおお! 羨ましい、妬ましい、うらめしいぃぃいいいいいいいいいいい!」
人外っ子大好きな祐介に至っては、嫉妬心から血涙を流してダークサイドに堕ちてしまいそうな勢いだった。
(リリスさん! 早く祐介くんに魔族っ子を紹介してあげてください!)
小梅の母リリスが、心の傷ついた祐介に魔族っ子を紹介してくれると約束したが、まだ数日。厳選に厳選を重ねているようで、まだ連絡はない。
遠野の妖怪の里を満喫して少しリフレッシュできた祐介であるが、ここにきて嫉妬心から再び闇堕ちしかけている。
「恋仲なんてそんなやない。自分といばちゃんは……プラトニックな関係なんや」
「自慢かこらぁああああああああああああああああああ!」
「落ち着け、祐介。ステイステイ! つーか、お前まで荒ぶったら収拾がつかねえじゃねえか! 真面目な話を真面目な雰囲気でしようって誰も思わないのか!?」
「きゅぺっ!?」
東雲に飛びかかろうとする祐介を千手が背後から取り押さえ、締め落とすことに成功する。
座布団を枕がわりにして、そっと祐介を横たえた。
「えっと、同級生を紹介しようか?」
水無月澪が祐介を憐れんだのか、小さく手を上げて提案してくれるが、夏樹と千手は残念そうに首を横に振った。
「ありがとう、澪さん。でもね、祐介くんは人外っ子専門なんだ」
「普通の人間には興味がないんだよ」
「……そ、そっか、大変だね」
人外っ子に入れ込んでいる祐介に、人間は興味の外だろう。
夏樹と千手が代わりにそっと返事をしておいた。
「佐渡祐介くんやっけ? この子も面白い子やねぇ。鬼の良さがわかるなんて、話が合いそうや。意識取り戻したら鬼っ子紹介したるって言っといてあげてや」
「いや、余計なこと言わなくていいから! あんたは黙ってろ!」
同志を見つけたとばかりに祐介に微笑んでいる東雲に、夏樹は座布団を投げつけた。