作品タイトル不明
8「温泉できゃっきゃうふふじゃね?」①
「はぁはぁ、やべえぜ。サウナで一登きゅんがタオル一枚で男たちと一緒にホットになってるとか……お天道様の日差し強くなっちゃうっ、らめぇ!」
「……こんなんが太陽神とか、日本がかわいそう過ぎるじゃろ。ゴッドとええ勝負じゃて」
水無月家の露天風呂に、天照大神をはじめ、小梅、銀子、水無月澪と都、そして安倍音叉ときららも浸かっていた。雲海は「若い子たちで楽しんでくださいませ」と言って下がっている。
普段は生まれたままの姿で入るお湯も、男性陣が近くにいるからと用意されたスクール水着を着用の上で入っている。
「照子ちゃん、サウナ覗くっすか?」
「いいっすねぇ! あ、いえ、一応、太陽神としての威厳や誇りもありますので、それはちょっと」
「いや、反射で返事しとるじゃろう。あと、おどれのどこに太陽神の威厳と誇りがあるんじゃ? 他の太陽神に謝ってこんかい!」
『こうめ』と書かれたゼッケンを縫われたスクール水着を装備した小梅がお湯を天照大神にぶっかけた。
天照大神的に、一登のサウナを覗きたい気持ちはあるようだが、ぎりぎりの範囲で神としての体面を保つことができていた。
「……しっかし、この腹の出た姉ちゃんがマジで天照大神様かよ。やべ、泣きそう」
「おっと、感動して泣いてくださるのは嬉しいですね。サインまでならしてあげましょう」
「……こんなんが天照大神様かぁ。ショックだ」
「逆の意味での涙だった! というか、この子、腹出た姉ちゃんとか言ってるし! 不敬です!」
「安倍音叉……天照大神様は神代の時代からお腹出てるから問題ない」
「昔からかぁ、そっかぁ」
「澪さん!? 自分だってさすがに神代の時代はすらりとしていましたよ! 食っても太るもんがなかったですからね!」
確かに神代の時代にはジャンクフードもビールもなかったので、天照大神の腹も当時は出ていなかったのかもしれない。
「……ちゅーか、銀子」
「なんすか、小梅さん」
「安倍のしののののののがやってきたんじゃが、安倍円と夏樹の関係って言うんじゃろうか?」
「あー、そうっすよね。安倍しのののののののさん的には夏樹くんと敵対するつもりはないみたいっすから、安倍円くんの幼馴染みだったって事実を知ったらどうするんすかね。円くん的にも鬼に憎しみを向けずに済むと思うんすけど、問題は」
「なーんで死んだと思われている夏樹くんが生きてるっすかよねぇ。本人がジャックさんパワーでも思い出せなかったっすから、揉めそうな予感がするっす」
とはいえ、京都には安倍家は関係なく酒呑童子をはじめとする鬼たちと戦う派閥があるので、戦いは終わらない。
安倍家だって、酒呑童子を倒すことはしたいだろう。
安倍円も、夏樹が死んだと認識しているのに、生きていましたと言われても納得できないだろう。
「……京都で夏樹を襲ったちゅう鬼を探し出してなにがあったのか吐かせる必要があるんと思うんじゃが」
「そうっすね。円くんも複雑でしょうねぇ。ずっと大事に思っていた幼馴染みが生きていて、なぜか姉が一目惚れとかどんなカオスっすか」
「……さすがに可哀想になってくるのう」
「そしてさらに弟妹丼の可能性も。妄想が滾りますなぁ。でゅふふふふふふふ」
「きんもー」
銀子とそんなやりとりをしている小梅ではあるが、気になるところもある。
安倍円だけではなく、安倍東雲や安倍家の人間が夏樹のことを死んだと思っている。
夏樹にも何かに襲われた記憶もあり、春子も夏樹が血まみれであることを見ているし、精神的に参っていたと言っている。
ということは、間違いなく夏樹を襲った『何か』はいる。
(だが、それだけじゃないじゃろうな。夏樹が子供の時なら、魔法なんぞ使えんじゃろうし、ならば俺様たちが知らぬ誰かの介入があった……と考えるのが普通なんじゃが……考えても無駄じゃろうなぁ)