作品タイトル不明
4「魅了が効くわけがなくね?」②
「え? 嘘? なんで? なんで魅了が効かないの? 今まで、誰にでも効いたのに」
安倍きららは動揺を隠せなかった。
自分でも完璧に制御できない魅了の魔眼は、血のつながった親族でさえ効果がある。
霊力的に規格外の耐性がある、長男東雲でさえ、きららと目を合わすことはできない。
万が一、家族を魅了してしまえば、きららが傷つくという配慮もあるが、兄弟たちと目を合わせて会話ができないことを寂しいと思わないわけではない。
兄のおかげで、魔眼を封じる布で一応は制御しているが、これからもずっと魔眼を気にして生きるのだ。
いつか誰かを好きになっても、誰かが好きだと言ってくれても、自分の魅了のせいかもしれないとどこかで気にしながら生きるのだ。
あんまりな未来だ。
ゆえに、きららは家族以外を愛することをやめた。
家族ならば魅了など関係なく「愛」がある。
親からはもらえなかったが、固い絆で結ばれた苦楽を共にしてきた兄弟がいれば孤独ではない。
だから、もういいと思っていた。
いたのだが、魅了の力が効かない少年と出会ってしまった。
「いや、効くわけないじゃん。出力が高いだけの制御できていない魔眼なんて。あと俺の抵抗力を舐めんな。この程度の霊力で俺をどうこうできるんだったら、俺は名前も思い出せない一登のお母さんの旦那さんの息子さんの魅了でとっくにアヘ顔ダブルピースしていたから」
「……あのね、夏樹くん。そこは素直に俺の兄貴でいいんじゃん」
「俺の地元じゃそう言わないんだよ!」
「俺と夏樹くんの地元って同じだよね!?」
なにやら会話をしているが、そんなことなど気にならない。
きららは少年の顔を掴み、吐息がかかる距離で目を合わせた。
「だーかーらー、俺には魅了が効かないの」
瞬きせず真っ直ぐに目を逸らさない少年に、きららの胸が大きく脈打った。
そして、確信した。
――運命の出会いだ、と。
――彼は私の王子様だと。
「愛しています、私の王子様」
「ほえ?」
彼に愛を捧げよう。
運命の人なら、躊躇いもない。
きららは少年にキスしようと目を閉じそっと唇を近づけ、
「なにしとるんじゃこの小娘がぁああああああああああああああ!」
「ぎゃぁあああああああああああああああ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
無粋な第三者に思い切り鼻フックされた。