軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「いつものふたりじゃね?」

「サマエル様、サマエル様、さまたん様」

「……お前さ、最近私のことちょくちょくさまたんって呼んでるだろ」

「いえ、収録中にさまたんと呼んでいるのでつい」

「別にいいんだけどさ……なんだろう、ちょっとイラっとする。まあ、そのうち慣れるかな。んで、どうした?」

農業系動画配信者さまたんことサマエルは、部下であり、スタッフであるマモンに呼ばれ、長靴を脱いで家の中に上がる。

今日も農作業は順調だ。青森にも暖かさがしっかり感じられるようになったためか、いのししなどか出てきたようで、作物への被害を近所の農家さんたちと話をして帰ってきたサマエルに、スーツ姿の上から割烹着を来たマモンが菜箸を持って出迎える。

「晩御飯は?」

「伝吉さんからお野菜をいただいきまもんまもんしたので、サラダ、おひたしと、せっかくなので天ぷらにしてみまもんまもん。野菜だけでは少し寂しかったので、とんかつもしっかり揚げていまもんあもん」

「さすがマモン!」

「ビールもしっかり冷やしてありまもん」

「いいねぇ! んで、なんか話があるみたいだけど?」

「そうでした。私としたことが、まもんまもん。最近はすっかりまもんまもんな主婦に馴染んでしまい、この間もスーパーでご近所の奥様とまもんまもん長話をしてしまったのです」

「いいことじゃん。平和が一番」

サマエルはマモンから手渡された冷たいおしぼりで、手や顔を拭く。

「実は魔界から連絡がありまもんまもん」

「……太一郎くんか?」

「いえ、ルシフェルのまもんまもんです」

「なんだピュアくんか」

「さまたん様、このマモンもルシフェルとは何度かやり合ったことはありますが、ピュアとはっきり言うのはいかがなまもんまもん。せめて 一心(ピュア) と呼んであげてくださいまもんまもん」

「かわんねーじゃん」

「こっそり変わるんでまもんまもん」

よくわからない、とサマエルは嘆息した。

同級生だが、年寄りと若者くらい、マモンの言葉の意味がわからないことがある。

サマエルは自分がナウなヤングではないことは知っているのだが、マモンもそれは同じだろうに、と不思議に思う。

「まあいいよ。それで?」

「魔界でも若い魔族のために動画配信者の学校をまもんまもんしようと」

「あ、もういいです。どうせ、あれだろ。お前に講師をしろとかそんなんだろ」

「――っ!?」

「いやいや、――っ、じゃないから。もうね、こっちは話の展開が見え見えなんだよ! つーか、ピュアくんもなんでマモンに頼むかな!?」

生真面目なせいで苦労ばかりしているルシフェルが、ストレスでどうにかなってしまったのではないか、とサマエルは心配する。

ルシフェルとの付き合いも長い。我が子のように、とは思ったことはないが、かつてのライバルの息子としてそれなりに目をかけていたのは事実だ。

そんなルシフェルが、魔界に動画配信者の学校を設立しようと本格的に考えているのであれば、そっとカウンセリングを紹介してあげたい。

「最近、神界でも同じ動きがありますまもん、魔界としても遅れを取りたくないようでまもんまもん」

「争うところそこでいいの!?」

「魔族的には動画配信は良いシステムなのですまもんまもん。現代ですと、契約の代償に魂をまもんまもんするなどはやりませんので、代わりに投げ銭という対価をもらって楽しい動画をまもんまもんするのはある意味、魔族にとって理想の環境でまもんまもん」

「……魂の代わりに投げ銭かぁ。ちゃちくなったなぁ」

「さまたん様はそう言いますが、羽振りのいいまもんな方は一万円とか投げてくれますまもんまもん」

「なん、だと!? ビールを二ケースかえるじゃないか」

「……サマエル様も人間界で生活するようになってちょっとしょぼくなりましたよね。昔は、魔族の中の魔族でまもんまもんしていらしたのに」

「馬鹿野郎! 人々がビールのためにどれだけ頑張って働いていると思ってるんだ!」

「では、せっかくなのでさまたん様のビール動画などはいかがでまもん?」

「ほう。つまり、飲んで感想を言う系の?」

「ノンノン。何日ビールを我慢できるかまもんまもん的な」

「やだよ!」

「わがままもんまもんですねぇ」

「毎日の楽しみを奪わないで! というか、動画配信にそこまで本気出さないから! サマエルさんは農家がメインだからね!」

忘れがちだが、サマエルはあくまでもりんご農家さんだ。

対してマモンはサマエルが暇で始めた動画チャンネルの登録者を百万にするまで帰れないと言う『刑罰』を受けている。

二人の間には、微妙な違いがあった。

「そんなことをまもんまもん言いながら、収益が増えたと喜んで最近ではクラフトビールを買っているではありませんか。ならば、登録者数百万人達成のためにさまたん様が少々犠牲になるくらいのまもんまもんでもいいと思うのですが」

「……じゃあ、禁酒中はお前も亜子ちゃんに会うなよ」

「……今の話はなかったことでよろしくお願いまもんまもん」

「お前、本当に亜子ちゃん大好きだな!」

「彼女は地上に舞い降りた天使なのでまもんまもん!」

「……元天使説のあるお前が言うとじわじわくるよな。あと、魔族なんだからもっと違う表現はねーのかよ」

「あ、天ぷらがいい音を立てているので失礼しまもんまもん!」

「逃げやがったな」

サマエルはマモンに何か言おうとしてやめた。

マモンはサマエルにとって部下であるが、友人でもある。

このまま地上にいたほうが、マモンにとって幸せではないかと思えてしまうのだ。

だが、それを判断するのはマモンだ。

いつか魔界に帰る日が来るかもしれないが、その時になったとき一緒に悩んでやればいい。

(もっとも、私のチャンネルで登録者数百万人は無理だろうけど……まもんまもんチャンネルが四万人超えたからなぁ。最悪そっちで達成できるかもなぁ)

――青森は平和だった。