軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2「まだ京都の方がいたんじゃね?」②

「京都の襲撃者……というか襲撃できなかったお馬鹿さんたちは月読先生が回収していったんですけど。まだいたんだ?」

「月読もわざと見逃したようですよ。襲撃者たちのように何かをしようとしたわけではなく、見ていただけですからね。ただ、襲撃者を操った首謀者なので、ここは理想の土地神ナンバーワンの座をほしいままにしているこの天照大神が、捕縛しておきました!」

いつの間にか小梅にプロレス技をかけられている天照大神がドヤ顔でそんなことを言うので、夏樹はツッコミを入れようとしたが、なんだか負けた気になりそうなのでやめておいた。

「……これが天照大神様……素盞嗚尊様もそうだが、まともなのは月読命様だけのようだな」

征四郎が呟くと、千手と祐介がうんうんと頷く。

義政少年だけが、

「奔放なのは神々の特権ですね」

と、眼鏡をくいくいさせていた。

「えっと、天照大神様」

「一登きゅん。ぜひ照子ちゃんと呼んでほしいです」

「あー、じゃあ、照子ちゃん」

「はーい!」

「……なんじゃこの媚びた声。ぞっとするんじゃが」

いつもよりもトーンの高い声を出した天照大神を気持ち悪く思った小梅がそっと離れる。

だが、天照大神は気にしていない。彼女の瞳には一登しか映っていなかった。

「ごほん。天照大神様、今はプライベートではなく神様としてお願いします」

雲海の注意に、天照大神は背を伸ばすと、神っぽく振る舞い出した。

「では続きを。彼女たちは、すでにご存知かと思いますが、京都の安倍一族の者です。しかも直系の長女と次女ですね。確か名前が、安倍あべ子さんと安倍あべ実さんです」

「え? 本名?」

「いえ、よくわからないので仮の名です。彼女たちは私を天照大神であると信じてくれないので、少々お仕置きをしたんですが、ちょっと手加減しすぎましたね。本来ならば、一登きゅんに手を出したので、すり潰してしまおうかと思ったのですが、きっと心優しい一登きゅんならそれをよしとしないと思いました」

「おい、土地神様。俺が入ってねーよ。俺も襲撃受けたよ?」

「ははははは。これはご冗談を。くそ愚弟をボコせる夏樹くんに今さら人間が勝てるわけないじゃないですかぁ。心配するだけ無駄無駄!」

「……扱いが悪いな!」

一応は文句を言った夏樹だが、確かに京都から来た霊能力者など相手にならなかったので、それ以上何も言えなかった。

小梅たちが「確かに」と納得しているのもなんとなく腹立たしい。

ちょっとは心配してもらいたかった。

「というか、なんでスウェット着てるっすか?」

「いくら捕まえた悪い子でも着替えさせないのはどうかと思いまして、私のまだ使っていない部屋着をお貸ししたんですが……とても不評のようです。スウェット最高じゃねーかよぉ」

「年頃のお嬢さんにスウェットを貸すのはいいんすけど、その姿でみんなに見せちゃうのがよくないんじゃないっすかね。まあ、襲撃者に人権なんてねーんすけど。首刎ねられないだけありがたく思ってほしいっすね」

なにか反論でもあるのか、もごもごしている京都のふたりだが、手足をしばられ猿轡をされているので発言はできない。

ただ耳は聞こえているので、なにかしら文句を言っているのはわかる。

「……よし。とりあえず、安倍家のふたりは退場ってことで。あと三人か。週末に余裕だな」

一番の問題は安倍東雲だが、最悪このふたりを人質にすればいいだろうと夏樹は考え、邪悪な笑みを浮かべた。

「……こやつ勇者がしてはいかん邪悪な顔しとるぞ」

「あー、おそらくこのふたりを人質にして安倍家を潰そうと企んでますねぇ」

「仮にも幼少期に一緒に遊んだ子の家を潰す気満々とか、人の心なさすぎじゃろ! 天使もびっくりじゃわ! 勇者ジョークだとおもっとったんじゃが、ガチかい!」

夏樹の企みを知った一同は、天照大神を含めて引いていた。

そして碌な目に遭わないと聞こえて理解した安倍家の長女と次女は逃げ出さんとびったんびったん抵抗を始めた。