軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「愛ちゃんと絶望の神じゃね?」

「やあやあやあやあ、愛の女神! いえ、ここはフレンドリーとして愛ちゃんと呼ばせていただこう!」

「……うわぁ、うざいの来ちゃったなぁ」

向島市から離れたとある町で、マンションの一室でジャージ姿でソファに寝転び漫画を読んでポテトチップスを食べている愛の女神こと愛ちゃんは、急に現れた燕尾服姿の青年、絶望の神の姿を見て心底嫌そうな顔をした。

「つれないな愛ちゃん! ……しかし、仮にも女神を、しかも愛の女神を名乗るのであれば、その安いジャージの上下セットではなくもっと違う格好はないのかな?」

「うるせえよ! お前みたいに燕尾服とか意味わかんない服よりもマシだよ! あと、普段からテンション高いのに、私の普段着見てテンション下げないでくれる!?」

「……申し訳ない。絶望の神である私が絶望してしまった」

「謝らないでよ!」

漫画を閉じてポテトチップスをむしゅむしゅ食べる愛ちゃんに、絶望の神は絶望した顔をしていた。

どうやら女神に理想を抱いていたようだ。

「というか女の子の部屋に勝手に上がらないでほしいかなぁ」

「女の子って……愛ちゃんはもう誕生してからごびゃるぶとけっ!?」

「女の子はね何年経っても女の子なの、いいね」

漫画を顔面に全力投球された絶望の神が変な声を出し、その場に膝をつくと、ジャージ姿の愛ちゃんが冷めた目で見下ろした。

「……すみません」

「わかればいいのよ。それで、なにをしにきたの?」

「月読命と邂逅しましたのでご報告をっ!」

「なーんで、新たな神々ぶっ殺す神と接触しているのかしらぁ」

「由良夏樹の義妹にお力を与えてあげれば愉快な絶望があると思ったからでっす!」

「……由良夏樹の義妹って、あーあー、はいはい。あれをどうすれば由良夏樹が絶望するの?」

「いえいえ、綾川杏がいい感じに絶望しそうだったのでつい」

「そっちかー」

愛ちゃんも綾川杏の存在は知っている。が、それだけだ。興味はない。

「愛を持たない子には愛ちゃん興味ないの」

「これは辛口ですね。しかし、彼女は自己愛を持っているではありませんか」

「私は愛の女神。誰かを、何かを愛する者から生まれた神よ。自分だけが可愛い、そんな人間とは関係がないの」

「なるほど。絶望から生まれた私とは大違いですね」

「そうねぇ。もしかして、そんなつまらないことで月読命にちょっかいかけて、その足で私の家にきたの?」

「他の神々は自由気ままですから。愛ちゃんもですが、私も、奴らと違って古い神々を仲間に引き入れて徒党を組もうとは思いません」

「私個人はそれでもいいと思ってるのよ。まもんまもんとか面白かったし。でも、戦いの神とか、他の愛の神とか嫌いなのよね。独善的って言うか、人間を支配しようとかつまらないこと考えているし。私は人間に愛されたいだけなの」

「私も人間に絶望してもらいたい、絶望から脱してほしい。人間の絶望を乗り越える力が好きなのです!」

「歪んでいるわねぇ」

「お互い様です」

愛ちゃんは床に置いてあった炭酸飲料の入ったペットボトルに口をつけた。

「けぷ」

「愛の女神がげっぷしないでくださいよ。まあ、いいですいいです。それよりも、本日はお誘いに来ました!」

「いやよ」

「まだ何も要件を言っていませんけど!?」

「燕尾服を着たテンション高いやつとデートなんて嫌ですー」

「誰がそんなこといいましたか!? 違いますっ! 一緒に、異世界の道を探しに行きませんかと、お誘いに来たのです」

「それこそ嫌よ!」

「また即答!」

由良夏樹が異世界から帰還した勇者である以上、地球から他の世界に行くことは可能だろう。

少なくとも、由良夏樹は行き来しているのだから。

「私は地球の人間が好きなの。異世界の人間なんてどうでもいいわー」

「……それはそうですが。異世界に心をときめかせない男の子はいません。最近、異世界転生者が熱いじゃないですか!」

「絶望から生まれた神が、異世界転生とかで興奮しないでよ!」

「……私も生まれ変わって幸福の神とかになりたいです」

「なんか胡散臭い神様だからやめておきなさい。そもそも幸福の神とかいないじゃない。古き神にはいるけど」

「現代人って切ないですね」

「本当ね」

ちょっと悲しくなった絶望の神だったが、テンションを上げて燕尾服を翻した。

「振られてしまったので他の神に話をしにいきます。気が変われば、声をかけてくださいね」

そう言い残し、マンションの窓から夜空に飛んでいく絶望の神を見送り、愛の女神は嘆息した。

「結局、私たちは自分たちの星がほしいのよね。神という割にはつまんないわね。また面倒臭くなっちゃうけど、がんばってね。……なっちゃん」

愛ちゃんは再びソファに寝転がると、何を考えたのか、漫画ではなくタブレットを持って「異世界転生者」の漫画をダウンロードしたのだった。