軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71「京都から来たんじゃね?」③

「なん、なん、これ……げほっ、ごほっ」

リーダー格の女だけは意識があるようで、夏樹を睨んでいる。

「なにをした! 小僧!」

黒服たちがようやく夏樹になにか原因があると察したのか掴みかかろうとしてくるが、遅い。あまりにも遅い。

(殺すか……あ、さすがに一登の前で輪切りはできないな)

手刀で両断しようとした夏樹が慌てて手を止め、魔力を少し解放し、黒服たちにぶつける。

すると、黒服たちは全員泡を吹いてその場に崩れ落ちた。

殺していない。あくまでも失神させただけ。

「さあ、おばさん。優しい俺が今度は選択肢をあげよう」

「……や、め」

「俺のことを忘れて二度と関わりませんと宣言してから死ぬか、ふざけんなクソガキと最後の抵抗をしてから死ぬか、どーっちだ? おすすめは後者だよ」

「いや、どっちでも死んじゃうじゃん!?」

ことの成り行きを見守っていた一登が、ついツッコミを入れてしまった。

「おっと、なっちゃんったらいけないいけない。ごめんね、どっちでも死んじゃうんだって。じゃあ、選択肢をあげるよ。苦しんで死ぬか、めちゃくちゃ苦しんでから死ぬか、どーっちだ?」

どこから手に入れたかわからないが、彼女は夏樹だけではなく、一登の存在も知っていた。

遠野に行ったのは、七森千手と佐渡祐介だけで、一登は留守番していたのにも関わらず、だ。

情報収集をすべく拷問をしたほうがいいのかもしれないが、夏樹はそういう類が不向きである。

ならば、もう殺すしかない。

「はぁ……君はとても怖いですね。しかし、さすがに人を殺すのはおすすめできません」

夏樹の肩を背後から軽く叩き、聞き覚えのある声が聞こえた。

「――え? 月読先生?」

「あ、本当だ。月読先生」

「はい。月読先生です、こんばんは夏樹くん、一登くん」

柔和な表情を浮かべる眼鏡をかけ、グレーのスーツを着こなした男性は月読命であり、夏樹たち学校の教師でもある。

「まずは、失礼」

彼が指を鳴らすと、意識を保っていた女が気絶し、地面に突っ伏す。

「私の存在を知られたくはないのです」

「もしかして、俺の危機を察して助けに来てくれたんですか?」

「……え? 夏樹くんって危機だったの?」

「危機だったんですか?」

一登と月読が顔を見合わせて首を傾げた。

「い、いえ、全然危機じゃなかったんですけど、可愛い生徒が大人たちに囲まれているんですから、どえらい出来事ですって」

「可愛い生徒は、学校をサボってポセイドンと一緒に釣りをしたりしません」

「バレてるぅ」

嫌な汗を流す夏樹に、ため息をついた月読は手を叩いた。すると、女性たちの姿が闇に包まれていく。

「彼女たちは隠しました。ほら、結界も解けましたよ」

「あーよかった」

「無理やり結界を解かなかったのは良い判断です。あなたの魔力が本当の意味で逆流していたら、彼女たちは内側から破裂していたでしょう」

夏樹は気づいていたのでやらなかったのだが、まさかそんな可能性があったのか、と一登が青い顔をする。

「さて、この者たちを任せてもらえますか?」

「えっと、はい」

「神としては、酒呑童子関連はノータッチなのですが、教師として生徒の個人情報が漏れたことを良しとしません。少し聞き出しておきます」

「よろしくお願いします!」

「お願いします」

「はい。お任せください。さて、夏樹くん、一登くん」

月読に名を呼ばれて、ふたりは背筋を正した。

「まず、一登くん。お兄さんのことは残念でした。神の干渉があった時にはすでに後手に回っており……申し訳ありません」

「いえ……兄が選択したことですから」

「……辛い時はいつでもご相談ください。真実を知る者に相談したい時もあるでしょう。神として教師として、遠慮なく声をかけてください」

「ありがとうございます」

お辞儀をした一登の肩を、慰めるように月読が優しく撫でる。

「さて、問題は夏樹くんです」

「あー、そのー」

「イベントが多いようで、学校に来れないはわかります。学校が君にとってあまり心地よいとこではないのも、教師として言ってはいけないのでしょうが、理解はします。ですが、私はさておき、他の先生や生徒の目があるので、しばらくはおとなしく学校に来なさい。いいですね?」

「はーい」

「もしも、明日……ちゃんと学校に来なければ――神界で由良夏樹君は素盞嗚尊と大親友であると噂を広めます!」

「僕、絶対に学校にいきます!」

まさかの禁じ手を軽々使ってくる月読に逆らうまいと、夏樹は降伏した。

一登だけが「うわぁ、素盞嗚尊様の扱いがひどい」とちょっと引いていた。