軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70「京都から来たんじゃね?」②

「なんでわかったの、夏樹くん!?」

「いや、勘だけど?」

「勘なの!? それはそれですごくない!? この人たちとても動揺しているんだけど!?」

夏樹たちを結界に閉じ込めた女性たちの正体を言い当てたことに、一登は驚きを隠せないようだ。

だが、夏樹としてはこの展開は予想できていた。

「遠野で京都の安倍家と接触したからね。いずれ来ると思っていたんだ。どんな形で来るかまではわからなかったけど、こうして結界に閉じ込めておっかないおじさんたちを連れてくるんだから、殺意ありと見なすけど」

「待ちぃ」

夏樹がやる気満々になっているところを、リーダー格の女性が止めた。

「せっかちなお兄ちゃんやね。まず、話を聞こうとは思わんか?」

「思わねえよ。話聞いて欲しけりゃ、菓子折り包んで話聞いてくださいって土下座しろ」

「……生意気なガキやねぇ」

夏樹の態度を良しとしないようで、巫女たちと黒服が睨む。

が、神々や魔族と対峙した夏樹が臆するはずがない。

一登でさえ、大人に囲まれていることをまずいとは思っても、マモンや素盞嗚尊のような脅威を感じないので怯えてはいない。

比較対象がおかしいのと、若干感覚が麻痺しているのは否めないが、それでも足を竦ませてしまうよりはいい。

「俺は親切だから、最初に言っておいてやる。俺は酒呑童子に興味がない。戦うなら勝手に戦ってろ」

「……鬼は京都の人々を」

「いや、そういうのいいんで」

「なんやて?」

「おばさんさ、俺がそういう建前を聞いて賛同するとでも思うの? あんたからは、鬼や妖怪の血の匂いがぷんぷんするよ。誰かのため、じゃなくて自分のために酒呑童子を殺したいんだろ。でも、勝てないってわかっているから、コマ集めに必死必死。やーねー、余裕のない大人って」

異世界でも、自分の私利私欲を隠してさも正義があると戯言を吐く人間がいた。

人間のために魔族を倒す、魔族を倒さなければ人間に未来はない、と偉そうに言っていた人間は、弱い魔族を冒険者に捕らえさせては弄ぶ趣味を持つ屑だった。

もちろん、夏樹がそんな人間を見逃すはずがなく、縦一閃に切り捨てたのは言うまでもない。

そんな異世界の人間に、目の前の女は似ていた。

「ガキのくせに鼻が効くんやな。なら、腹割って話そうか。ウチらは酒呑童子を殺したい。それは本当や」

「はいはい。それで?」

「邪魔な酒呑童子を殺した後、鬼たちのトップに立つ」

「へいへい。んで?」

「鬼を使役し、安倍家を滅ぼし、京都をウチらが支配するんや」

「壮大なことを言っている気になっているところ悪いんだけどさぁ、それは京都の中でやれよ! 向島市くんなよ!」

もっともな夏樹の意見だが、女は笑い飛ばした。

「あんた、安倍円と安倍東雲と会ったんやろ。安倍円は復讐に取り憑かれているくせに、こっちには付かん。安倍東雲はよくわからん。邪魔なんよ、安倍だかなんだか知らんが、ただ古いだけしが自慢のない旧家がのさばっとるのは」

「だから、そういうことはね、地元の人たちとやってほしいなって、なっちゃん思うんだけど」

「ウチらは全国から仲間を集めとるんや。京都だけやない。院の支配をよく思っておらん霊能力者も、こちらに味方すれば旨味があるんやで」

「院トップは俺の舎弟だ。つまり、俺が院トップだ」

「京都が力をつけて、とりあえず関西を仕切れば、院に対抗できる。霊能力者が、ルールに縛られず、好きなように力を使い、人外どもを駆逐できる理想のような世界が待ってるんや!」

「俺の話聞けよ!」

結局のところ、ルールなどなしで霊能力者として好き勝手やりたいだけだろう。

そのために酒呑童子を討って箔をつけたいんだろうが、無理だと考えるまでもなくわかる。

(というか、こんな奴らだけで強硬派がまとまるはずがないよな。大体、頭良さそうなふりをして実は馬鹿な自称頭脳系が背後にいると見たね!)

「茶漬け出してやるから帰れよ」

「……クソガキ……下手に出てやれば調子に乗りやがって。お前に選択肢はねえんだよ。従うか、殺されるか、選べるだけありがたいと思え」

「ま。そうだよね。でも、いいの?」

「なに?」

夏樹はにこやかな笑みを浮かべた。

「このまま結界を張っている状態でいいの?」

「どういう――おぶっ」

夏樹の問いかけに疑問を口にすることもできず、リーダー格の女を始め、巫女装束の女たちが揃って吐血し、倒れた。

「お前ら雑魚が俺の魔力を押さえ込もうとしたら、反発があるに決まってるだろ。ばーか!」