軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32「まんざらでもなくね?」②

「お前だって彼氏を家に連れてきたことないじゃねえか! いい機会だ! 夏樹はいい奴だぞ。昔から春子さんのことを支え、家庭に問題があっても笑顔を絶やさなかった」

由良家に、家族が増えたことも知っているし、新しく家族となった娘が問題を起こしていたこともよく知っている。

幾度となく久志は妻を連れて春子の力になろうとしたが「家族の問題だから」と笑顔でやんわりと断られてしまい、それ以上立ち入れなかった。

ときどき疲れた顔をしている春子と夏樹を食事に誘ったり、夫となった男性と飲みに行ったりしたが、結果は残念なことになってしまった。

「今更っすけど、そんなにお父さんが面倒見ていた夏樹くんを、私が知らなかったっていうのも変な話っすね」

「あー、それは、なんていうか」

言いたいことをはっきり言う性格の久志にしては歯切れ悪く、言うか言わないか迷っているようだ。

「なにか事情でもあったんっすか?」

「いやな、お前は年下趣味だろ?」

「ちょ、ま、なにを、いきなり、ていうか、どうして」

父親の突然すぎる発言に、銀子が大慌てした。

その慌てっぷりを見て久志は確信した。

「以前な、お母さんがお前の部屋を掃除した時に、可愛い男の子の――」

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!」

「待て、落ち着け。お父さんは理解がある。安心しろ」

「安心しろ、じゃねーっすよ! プライバシーの侵害すぎるっす!」

「お前の好きなサークルや作品の傾向も、お母さんとすべてチェック済みだ」

「ぶっ殺すぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

魔剣を抜いて構える銀子の顔は真っ赤だった。

まさか自分の趣味をすべて両親に把握されていたとは思いもしなかったのだろう。

彼女の頭の中で、押し入れに入れてある「アレ」だけはバレていませんように、と願う。

「しっかし、押し入れにあったやつは内容がエグかったな。しばらくお前がよからぬことをしないか心配になったぞ」

「だからプライバシーはどこに!?」

「部屋の片付けをちゃんとしないお前が悪い。趣味だからと呑み込んで見逃してやっていたんだぞ」

「礼を言えと!? 違法じゃないっすよ! ていうか、私の趣味を知っているなら、夏樹くんと結婚させるとかありえないっしょ! めっちゃくちゃ好みなんですけど! ああ、自分で言っちゃった!」

「もちろん、健全なお付き合いは心がけてもらう。まあ、三年四年くらい我慢だな」

「生殺しじゃないっすか! 結婚するならいろいろやらせてくださいっす!」

「……お前、仮にも警察官だろうに」

意外とまんざらでもなかった娘に久志が内心にやり、としていると、携帯が鳴った。

プライベート用だったので、妻かなとディスプレイも見ずに着信に出た。

「おう、俺だ。あん? 警察署長にオレオレ詐欺をするとはいい度胸だ! ははは、冗談だ。というか、なんだ、お前、まさか……やらかしたな? やらかしただろう? ああ? 口の硬い奴だ? おう、ちょうどいいのが目の前にいるぞ。おう、おう、わかった、すぐに向かわせる。あとで俺も行くから、あまりやべぇことはするんじゃねえぞ!」

笑っていた父親が、真面目な顔をしたので、銀子は嫌な予感がした。

その予感は当たる。

携帯をしまった久志が、告げる。

「おう、夏樹がやらかしちまった。あとで、俺も行くが、いろいろ訳ありらしいから手伝ってやれ」

「えー、とっくにお家帰る時間なんすけどぉ」

「魔剣次郎を使わせてもらった使用料を払うと思って、行ってこい」

「魔剣太郎っす!」

「どうでもいいわ! 俺も後で向かうから、とにかく夏樹がやりすぎないようになんとかしろ」

「なんとかしろって言われても――」

銀子が抗議しようとしていると、どこかから轟音が響き、建物が揺れた。

親子は顔を見合わせて、青くなる。

「……あの、向こうで、どこん、とか、ずうんっ、とかあまり日常では聞きたくないような音が聞こえてきたっすけど、まさかとは思うけど、夏樹くんの仕業じゃないっすよね?」

「――仕事だ。行け!」

「いやぁああああああああああああああああああああああああああ!」

青山銀子が未知との遭遇を果たすまで、あと十五分。