軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54「雷神様と喧嘩じゃね?」②

トールの拳が直撃した夏樹はこれでもかと地面を転がった。

受け身も取れず身体中がバラバラになってしまうのではないかと心配になる程、あちらこちらをぶつけていく。

これだけ痛いというのに、思考はクリアだった。

ようやく大木に激突して止まると、痛む身体に鞭打って立ちあがろうとして、右足が折れていることに気づいた。

「……まさか俺のスーパーウルトラデンジャラスアフタヌーン勇者パンチが敗れることになるとは……異世界の魔神にさえ通用したのに」

回復魔法を全体にかけて治癒を行うと、地面を蹴って反撃に移ろうとする。

「股間を狙ってくる相手は君が初めてではない。私は――股間さえも鍛えている!」

「なにそれかっこいい――あ、やば」

どうしたら股間を鍛えられるのだろうか、と考える間もなくトールが再び太い腕を放つ。

だが、夏樹も何度も食らってはいられないので、受け流すように彼の腕をいなすと、くるり、と一回転して肘を雷神の脇腹に刺すように叩き込んだ。

かなりの衝撃があったはずだが、トールはその場に踏ん張り裏拳を放ち、夏樹の顔面に入れる。

その拳打は凄まじく夏樹が縦に一回転してしまうが、夏樹だって場慣れはしている。回転を利用して器用に踵をトールの顔面に入れた。

「ぐっ」

「あ、しまった」

夏樹は追撃せず、トールと距離を取る。

雷神は夏樹に訝しげな視線を送った。

「どうした、夏樹?」

「めんご、めんご。身体強化するの忘れてた。――んじゃ、三割で!」

次の瞬間、夏樹の魔力が高まり、肉体に魔力が循環し溶けていく。

「――ほう。凄まじい魔力だ」

「ありがとう。実は、さっき魔力を高めたけど強化するの忘れてたんだ。というわけで、それなりに殺すつもりでいくからよろしく」

夏樹が拳を握ると、トールは獰猛な笑みを浮かべた。

「――臨むところだ!」

「んじゃ、とりあえずお返しな。ぶっ飛べ」

夏樹が地面を蹴ると同時に、姿が消える。

刹那、夏樹の蹴りがトールの腹部に突き刺さり、

「が、はっ」

くの字になって巨体が後方へ吹っ飛んだ。

「追撃いくよー」

再び地面を蹴ると、地面を転がっていくトールの真上に移動し、踵落としを食らわせて地面にめり込ませる。

「ふはははははは! 巨人族を超える攻撃ではないか! 素晴らしい!」

口から血を流したトールが楽しそうに高笑いをすると、立ち上がり、夏樹に掴みかかった。

トールの拳が夏樹の頬を捉えるが、気にせず殴り返す。

雷神が一度殴れば、夏樹は三度殴り返す。

単純な一撃の力と、速さ、共に夏樹の方が上だった。

トールの手が、夏樹から離れる。

「おいおい、もうお終いか?」

拳に蹴りが混ざる。

トールの腿を、脇腹を、胸を、顔面を、側頭部を蹴りと殴りの連続攻撃で確実にダメージを与えていく。

「そーれっ」

三割とはいえ、かなり魔力を乗せた夏樹の蹴りがトールの鳩尾に突き刺さり、北欧の雷神はついに吐血してその場に膝をついた。

「いやいやいやいや、ないないないないないー! 雷神トールが人間相手に膝をつくとかありえないー!」

「すさすさとかまもんまもんも殺される手前までいったんじゃが。というか、トールもまだ余力があるじゃろ。ほれ」

「申し訳ない。私は――いや、俺はどうやら君を侮っていたようだ。強者と聞いていたのに、勇者と聞いていたのに、俺は疑心暗鬼だったらしい」

「気にしなくていい。俺だって、同じ立場だったらこんなに可愛い中学生が強いとか思わないから」

「はははははははは! 俺も力を出し惜しみするのはやめだ! 雷神として、戦わせてもらおう! 夏樹! お前ももっと力を出してくれるのだろう!?」

「俺に力を出させたかったら、雷神トールの力を見せてみやがれ!」

「――ならば、お見せする! これが、俺の――力だ!」

トールが神域に響き渡るような声を出した、次の瞬間――黄金の雷が放たれ暴れ狂った。