軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「求人じゃね?」

「まもんっ、ままままままもんもんっ」

グレーのスーツに長靴と割烹着姿で農業を勤しむ、七つの大罪の魔族マモンは最近拡張した畑の上をスキップしていた。

「……その変な鼻歌はツッコミ待ちか? スルーでいいのか?」

「サマエル様……俺が楽しそうな顔をしているまもんまもんですって?」

「言ってねーよ」

話しかけたのが失敗だった、とサマエルは後悔する。

なにかいいことがあったので話したくて仕方がない、そんな様子だった。

「はいはい、なんかいいことがあったなら話せよ。休憩しながら聞いてやる」

「まもんまもん! そこまでさまたん様が聞きたいとおっしゃるのであれば、このマモン! 語らせていただきまもんまもん!」

「……殴りてえ」

悪人顔のマモンがにっこにっこに破顔している光景は、紀元前から付き合いがあるサマエルでもちょっと引く。

「実は、素晴らしい動画を人間どもに届けるためにスタッフを雇おうかと思い求人募集をしたのですまもんまもん」

「おいこら! その求人はどっちのチャンネルだ!?」

「どっちもでまもんまもん!」

まさかマモンが隠れて求人募集をしているとは思わなかった。

「言っておくけど、金はないぞ。広くした畑の方も求人がほしいのに……」

「農家は大変なまもんまもんですからねぇ。ですが、動画配信のスタッフはリモートまもんまもんができますから結構求人がきてくれまもんまもん」

「……そんなに来たのか? いや、待て、一応、こんなんでも魔族であることは隠しているんだから一般人はやばいだろ」

「まもん。ご心配まもんまもん」

スーツの胸元から手帳を取り出したマモンは、ページをめくった。

「まもん。では、ええと、アースガルズからロキが」

「悪戯の神はないだろ! 動画炎上するか、バンされるわ!」

「……確かに奴は少なからずサタンの影響を受けてまもんまもしていますからね。では、次は……」

北欧の神ロキは同じく北欧の神トールと親しい神である。北欧神話のトリックスターと名高いが、トールの妻の髪を切るなど悪戯にしては度が過ぎたこともするやんちゃさんだ。

サマエルの脳裏には、アカウントが消される未来が見えた。

「日本神話なまもんまもんからすさすさで有名な素盞嗚尊まもん」

「……あいつがすさすさ言ってるのって聞いたことあるか?」

「経歴に書いてありまもんまもん」

「自称だな。つーか、却下だ! あんな破天荒な奴が来たら何されるかわからん!」

日本神話で有名な素盞嗚尊であるが、やはりおいたがすぎる神であるためサマエルは却下した。

「では、次のまもんまもんは京都からせーめーアンドどーまんのコンビです。すでに動画配信をしているようですが、伸び悩んでいるため現場を学びたいとのことまもんまもんでした」

「……なんだか厄介そうな奴らだな。胡散臭さもある。あと、京都は鬼がわちゃわちゃして人間と対立しているから、そんなところから来られても困る」

「まもん。さまたん様はわがままですね」

「お前だって、どうせならしっかり働いてくれる奴の方がいいだろう!」

「それはそうですがまもんまもん。あ、新たな神々の中から映像の神が書類を送ってきていまもんが」

「なんだよ映像の神って! 自由すぎるだろ! 書類に書かれている住所を月読命に教えてやれ!」

きっと碌な応募者はいない、と今後の展開を読んだサマエルは「もういいよ、任せる」と言って畑仕事に戻った。

マモンも同感だったのか文句を言わずに仕事を再開する。

――そして、後日。

「真門亜子です! お仕事頑張ります!」

「……こいつ、職場に彼女連れ込みやがった」

長年の腹心に裏切られた気がしたさまたんだった。