軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30「神の正体とかどうでもよくね?」②

「神って宇宙人なの?」

「それを確かめたいから、解剖するのを放置したんだ! 宇宙人が神々なら、仲間の危機に神族が駆けつけるかもしれないだろう! そうなれば、俺の考えが合っていたことになる! なのに、お前が邪魔したせいで!」

「そんなどうでもいい理由で解剖されかけたナンシーさんが不憫でならないよ!」

「あの宇宙人ナンシーっていうのか!?」

「あ、やべ」

うっかり名前を言ってしまった夏樹を男が見た。

その瞬間、彼の目と夏樹の目が合った。

「俺と目を合わせたな!」

「だからなんだよ?」

「あれ?」

一瞬、男の目が怪しく光った気がするが、なにも起きない。

自信満々に「俺と目を合わせたな!」などと言うからなにかあるのかと思ったので拍子抜けだった。

「まあいいや、とりあえずもう寝ちゃっていいよ」

今度は加減をして、男の顔を床に叩きつけた。

男は意識を失い静かになる。

「うーん、残念だけど、神が宇宙人とかどうでもいいわー。それがわかったからって、何がどうなるのって感じだよね」

以前、動画サイトで各地に残る伝承に登場する神が宇宙から現れた存在だとかいう動画を見たことがある。

その時は興味があったが、ファンタジーな異世界に召喚されると、なんでもありじゃないか、と思えてくる。

さすがに宇宙人との邂逅にはビビったし、胸が高鳴ったが、神が宇宙人説とかを聞いてしまうと萎える。

「異世界の魔人とか割と人型だったし、宇宙要素なかったしなぁ。それに、こっちの世界の神が宇宙人でも、そうじゃなくても、俺の生活はなんもかわらないし。むしろ、ジャックたちと出会えた方が貴重だよ! ワンチャン、月へ旅行とか行けるんじゃね? 言ってみたいね、地球は割と青くなかった、とか」

男のスマホを回収して、指紋認証でロックを解除すると、メッセージなどで誰かに宇宙人のことを話していないか確認していく。

幸い、誰にも伝えていないようだ。

「よし。これで仲間が後から来ることはないだろう。監視カメラを潰したようにスマホとかその辺もみんな潰してもらって……せいぜい修理代に泣くといい」

アイテムボックスから適当な縄を出すと、霊能力者と一般人たちをぐるぐる巻きにしておく。

しばらく目を覚まさないだろうが、万が一ということもあるので念入りにしておいた。

「……さてと、問題はこいつらをどうするかなんだけど、頼れるところはひとつしかないよなぁ」

最初こそ、この施設ごと潰してしまおうと考えていた。

夏樹の力なら問題なく、この施設だけを周囲に被害を与えずに破壊することができる。

しかし、そんなことをすれば、明日、困る人も出てくるだろう。

「俺も丸くなったもんだ」

そんなことを呟きながら、青山署長に電話した。

「あー、もしもし。俺俺。いや、俺俺詐欺じゃないよ! 由良夏樹くんです! あのさ、ちょっと力を貸してほしいというかなんといいますか……はい、いろいろやらかしました。ただ、できればおじさんが信頼できる、本当に口の堅い方だけを、はい、はい、あざっす! よろしくお願いします!」

おじさんに事後処理をするために助けを求めたところ、なにかしらやらかすと思われていたようだ。ただ、今日の今日、問題を起こすとは予想外だったらしい。

夏樹も起こしたくて問題を起こしているわけではない。

「とりあえずジャックに一通りぶっ飛ばしたって、伝えにいこっと」

霊能力者たちから興味を失い、部屋から廊下に出た瞬間だった。

――ばさっ。

大きな翼が羽ばたくような音が聞こえると同時に、『誰か』が廊下の奥に現れた。

(おいおい、感知できなかったぞ!?)

夏樹が身構えいつでも戦えるよう魔力を高めると、靴音が近づいてくる。

ビルに入ってから警戒を緩めていない夏樹が感知できなかった『誰か』に緊張が高まる。

「なーんじゃ、強い力を感じたんで魔族かと思ってぶっ殺してやろうかと思ったんじゃが、あん? 貴様、人間か? あー、なんじゃ、歪な人間じゃのう。混ざりものか? うーん、違うのう。ま、よいよい。よくわからんが、ぶっ殺せば問題解決じゃ!」

声は女の声だった。

だが、人間ではないのは間違いない。

魔力と霊力とはまた違う力を感じる。

どこか神聖さを持つ、また別のなにかだ。

「俺に殺されることを光栄に思うんじゃぞ。なんたって、俺はルシファーなんじゃからな!」

美しい少女だった。外見年齢は十七、十八くらいだろう。大人びてもいるが、子供っぽさも感じる。

一見すると、背の高いスラリとしたモデルのようだ。足は長く、細いくせにくびれがはっきりとしている。彫りの深い顔立ちから、明らかに日本人ではないのがわかる。

脱色では真似できない金髪はさらりと腰まで伸び、細身のジーンズに膝まである編み上げブーツを履いている。上は派手なTシャツの上に、くたびれたカーキ色のモッズコートを羽織っていた。

(え? ちょ、今ルシファーって言った!? 堕天使の!? 魔族的な!? あれ、宇宙人が神々説合ってた!? でも、ルシファーだと神じゃないから違う? あれ、天使か? うーん、元天使だっけ!? ああ、もう! わかりづらいのがきたなぁ!)

判断に困っている間に、ルシファーを名乗った少女が純白の翼を広げて床を蹴る。

刹那、夏樹の眼前に拳を振り上げた少女がいた。

「速っ」

「お前が遅いんじゃ!」

少女の拳が夏樹の顔面めがけて放たれた。