作品タイトル不明
49「リヴァイアサンが来るんじゃね?」②
帰宅した夏樹と、遊びに来たリヴァイアサンを出迎えてくれたのは、小梅・ルシファーの飛び蹴りだった。
「なんでおどれが夏樹と一緒にいるんじゃぁあああああああああああああああああああ!」
「ぶげらぁ!?」
小梅の足がリヴァイアサンの顔面にめり込んだと思ったら、次の瞬間に吹っ飛んだ。
さすがにそのまま放置すると、お向かいのお宅の壁を突き破る可能性があったので、夏樹は手を伸ばしてリヴァイアサンの襟首を掴む。
「――くぺっ」
「あ、ごめん」
思い切り首を絞める結果となってしまい、リヴァイアサンが変な声を出す。
慌てて手を離すと、彼はその場に倒れゲホゲホと咳をする。
「……夏樹。元いた場所に捨ててこんかい」
「犬猫を拾ってきたみたいに言わないでよ」
「ワンワンやにゃんにゃんじゃったら、かわええから春子ママに土下座して飼わせてもらうが、こやつはいらん! だいたい、クソサタンもクソリヴァイアサンもポンポン人間界来よって。おどれらのような力が強い奴らが遊びに来よったら人間様が迷惑するじゃろうが!」
「お前に言われたかねーよー! 魔王の娘ぇ!」
咳き込んでいたリヴァイアサンが額に血管を浮かべて怒鳴る。
嫉妬している以前の問題として仲が悪いようだ。
「夏樹、気をつけい。こやつはこんな可愛らしい見てくれをしているが、男じゃぞ」
「うん。知ってる」
「……おどれ、知ってて連れてきよったんか? ちょっと小梅ちゃん的には心配なんじゃが。多様性の時代につまらんことは言いたくないが、そっちに足を踏み込むにはちと早いじゃろう」
「違うよ! そりゃ、男の娘に興味のない中学生はいないだろうけど、ほら、それは思春期特有のあれこれそれと言いますか」
「……思春期真っ盛りの中学生がいろいろなもんに興味があるのは仕方がないじゃろうが、リヴァイアサンはいかん!」
「てめーは父親かぁああああああああああああああああああああ!」
無視されたリヴァイアサンが魔力を吹き上げて絶叫した。
おそらく素の声なのだろう。
先ほどまでと違って、ちょっとハスキーな声だった。
「俺の商売道具に汚ねえ足で蹴り入れやがってぇえええええええええ!」
「ご褒美じゃろ。喜んでええぞ。あと、金払え」
「ふっざけんなっ! 俺の動画登録者数百万人だぞ! 負傷した顔じゃ、動画配信できねえじゃねえか!」
「可愛くなってよかったじゃろ。あと、いいんか?」
「あぁ?」
「素が出とるぞ」
「――あ」
ハスキーボイスで怒鳴るリヴァイアサンは、今まで夏樹が聞いてきたどの喋り方よりも荒々しく男らしかった。
おそらくキャラ作りしていたのだろう。
ちょっとだけショックだった。
「……あー、ごほん。あーあー。もうっ、小梅ちゃんったら僕の可愛い顔を足蹴にするなんてダメなんだぞー。ぷんぷん!」
「今さら媚びっ媚びの声出しても遅すぎじゃろ」
なんとも言えなくなってしまった夏樹ではあるが、可愛らしいお顔から鼻血を垂らしているのも可哀想だったので、そっとティッシュを差し出したのだった。