作品タイトル不明
間話「ゴッドも大変じゃね?」
神の中の神――ゴッドは、向島市にある喫茶店『最初の妻』の定位置である奥の席でガクガクと震えていた。
「はわわわわわわわわわわわわわ」
コーヒーカップを持つ手も小刻みに震え、テーブルがコーヒーで濡れて行く。
「……ちょっと、掃除が大変だからあまり汚さないでほしいんだけど」
小梅・ルシファーの母であり、魔族のビッグネームの一柱であるリリスが、後光で顔色こそ見えないが動揺を隠せないでいるゴッドにおしぼりを投げつけた。
「失礼しました。あまりにも予想外のことが起きてしまったので、つい」
受け取ったおしぼりでテーブルを拭きながら、残ったコーヒーを一気に飲み干した。
「――ふう」
「なにがあったの?」
「……由良夏樹くんが勇者として召喚という名の誘拐をされた世界が滅びました」
「いいことじゃない」
リリスはあっさりとした反応だった。
世界が滅ぶなどよくあることだ。
地球だっていつかは滅ぶ。
当たり前のことであるので、驚いたりはしないのだ。
「個人的には、夏樹くんだけではなく佐渡祐介くんも攫っていますからね。滅んでもざまーみろとしか思いませんが、上はそうはいかないようです」
「上って、上?」
「ええ、上です。先ほどメッセージで、連絡がありました」
「もっと上も近代的ねぇ」
「例の世界が滅ぶといろいろ地球をはじめ他世界に影響があるそうです」
「でも、もう、滅びちゃったんでしょう?」
「はい。ですから、一時的に時間を巻き戻す、と」
「は?」
「ゴッド的にはわかりませんが、世界は辻褄合わせとしてテコ入れが行われているようです。上のすることに、我々が関知などできるはずがありません」
「まあ、別にいいんじゃない。関係ないんだから」
「そこです!」
がたん、とゴッドは音を立てて立ち上がった。
「例の世界を担当していた魔神がとち狂ったせいで、神が管理しない無法地帯でした。時間を戻すとはいえ、すべてがご都合主義にはなりません」
「早く結論を言いなさいよ」
「夏樹くんが魔神を殺し、地球に帰還する瞬間まで例の世界を巻き戻します。その上で――私が管理神となってしまったんですよぉおおおおおおおおおおお!」
「あ、そう」
リリスにとってあまり興味を抱くことではなかったので、カウンターに戻って開店準備を続けた。
「……困りましたね。例の世界は、最終的にお馬鹿な人間たちが決戦兵器を使おうとして大自爆をして結果的に魔族を巻き込み、生物が住めない土地にしてしまったのですが。やはり人間を排除して魔族たちに世界を支配させた方がいいですね」
はぁ、とゴッドはため息をついた。
「ゴッド的には遺憾ですが、夏樹くんにお力をお借りするかもしれませんね」