軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41「なんとか帰路じゃね?」①

「らん、らららーん。らんらんらんらん!」

夏樹は学校の廊下をスキップしていた。

「まもんまもんでもなく、すさすさでもなく、ぬらぬらでもなく、男の娘のリヴァ子でもなく、雷神トールさん! いやー、異世界から帰還してそろそろ二週間だけどようやくまともなビッグネームに会えそうじゃね?」

夏樹のテンションは上がりに上がっていた。

「北欧神話いいよね。オーディンとかロキとかにも会ってみたいし、フェンリルとか捕まえてお家にお迎えしたい!」

「――なに物騒なことを言っているんですか」

そんな夏樹にツッコミを入れたのは、スクールバッグを持った水無月都だった。

「あ、都さん。お疲れーっす。じゃあ、また明日!」

「待ってください。このまますぐ帰宅ですか?」

「もちろんだよ。家に雷神トールがいるんだぜ。待たせたらまずいっしょ」

「……なぜ雷神トール様が日本の、こんな地方都市に来ているのか不明です……いえ、考えないようにしま……いえ、いけません。天照大神さまにご報告しないと」

向島市の守護者として、観光感覚で来日する神に都は頭痛を覚えたようだった。

夏樹にしたら、今さらだ。

日本の三貴子である天照大神、素盞嗚尊、月読命と邂逅しているのだ。もっといえば伊邪那岐命とも出会っているし、ゴッドともお茶をしている。

雷神トールを小物扱いするつもりはないが、もう慣れてきた。

なによりも、グレイ型宇宙人であるジャックとナンシーと一緒に宇宙で大冒険したことの方が、神々と会うよりもやばい気がする。

夏樹だってまさか、異世界で手に入れた勇者の力で宇宙船を両断する日がくるとは思いもしなかった。

「……そういえば、聞きましたか?」

「なにを?」

「朝、突っかかってきた生徒がいたでしょう?」

「あー、うん。いたね」

「彼らは停学になったそうです」

「なんで、また」

「バスケ部と一緒にいろいろ楽しんでいたようですが、私たちが密告した日は不参加だったようです。しかし、他にもいると睨んでいた先生たちがいるのに、夏樹くんにあれだけ目立つウザ絡みをしたのですから、即バレですね」

「ざまー」

中途半端なヤンキーみたいな中学生が停学になろうと、ならなかろうとどうでもいいが、とりあえずざまあみろと思った。

貴重な童貞を簡単に卒業するから、痛い目を見るのだ。

「……それと、夏樹くんに謝ることがあります」

「え?」

「綾川杏さんが屋上にいきましたよね」

「あー。うん。きたきた。相変わらず、わけわかんない子だね」

「お知らせしようと思っていたのですが、それよりも早く動かれてしまいました。ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。ちょうど月読先生もいたからさ」

「それでもごめんなさい」

綾川杏が屋上に来てしまったことを、都は失態だと思っているようだ。

今までも、夏樹が不在の間に顔を出していた杏の対応をしてくれていたのは都なので、感謝こそしても謝罪を求めたりするつもりはない。

「だから、いいって。ま、あの子はなんなんだろうね……一登が一生懸命言葉をかけたのにそれが通じていなかったっていうのなら、もういいんじゃない。好きにさせておこう」

「それだと夏樹くんが」

「俺が鬱陶しいって思うくらいならそれでいいよ」

「……一応、お伝えしておきますが、三原優斗が亡くなったと聞いたことで、なかったことになったと思っていると思われます。そういう言動をしていると、少し耳にしました」

「あー、そういうことか。それこそどーでもいーわー」

優斗が亡くなっても、今まで杏がしたことがなかったことにはならない。

せめて、嘘でも謝罪をすれば、まだ話をする余地があったのだが。

「とりあえず、あの子に関しては放置でいいよ。相手にするだけ、ああいうのは無駄だから」

そんなことを話しながら、下駄箱でスニーカーに履き替えて校門を出た。

すると、小柄な人影がものすごい早さでタックルしてきた。

「ぐぺっ」

受け止めたものの、衝撃は結構あり、夏樹の口から変な声が出てしまう。

「ずっと待ってたよー。夏樹きゅんの、かわいいお嫁さん。リヴァ子たんだよー!」

「……もしかして、このリヴァイアサンを連れて雷神さんと会うの?」

――きっと愉快なことになりそう。