作品タイトル不明
間話「さまたん激怒じゃね?」
『まもんまもんちゃんねるはーじーめーるーまもんまもん!』
かつて魔界に名を轟かせ、魔王とさえ呼ばれていた魔族サマエルは震えていた。
『まもんまもんの相談まーもん! さあ、記念すべきまもんまもんちゃんねる初の相談者は……まもんまもん。結婚の約束をしていた幼馴染みが浮気をしていたんです、と悲しいまもんを訴えてきた社会人Mさんだ、まもんまもん!』
幾人もの魔族と戦い、殺し、蹂躙し、時には裏切られてきた。
ときには天使さえも食らいつくし、天界を破壊しようとさえしたことがある魔族こそサマエルだった。
そんなサマエルの長い生の中で、これほど怒りを覚えたことはなかっただろう。
自分の名を使い、弱き魔族たちを虐げていた仲間を殺した時も、配下に加わった魔族たちがすべて寝返った時でさえ、サマエルはこれほど怒りを覚えたことはない。
これほどの怒りを覚えたのは初めてだった。
つい先ほどまで、今までの生の中で最も怒り狂ったのは冷蔵庫に入れておいたコンビニのプリンをマモンに食べられたことだった。
だが、それ以上に許せないことをした。否、された。
『浮気者は殺してもいい、さまたんもそう言ってたでまもんまもん』
「こいつサブチャンネル作りやがったぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
何気なく自分の動画をタブレットで確認していたサマエルだったが、概要欄からなぜか『まもんまもんちゃんねる』なるものに移動してしまった。
そこで知ったのだ。
こっそりマモンがサブチャンネルを始めたのだ、と。
腹が立つことに、あくまでもさまたんの愉快な仲間たちのひとりであるマモンがサブチャンネルとして始めたという体をとっている。
主はサマエルですよ、と形はそう言っているのだが、
「登録者数がなんで私のチャンネルより多いんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
さまたんチャンネルの登録者数は、現在21349人。
対して、まもんまもんちゃんねるは、現在25045人。
登録者数で負けていた。
「あのまもんまもん野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお! この間、警察に捕まった時に泣いてたくせにぃいいいいいいいいいいいいいいい! 幼稚園時代から、どれだけ面倒見てやったと思ってるんだぁあああああああああああ! 裏切り者めええええええええええええええええええええ!」
――さまたん激おこである。
「ただいま帰りまもんまもん。今日の亜子さんも素敵でまもん。おや、サマエル様、もうお仕事は終わりましたか? まもんまもん。それでは夕食の支度を――」
「まーもーんー」
「な、なにかまもんまもん?」
「こーれーなーんーだ?」
「――まもんっ」
さまたんがタブレットを見せると、マモンは青い顔をした。
隠すつもりはなかったが、まさか動画投稿初日でバレるとは思っていなかったのだ。
「こ、これには東京湾ほど深い理由があるのでまもんまもん!」
「……言ってみ?」
「まもんまもんちゃんねるがまもんまもんの的に人気になれば、俺はまもんまもんなインフルエンサーまもんまもんとして顔が売れ、前回のように警察にお世話になるようなまもんまもんな失態を犯さずに済むのではと思いまもんまもん」
「……おかしーなー。我が忠臣であるマモンが、私に断りなく勝手にこんなことをするとは思えないんだけどなぁ。いや、誤解するなよ。サブチャンネルはいいんだよ。登録者が超えられたことも、一日ですごいことも、いいんだよ。でも、律儀なマモンらしくないなぁ。それが気に入らないなぁ。誰か裏で手を引いてるだろ?」
おそらく全力の夏樹でも太刀打ちできないであろう魔力がさまたんから放たれる。
七つの大罪の悪魔であるマモンを優に超え、いや、数倍の魔力量だった。
「……サタンがサブチャンネル込みで登録者百万人達成するのもありと言ったので、ついまもんまもんが差しまして」
「それは魔が差しましてでいいのか? ああん? それだけじゃねえだろ」
「サマエル様にバレなかったら、登録者数を二倍計算して良いとも言われまもんまもん」
「サタンんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん! てめぇ、遊んでやがるなぁあああああああああああああああああああああああ! 次あったら、股間蹴り上げてやるよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
と、激怒したさまたんであったが、マモンがサブチャンネルを続けることに特に反対はせず見守ることにした。
だが、この時、さまたんは予想できなかった。
お悩み相談室として始めたまもんまもんちゃんねるが、カップルチャンネルになろうとは――!