作品タイトル不明
24「ちょっと遅いんじゃね?」
夏樹たちを見送ったぬらりひょんと遠野の妖怪たち。
「なっちゃん、せんちゃん、ゆうちゃんがいなくなっただけで随分と里も静かになっちまったもんだねぇ」
「そうだにゃぁ。祐介と一緒に人間社会に出ても楽しそうだったにゃんけど、里でのんびりするのが一番にゃん」
「違いねぇ」
夏樹たちは去ったが、妖怪たちはどんちゃん騒ぎを続けている。
おそらく、明日の朝まで続くだろう。
妖怪の寿命はとても長く、時間感覚も適当だ。
下手をすれば飽きるまで宴が続く可能性がある。
「ところでにゃん、京都の奴らは放っておいてよかったにゃん?」
「ああ? 安倍一門は関わらねえと言ったんだ。あちらさんは約束事を守る一族だからな、心配はいらねえだろう」
「違うにゃん。酒呑童子たちの方にゃん。山にこもっている奴らも、他の妖怪もぬらりひょんがやると言えば喜んで戦うにゃん」
「そっちかい。酒呑童子の奴も、全盛期に比べたらだいぶ弱体化したようだしなぁ。だが、まあいいさ」
「にゃんにゃん?」
「俺ぁ、もう仲間を失うのは懲り懲りだからよぉ」
「……そうだにゃん」
ぬらりひょんの根本は仲間を失いたくない、だった。
夏樹の力を知り接触を図ったのも、最初は仲間のためでもあったのだ。
だが、思惑はさておき、出会えてよかったと思っている。
夏樹ならば、約束を守って遠野に手を出すことはないだろう。また、なにかあれば助けてくれるはずだ。
しかし、ぬらりひょんは、夏樹になにかあれば自らが足を運び力になることを決めている。
それが、義理だ。
「さーて、一反木綿が帰ってきたら結界を閉じて、補強もしねえとな。シラフの妖怪どもを集めて、みんなで頑張ろうかねぇ」
「にゃー!」
ぬらりひょんと猫又が里の入り口に背を向けようとした刹那。
空から、稲妻が降り注いだ。
「――あん?」
警戒心を露わにしてぬらりひょんが虚空から刀を抜いた。
猫又は爪を伸ばし、唸る。
酒を飲んで騒いでいた妖怪たちも、まるで夏樹たちと触れ合っていたときとは別人のように剣呑な雰囲気となった。
「誰でい」
稲妻の中から現れたのは、紫電を纏った男性だった。
黒皮の鎧を身につけ、漆黒のマントを靡かせた、金髪を伸ばした無精髭の端正な容姿を持つ男だった。
アイスブルーの瞳の中に、雷がバチバチと音を立てているのがわかる。
――神だ、とすべての妖怪が理解した。
それもただの神ではない。上位の神族だ。
「我が名はトール。オーディンの息子である! ここに由良夏樹がいるであろう。彼に会わせてもらいたい!」
「……帰ったぜい?」
「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
「にゃーん」