軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21「宴会じゃね?」

「いえーい! 遠野の妖怪さんいえーい! 河童キングいえーい! 河童勇者いえーい!」

京都の霊能力者安倍一門が去っていき、緊張に包まれていた遠野の妖怪の里だったが、ぬらりひょんの仕切りによって当初の予定通り、夏樹たちの歓迎会をすることとなった。

里の中央部分に茣蓙を敷き、まるで花見でもするかのように料理や酒を持った妖怪たちと一緒にどんちゃん騒ぎが始まった。

里のみんなが集まってきていて、河童の長である河童キングも夏樹たちの前に現れ、先日同胞を救ってくれたことと、偽河童キングを退治してくれたことを感謝してくれた。

河童の王様に礼を言われた夏樹は喜んで踊り出す。続けて、気のいい妖怪も踊り出した。

「ねえねえ、そこの小豆洗いさんの華麗なステップ最高じゃね?」

「うぜえなぁ! なんでシラフなのに酔っぱらいみたいになってんだよ!」

妖怪たちと一緒に踊り狂っていた夏樹が、電子煙草を吹かしている千手の肩を抱く。

心底鬱陶しいと、テンションが上がらない千手が嫌な顔をする。

その理由は、しくしくと涙を流しながら酒を飲み続ける祐介にあった。

「……こいつもこいつで落ち込んでやけ酒するのはいいんだが、ちゃっかり左右にろくろっ首と二口女を侍らせやがって。面倒臭え落ち込み方すんじゃねえよ!」

「え? 祐介くん、お酒飲んじゃったの? あ、でも二十歳だからいいんじゃない?」

「そうじゃなくてな、さっきからウザ絡みしてきやがって鬱陶しいんだよ! 由良も、俺はのんびりさせてくれ。妖怪の里とか安倍一門とかでもう今日はお腹いっぱいだ!」

「祐介くんも、京都の妖怪が遠野の妖怪みたいじゃないって知ってショックだったんだろうねぇ」

「俺にしてみりゃ、妖怪は怖いもんだ。外国の悪魔なんかが入ってくるまでは、妖怪が日本じゃ最も怖かったんだぜ。いや、人間のほうがおっかねえか」

「千手さんは人間嫌いだもんねぇ」

祐介は、異世界で人間に酷い目に遭わされたから、妖怪に希望のようなものを抱いていたのだろうと夏樹は思う。

もちろん、もともと人外娘が好きだったというのもあるのだろう。

夏樹としては、『妖怪はそういうものだ』と思っているので、別に京都の妖怪が人を喰らおうと、遠野の妖怪が人を喰らわなかろうと、難しく考えないようにしている。

人間が動物を食べるように、鬼などは人間を食う。

弱いものは食われる。それだけの話だ。

肉食動物にサラダの盛り合わせを食べさせて満足しろ、というのがそもそも無理があるのだ。

人間を食う鬼に、人間を食うなというのも酷な話だ。

だが、鬼も人間を食うのなら、人間に抵抗され殺されることを覚悟して食うべきだ。

弱者であっても、死に物狂いになればやり返すことだって可能なのだから。

「祐介くん、お酒はほどほどにしなよ。帰りはまた一反木綿さんだから、飲みすぎると吐くよ?」

「今にも吐きそうだけどな。おい、佐渡。もう酒はやめておけ。ほら、水を飲めって。姉ちゃんたちも酒を注ぐな!」

千手が注意すると、ろくろっ首の女性と二口女が「あら、残念」と笑う。

「まったく。佐渡もあんまり無防備にしてると、違った意味で食われるぞ」

「僕は駄目駄目なんです。せっかくこっちの世界で無双してやろうと思っていたのに、いざ人と戦おうとすると殺すことに躊躇っちゃって。実は、あの時は虚勢張ってただけなんです!」

「……まあ、人は殺さねえ方がいいよ。あと、殺すことに躊躇いがあったほうが、ブレーキになるからな。大事だからな?」

「大丈夫だよ、祐介くん。俺くらいになると、敵対した奴は老若男女種族関係なく斬れるようになるから!」

「……前から思ってたけど、由良も由良で病んでるよな。カウンセリング受けろよ」

しくしく泣き続ける祐介の耳には、夏樹と千手の声はあまり届いていないようだ。

夏樹は、並べてあった草団子に手を伸ばし、頬張る。

かつて異世界では、死んでもこの世界のものを飲み食いするかと思っていたが、妖怪たちが作った団子は平気だった。

よもぎの香りと、甘味の中にほのかに塩味があるあんこが実に美味い。

「食い過ぎるなよ。晩飯までには向島市に帰らないといけないんだぜ。できれば、俺は空のレースじゃなくて、のんびり移動したいからほどほどに頼むよ」

「転移魔法ってないの?」

「ねえよ! むしろ、お前は使えないのかよ!」

「使えないんだよねぇ」

「……お前にも不可能なことがあってちょっと安心したわ。ところで――こんなこと聞くのもアレなんだが、よく安倍円たちを殺さなかったな。殺そうと思えば殺せただろ?」

「そうだねぇ。殺せたねぇ。おじいちゃんが力をあまり使わないで欲しいと言ったのもそうなんだけど、なんか途中から、あの円って子を殺したら後で後悔するような気がしてさ」

「なんだ? やっぱり知り合いだったのか?」

「いいやぁ。記憶にございません」

「なんだそりゃ?」

夏樹としても安倍円の亡くなった友達の名が『由良夏樹』であることに驚きを隠せない。

直感的に、殺さない方がいいとも思ったのだが、どうしても記憶にない。

そもそも京都に行った覚えさえないのだ。

「地球は広いんだから、同姓同名もいるでしょ」

「そりゃそうか」

夏樹と千手は、無理やり納得をしてみたらし団子に手を伸ばす。

醤油と砂糖の絶妙なハーモニーが最高だった。

「僕はっ、勇者由良夏樹と愉快な仲間たちのっ、足手まといですっ!」

「そんなパーティー組んでねえから!」

「急に何言ってんの? 大丈夫、祐介くん?」

涙と鼻水を垂らして、聞いたことのない勇者パーティーを結成していた祐介に、ふたりは突っ込んだ。