軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「逮捕じゃね?」

――青森・某所。

「いやー、マモンがいないとツッコミをしなくていいから仕事に専念できるなぁ」

畑仕事を終えたサマエルは、風呂上がりの体操着姿で麦茶を片手にパソコンでメールチェックをしていた。

昔の知り合いがたまに連絡をくれることもあり、最近では天照大神からもメッセージが来るので、まめにチェックしている。

今までは、自己満足だけで動画をアップしていたのだが、マモンのおかげで動画のアクセスが伸び、サマエルにも応援してくれる声が増えてきた。

魔族であっても、誰かに認められると嬉しいものだ。

つい、動画のアクセス数とコメントをチェックしてしまう癖がついてしまった。

「今頃、マモンは亜子ちゃんと映画館デートか。夕食を食べて帰ってくるみたいだし、まあ、うまくいくといいな」

サマエル的には、魔王を引き摺り下ろし自分を魔王にしようと企んでいたマモンよりも、日々を楽しんで生きているマモンのほうが好ましい。

かつてサタンと魔界の覇権を賭けて壮絶な戦いをしたが、実を言うとサタンもサマエルも魔界などどうでもよかった。

どちらが強いか決着をつけたかっただけだ。

僅差でサマエルは敗北したが、それでよかったと思っている。

サマエルの名の下に集まった魔族は数多く、末端まで面倒を見られない。挙句の果てには、サマエルの名を使って勝手なことをしていたので、何度粛清したかすらわからない。

そんな日々に嫌気が差していたのだ。

それに比べて、今はとても充実している。

欲を言うならば、隣に素敵な男性がいてくれると嬉しいのだが。

「あ、かずたんからコメント入ってる! あの子も、いろいろ大変だろうに。そうだ、今度青森に遊びにきてもらおうではないか。うんうん」

ひとりでさまたんとかずたんのオフ会を考えていると、スマホが鳴った。

表示されている番号は見知らぬ番号だ。

誰だ、と思って通話に出てみると、

「――はぁ!? 警察!? マモンが捕まっただって!?」

想像の斜め上を行く連絡だった。

事情を聞いたサマエルはヘルメットを被って原付に乗ると、市街地に向かった。

「まもんまもん。このマモン……まさか亜子さんとのデートがパパ活だと疑われてしまうとは……しくしくまもん」

「仮にも七つの大罪の魔族が警察にパパ活容疑でしょっぴかれて泣くなよぉ」

警察署から出てきたのは、しくしくと顔を覆って泣いているマモンと呆れ顔のサマエルだった。

亜子はおばあちゃんがすでに迎えにきたので帰宅している。

なんでも、マモンと亜子はいい感じにデートをしていたようだが、映画を見たあとに甘いものを食べて談笑していたら、すっかり遅くなってしまったようだ。

レストランで夕食をしてから帰ろうとしたところ、警察に職務質問をされたのだ。

無理もない。

三十半ばのスーツをびっしり決めた強面のおっさんが、おとなしめな少女と一緒にいるのだ。

警察ではなくとも、いろいろ察してしまいそうな状況だった。

マモンは誤解こそなんとか解けたのだが、亜子に告白しようとしていることをうっかり警官に話してしまい、念のためにと警察署で聴取される形となった。

なんやかんやあって、保護者ではないが身元引受人としてサマエルが呼ばれ、マモンと亜子の関係が決して不純ではないことを力説し、また今後紛らわしいことはさせないと約束した。

警察官も「申し訳ございません。疑いたくないのですが、こんなご時世ですのでご容赦ください」と困った顔をしていた。

SNSで知り合った男女が会うことや、パパ活も、東京だけではない。

警察が気になるのも理解ができている。

ただ、こっそり秘宝級の指輪を用意して告白しようとしていたマモンは、プランの練り直しだと泣いている。

「あのさ、邪魔されてよかったな。プロポーズじゃないのに秘宝級の指輪は重いぞ」

「俺も最初は島くらいにしようかと思っていまもんまもんですが、人間では数分といられない危険な島だったことを思い出しまして……そこで以前、献上されたまもんまもんな指輪をプレゼントしようかと思ったのでまもんが」

「とりあえず、飲もう。居酒屋いって、今日はぱーっと飲もうぜ。話は聞いてやるから。それで気持ちを切り替えて、亜子ちゃんとまたデートすればいいじゃない。な?」

「まもんまもん」

落ち込んだマモンを連れて、サマエルは居酒屋へ向かった。

生ビール、ハイボール、芋焼酎を飲んでご機嫌なサマエルと、珍しく泣き上戸になったマモンは同じ居酒屋にいた人たちと仲良くなり、「JKを狙う強面のおっさんを応援する」として大いに盛り上がった。

「――俺の恋愛はこれからだまもんまもん!」