軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20「新幹線の中じゃね?」

「いやぁ、あの子は強い子やったねぇ。自分が本気で戦っても勝てるかどうかやー。場所が遠野でなかったら、僕らは死んでいたんかもしれんねぇ」

「……あんな奴……次に会ったらボクが殺したるわ」

京都に向かう新幹線の中で、駅弁を美味しそうに食べる安倍東雲と、ミネラルウォーターで喉の渇きを潤す安倍円がいた。

飄々とした雰囲気の東雲に対して、円は少し前まであった余裕がなくなり苛立っているのが丸わかりだ。

「円? なんかあったんかい?」

「……なんでもあらへん」

「そういえば、あの子の名前聞いとらんかったなぁー」

「由良、夏樹やて」

「あららー。そんな偶然あるんやねぇー。神様もいじわるするわぁ」

東雲が箸を止めて、円の頭を撫でた。

だが、円は兄の腕を振り払う。

「円も変わってしもうたもんね。自分も数えるほどしか会ったことはなかったんけど、いい子やったもんねぇ。四年くらい前やったね。京都に親御さんの仕事の関係かなんかで引っ越してきて……偶然、円と仲良うなって」

「あの子とん毎日は楽しかった。安倍とかいう古い家に生まれたせいで、ボクは友達もおらへんかった。でも、あの子は、そんなボクと友達になってくれたんや。――それがあかんかった。一般人が霊能力者なんかと一緒におるから、悪い鬼に目ぇつけられて殺されてしもうた。何度悔いても、あかん」

円の友達のことは東雲も知っていた。

弟が、その友達とどのようにして出会ったのかという詳細まではわからないが、とても仲良くなった友達ができたと笑顔で教えてくれたことを今でも覚えている。

だが、二週間ほど経ったある日、円は血まみれで帰ってきた。

東雲はもちろん、家人たちも慌てて何があったのか、怪我をしていないかと心配したが、その血は円の友達のものだった。

京都には酒呑童子を頂点に鬼たちの勢力がある。

安倍一門が滅ぼすべき鬼たちだ。

向こうからすれば、安倍一門は滅ぼすべき存在なのだろう。

酒呑童子は強者にしか興味がないが、末端の鬼どもは違う。

安倍家の五人兄弟の中で、当時霊力的に目覚めていない円を襲ったのだろう。

そして、由良夏樹という友達が巻き込まれてしまった。

不幸なことに、この一件をきっかけに円の霊力は開花し、安倍一門次期当主である東雲に次ぐ潜在能力を手に入れた。

しかし、円にとっては、霊能力は友達の死と引き換えに得たようなものであり、呪いであり、重荷でしかなかった。

円はもちろん、東雲も、鬼以外の妖怪が人に害をなさないのであれば友好的に接してもいいと思っていたが、円は妖怪全てを恨むようになったのだ。

「忘れろとは言わんけど、乗り越えんとあかんよ」

「……ボクがあの子の死を乗り越えるんは、あの子を殺した鬼を八つ裂きにしてからや」

「せやな。止めはせんけど、命は大事にせえよ」

「わーっとる。ボクの力は知ってるやろ。式にした鬼を身代わりにしとるから、滅多なことでは死なんよ」

「……その式も半分は使い物にならへんやろう?」

兄の指摘に、円は口を閉じてしまう。

事実、夏樹の攻撃によって本来なら死んでもおかしくない重傷を負うはずが、鬼に肩代わりをさせてことなきを得ていたのだ。

しかし、攻撃回数以上に、式が消費されてしまった。

つまり、滅多なことではあり得ないことだが、鬼が肩代わりできる許容を超えた攻撃を食らったこととなる。

「次は攻撃なんかさせへん。最初からとっておきを使って殺したる」

そう言って、口を閉じた円は、これ以上夏樹に関して話すつもりがないようだ。

東雲は駅弁を食べることを再開する。

もぐもぐと駅弁に舌鼓を打っていると、ふ、と考えてしまう。

(円には言えへんけどー。自分の記憶にある由良夏樹くんと、さっき会った由良夏樹くん……どことなく面影がある気がするんやけど……ありえへんよね)