作品タイトル不明
18「円の理由じゃね?」②
夏樹は常闇の魔剣を構えた。
「……まあええけど。話がわかるんみたいやから、京で鬼退治に誘おうかと思ったんけど、まあ無理やったよねぇ」
「俺も鬼退治はしたかったけど、遠野の妖怪テーマパークの場所を知られたのなら、口封じしておかないとな」
「……ボクを殺しても、他の奴らもざっくりとした場所は知っとるで」
「そうなの?」
「そうやで」
「……まあいいや!」
夏樹は気持ちを切り替えた。
いろいろ理由をつけて戦うのは自分らしくない。
敵対したから、殺す。
それだけでいいのだ。
余計なことを考えたくないし、あとで悩んだりもしなくていい。
「よし。じゃあ、次は殺す」
「やってみい」
円の言葉が終わる前に、夏樹は彼に肉薄し、胸に魔剣を突き立てた。
必ず殺すために、刺さった魔剣を真っ直ぐに下ろす。
血液と内臓がこぼれ、地面を赤く染める――はずだが、また円は無傷だった。
「あれ?」
「やっぱりキミ怖過ぎ」
「なんか使ってるな?」
「言うと思うん?」
「普通は言わないだろね」
「せやね。自分の命を守ってる小細工をペラペラ喋る子は自殺志願者や」
「違いない」
夏樹は少しだけ、残念に思った。
円のことは夏樹はあまり嫌いになれなかった。
妖怪を使役し、使い潰すやり方は決して好きになれないが、敵対する相手にとことんやることはどこか親近感を覚える。
それに、夏樹が嫌悪する異世界人とも違う。話していて、不快感がない。
行動理由も友達を失ったことなら納得もできる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言うように、妖怪に友達が殺されたのなら、すべての妖怪を憎んで仕方がない。
夏樹も異世界人は全員嫌いだ。
「じゃあ、死ぬまで殺してやるよ」
「やってみいや――待った。その前に、キミん名前を聞いておこうか?」
「あれ? 俺名乗ってなかったっけ?」
「名乗ったんけど、ジェームス・N・Y・カッパーは本名やないやろ」
「……魂のお名前だよ!」
「肉体の名前を名乗れや」
「――由良夏樹だ」
「なんやって?」
夏樹が名乗ると、円の雰囲気が変わった。
円は夏樹を睨むと、自らの爪を噛んだ。
「……由良、夏樹やて?」
「あ、うん」
「……よりによって……。なんでキミが、ボクの大好きな親友の名前を使っとんねん!」
「え?」
さすがに夏樹も驚き、言葉が出なかった。
まさか円の死んだ友達の名前が、自分と同じものだと誰が予想できようか。
「キミのことはそんなん嫌いやなかったけど、気が変わった」
「……俺は逆に気が萎えたよ」
「ぐちゃぐちゃにしたる」
円が符を取り出し、唇を噛むと血をつけた。
夏樹だけではなく、ぬらりひょんや千手、祐介が身構える。
あまりにも禍々し気配が広がった。
夏樹は聖剣を握り、円が持つ符ごと彼を斬り捨てようとする。
だが、夏樹が仕掛けるよりも早く、――ぱんっ、と手を叩く音が響いた。
「はーい。そこまでやでー」
音には霊力が込められていた。
その作用は、音を耳にした者たちに冷静さを与えるものだった。
「それはあかんよー、円ー。なんか妖怪さんもすんませんー」
どこか軽い感じの声が響き、黒いスーツを着込んだ白髪の青年が現れた。