軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15「河童勇者が降臨じゃね?」②

夏樹が右手を上げると、太鼓の音が止まる。

「ありがとう、河童さんたち。俺は河童さんたちにたくさんの愛と勇気をもらったよ!」

ハンカチで目元を抑える夏樹が、地面に降りてきた。

そして、目元から口元にハンカチを移動させる。

「ちょっと酔っちゃった」

「お前、何してるんだよ!?」

我慢できずに突っ込んだのは千手だった。

「いやぁ、なんか霊能力者がきたなーってわかったからおじいちゃんと向かおうとしたら、河童さんたちが神輿に乗せてくれるって。だから、ほら、ここって妖怪の里遊園地じゃん? もうお願いするしかないかなって」

「祐介よりも満喫してるじゃねえか! つーか、こっちがシリアスしていたのに、お前は絶好調だな!」

「そんなに怒んなくてもいいじゃん。それよりも」

夏樹は千手の目を覆うように右手を当てると、「ヒール」を施した。

淡い光が千手の顔を包む。

「――千手さん。少し休んだほうがいいよ。本来、制限かけられて使えない魔眼を無理やり使ったでしょう?」

「……バレたか」

「そりゃばれるさ」

「ちゃんと使えりゃ、あんな雑魚、クソ親父とクソ兄貴みたいに永遠に止めてやったがな」

「この里の名所にしてやろうぜ!」

「そりゃいい。それじゃあ、あとは任せた」

「はいよ」

交代とばかりにハイタッチをする。

千手は少し離れた場所に胡座をかいて観戦モードとなる。

「祐介くんも、まだ心が万全じゃないんだから無理しちゃダメだよ」

「……夏樹くん。僕は妖怪が善良な存在だって勝手に思い込んで」

「河童さんは善良だよ!」

「あ、はい」

「真面目なことを言わせてもらうと、別にどうでもいいんじゃね? 妖怪だって、自分が仲良くしたいと思う妖怪と関われば良いんだし? 人間と人間だって同じじゃん。俺は第三者が妖怪さんを悪く言っても気にしねーよ。まあ、妖怪さんでも俺の家族に悪さしたら聖剣でぶった斬るけど」

「……僕もそれだけ思い切りがよかったらいいのにね」

「それだって、俺は俺だし、祐介くんは祐介くんだからさ。とりあえず、こいつらはサクッと退場してもらって、妖怪さんたちとキャッキャうふふしようぜ!」

祐介の肩を叩いて、にっ、と笑顔を作ると、夏樹は律儀に待っていたふたりと向き合う。

「おうおう、お前どこ中だよ?」

「……本当になんなんこの子? 意味わからんわ」

「まあ、待て、円。俺に任せておけ」

巨漢の男が夏樹の前に立ち、指を鳴らす。

平均的な身長よりもちょっと低いくらいの夏樹に対し、男は一回り以上大きかった。

「おじさん、でっかいね?」

「……まだおじさんと言われる歳じゃないんだがなぁ。まあ、いい。見たところ、凄まじい魔力を内に秘めているな。正直なところ、こうして向かい合っているだけでも呼吸が止まりそうだ。俺にはわかる、お前は強い! だからこそ、俺は楽しみだ!」

「……え? 俺にボコされるのが楽しみなの? 趣味嗜好はそれぞれだけど、ちょっと俺は遠慮したいかなぁ」

巨漢の男――熊崎が霊力を高め、肉体に循環させていく。

太い手足が、より太くなった。

「うわぁ、すごいね。この腕毛。ぬいちゃえ、えい!」

「はうぅっ! こら、少年! 大事な毛を抜くんじゃない!」

「大事なんだ……なんかすみません」

「わかってくれればいいんだ。というわけで、よし、やろうぜ!」

轟っ、と音を立てて熊崎の拳が夏樹の顔面に直撃した。

「ふははははははっ! どうだ、俺の筋肉から放たれる岩をも砕く拳――を?」

熊崎の言葉が止まり、大きく笑っていた顔から表情が消えた。

「……あのさ、なにこの腰も力もなんにも入ってない拳は? 殴るっていうのは、こうやってやるんだよ!」

怪我ひとつどころか、夏樹は身体ひとつ動かさず、防御の姿勢も取らずとも、熊崎の拳が傷つけることはできなかった。

もっと正確に言うのなら、届いていなかったのだ。

「あ、ありえん! 俺の拳は、鬼を殺すんだぞ!」

「知るかよ!」

夏樹の魔力に阻まれ、熊崎の拳は夏樹に触れることさえできなかったのだ。

「まずは、妖怪さんの村への入場料を払いやがれ!」

夏樹は思い切り腕を振りかぶる――と、見せかけて、思い切り熊崎の股間を蹴り上げた。

「ハイパーウルトラギャラクシークレンジングマモンマモンエンジェルカッパー勇者キックっ!」

「――かぴょ」