作品タイトル不明
14「河童勇者が降臨じゃね?」①
「せ、千手さん」
「馬鹿野郎、佐渡! 妖怪だってそりゃ人を食うだろ! 人間に悪人がいるように妖怪だってそんなもんだ! なに戸惑ってんだ、割り切れ!」
千手に襟首掴まれて叱咤された祐介は、頷くと、再び円と向き合った。
まだ完全に割り切れていないところはあるが、後で考えればいい。
「悪いが、俺は生まれも育ちも霊能力者だ。鬼になんの感情もねえよ」
千手はそう言い放つと、魔眼を発動させて、未だ祐介の肉をうまそうに咀嚼する小鬼の動きを止めると、そのまま霊力を込めた手刀を振り下ろし首を断ち切った。
ごろん、と小鬼の首が円の足元に転がっていく。
「使えん奴やね」
円は首へ唾を吐くと、右足を振り下ろして潰した。
血と脳が地面に広がる。
「あーあ、これで式が一匹減ってもうたから、妖怪を頑張って捕獲せんとねぇ」
「俺たちがさせると思ってるのか? 熊野郎はもう動けねえぞ」
「……アンタも存外、頭ん中がお花畑やなぁ。ボクがアンタの魔眼に抵抗できるのに、熊ができないわけないやろ。熊……遊んどらんと早よう加勢しい。新幹線代くらい働かんと、熊崎家のおかんに文句言うで」
まさか、と千手が倒れていた熊崎に視線を向ける。
直後、「ふはははははははは」と太い高笑いが響いた。
「すまんすまん。異能持ちが珍しくてな。つい、どんなもんだか食らってみてしまった」
「大したことなかったやろ?」
「そうだな。だが、俺の見立て通りなら、本気を出してないな。おそらく、本気で魔眼を使えないのだろう。精進が足りていない証拠だ」
「あらら、半端もんかい」
「――野郎」
悔しいことに熊崎の推測は当たっていた。
今まで十全に魔眼を扱えたことはなく、使いこなせずとも敵対した相手には問題なかった。
例外があるとするなら、由良夏樹だけだった。
現在は、ペナルティとして魔眼に制限をかけられている。おかげで、今までよりも使いやすくなっているが、使いこなせているわけではない。
また、制限のせいでいつもよりも出力が落ちているのも事実だった。
しかし、それを言い訳にはしない。
「さて、次は俺の番だな。肉体的にも霊能的にも鍛え抜いた俺の筋肉を味合わせてやろう!」
「ボクも他の式をご披露してあげるんよ」
ここからだ、と言わんばかりに霊力を練る熊崎と円に対し、千手と祐介も気を引き締め直す。
「いいか、佐渡。京都の連中は、マジで現場慣れしてる。命のやりとりも日常茶飯事だ。霊力がどうこうじゃなくて、マジで殺しにくる奴らだから、俺たちもそれ相応の覚悟で戦うんだ。いいな」
「わかりました。……こんな長閑な里で力を使いたくなかったけど、殺します」
千手はもちろん、祐介も人と戦うという意味を本気で覚悟し、構えた。
その時だった。
どーんっ、と太鼓の音が鳴った。
「太鼓の音?」
どーんどーんどーん、かかかっか。どんどーどどん、かかかっか。
「なんかリズムを刻みながら太鼓の音が聞こえるんけど……なんなん、あれ? なんで、河童たちが神輿担いで、その上に子供乗っとるん?」
「あ、なんかシリアスな雰囲気が消し飛んだ」
「そうだね。終わりだね」
首を傾げる円と熊崎に対し、殺伐とした雰囲気が消えたと確信する千手と祐介だった。
その間にも、河童に担がれた夏樹がまるで玉座に腰を下ろす王のように運ばれてくる。
「なんやねん、キミ。河童侍らせて、神輿乗って。河童の王様かなんかかい?」
河童の足が止まると、円が神輿の上にいる夏樹に尋ねた。
すると、夏樹はくわっ、と目を見開き唾を飛ばした。
「否っ! 俺は河童キングではない! 俺は、河童さんの守護聖人であり、河童さんの隣人。河童勇者! その名も、ジェームス・N・Y・カッパー二世だ!」
「まったく意味がわからんのやけど!?」
河童たちが「カッパー! カッパー!」と神輿を高く掲げ、夏樹を鼓舞するように叫び続ける。
円は心底意味がわからないとばかりに千手に視線を向けると尋ねた。
「この子、なんなん?」
「俺たちがわかるわけねえだろ!」