作品タイトル不明
12「勇者VS式使いじゃね?」①
「あらら、熊がやられてもうた。しようがない奴やねぇ、僕に新幹線代を払わせたくせに、あんな二流の霊能力者に後れをとるとか恥ずかしくてたまらんわ」
京都からやってきた少年は、熊崎が倒れたのを見ても慌てることなく肩を竦めるだけ。
余裕のある態度に、対峙する祐介は怪訝そうな顔をするが、降伏勧告をした。
「言っておくけど、降伏するなら早いほうがいいよ。僕は平和主義なんだ。まだ君たちは妖怪さんたちに手をだしていない。このまま帰るというのなら、そちらをお勧めするよ」
「あらら、妖怪なんて穢らわしい生き物を好きだなんだと言う人間は、思考まで愉快やね。京都からはるばる岩手までやってきたボクが、ここで、はいそうします、なんて言うとでも思ってるん?」
「君たちに理性があると信じたいんだ」
飄々としていた少年だったが、祐介の言葉にがらりと態度が変わる。
少年からは凄まじい殺気が吹き荒れた。
「ぬかせ。キミんみたいな妖怪好きが理性やて? 反吐がでるわ。あんまりふざけたことを言うんなら、その口を引き裂いてキミの大好きな妖怪の目ん玉を突っ込んだるよ」
「……なぜ君が妖怪さんを毛嫌いするかわからないが、ひっそりと暮らしている妖怪さんたちを傷つけはさせない」
「おお、こわっ。でも、いいん?」
「なに?」
「キミがボクに一生懸命話しかけとる間に――ボクは術を完成させたで? キミの魔力を封じたる……クソ急いで早よしいや」
少年が右手で符を持つと、細い唇で「ふう」と吹いた。
「――な」
次の瞬間、祐介の魔力の大半が使用不可能となった。
間違いなく自分の中に魔力はあるはずなのに、まるで枷でもつけられたように重くなった実感が祐介にはあった。
「陰陽道なんかは、なんやかんやあって廃れたけど、代わりに取り入れられるもんをなんでもぐちゃぐちゃに吸収して、とりあえず強うなったんが今の安倍一門や」
「……僕の魔力を全て封じたわけじゃないだろう? 僕は問題なく戦える!」
「そうみたいやね。キミん魔力は大きいんなぁ。混ざりもんでもないみたいやけど、どんな力を使ってもボクには通じへんよ。ボクん特技は鬼ども、つまり『魔』を封じることが得意なんやよ。ついでに人の技もやで」
「嫌な特技だ」
会話を引き伸ばし、封じられた魔力をなんとかしようと祐介は試みた。
少年は自分の術に自信があるのか、余裕を崩さない。
「面白いんやで。粋がっとる妖怪どもが、力ん無くした途端に泣いて命乞いするんや。……お前らが今までどんだけ人を喰らってきたと思っとんや。そんな妖怪どもをぐっちゃぎちゃに踏み躙って、踏み潰すんが、楽しゅうて楽しゅうて――癖になるわ」
恍惚とした表情を浮かべる少年に、祐介が嫌悪混じりの言葉を吐き捨てた。
「……なんて奴だ」
「それはこっちの台詞やで。人間のくせに妖怪に肩入れする奴の方が、よほど気が知れんわ」
少年が符を一枚取り出し、地面に投げる。
直後、符が淡く発光し、一体の小鬼が現れた。
「これが式やで。そうやった。キミん名前だけ聞いて、こっちは名乗っとらんかったね。ボクは安倍円や。よろしゅうね」