軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6「めっちゃ平和な村じゃね?」①

「うわー、妖怪さんたちの遊園地だあぁあああああああああああああああああああ!」

ずぶ濡れで潮臭い祐介は、爛々と目を輝かせていた。同じく、ずぶ濡れの千手が襟首を掴んでいなければ今にも走り出しそうだ。

まるで遊園地に訪れた子供のようなはしゃぎぶりだった。

「あれー? 俺には、ちょっと昭和チックな長屋が並ぶ、普通の村って感じなんだけど? あれ? 俺の目が変なの?」

「安心しろ、由良。俺にも同じように見える。佐渡の目が、いや、脳がおかしいんだ」

夏樹は何度も目を擦ったが、レトロな村が広がっているだけで、決して遊園地には見えなかった。

千手も同意見のようで、少しだけ安心する。

「なんだ、なんだ。こんな寂れた集落をなっちゃんたちが喜んでくれたのならなによりだぜ。とりあえず、俺の家に行くか。お茶と饅頭くらいは出すぜ」

「ご馳走になりまーす」

「あと、風呂と着替えも頼みたいんだが」

「ははははは、もちろんだ。風呂は温泉が共同であるから、そっちに入ってくれ」

「……もしかして、混浴ですか!?」

「……ゆうちゃんは男の子だなぁ。基本的に、自由に入っていいんだが、仕切りはしてあるぜい」

「しょぼーん」

「祐介くん、めっちゃ落ち込むじゃん! 出会ったばかりだけど、こんなにテンションが上がったり下がったりする祐介くん初めて見たよ!」

目を虚ろにし、今が現実か夢かさえわからず部屋に閉じこもっていた佐渡祐介はもういない。

元気になった反面、少々、うざいくらいに元気になりすぎたと夏樹と千手も苦笑いだ。それでも、病んだ状態よりもずっといい。

「おーい、そこの。猫又の嬢ちゃん、こちらのお客人を風呂に案内してやってくれ」

「にゃーん」

可愛い鳴き声が響き、夏樹たちが勢いよく声のする方を向く。

猫又といえば、尻尾が二股であることが有名だ。

どんな姿をしているんだろう、と期待してしまう。

「お客さんはひさしぶりだにゃん」

そこには、二足歩行のずんぐりむっくりした夏樹たちと大きさが変わらない黒猫が、一昔前のセーラー服を身に着けて「にゃぁ」と鳴いていた。

「でっか!」

「女の子に、でっか、なんて感心しないにゃ」

「おっと、それはごめんなさい。つい」

「謝ってくれるなら、いいにゃ。素直な男の子は好きだにゃ」

つい大きさに反応してしまった夏樹だったが、女性に大きいだなんだというのは失礼だと、すぐに謝罪すると、猫又は肉球で夏樹の頭を撫でてくれた。

「……それにしても、可愛い声に、媚びたような語尾……嫌いじゃないぜ」

「さすが千手さん。わかってるね。僕もかなりありです! しかも黒猫というのがポイントが高い」

「……すみません。一緒にしないでください」

「あれ?」

「お客さんをお風呂に案内だにゃーん! あ、あちきも一緒に入るんだにゃーん」

「――混浴、だと!? 喜んで!」

だらしなく鼻の下を伸ばして猫又に着いていく祐介と、「でっかいマスコット的な可愛さを感じているだけなんだけどなぁ」と自分と祐介は違うことを主張する千手に手を振り、夏樹とぬらりひょんも移動した。

「……それにしても、みんな人間に友好的だね」

ぬらりひょんに案内されて集落を歩いていると、明らかに妖怪だとわかる者や、一見すると人間にしか見えない者たちが、挨拶をしてくれる。

同じ妖怪のぬらりひょんだけではなく、人間である夏樹にもだ。

「そりゃ、俺たち妖怪は人間が大好きだからな。……一部、食糧的な意味で大好きな奴らもいやがるし、嫌っていたり、見下す奴もいるが、なんだかんだで人間は大事なんだぜぃ」

「……そうなの?」

「そりゃそうさ。俺たちは、なっちゃんたち人間に認識してもらってこそだからな。俺たちが現れて驚いてくれる人間がいないってのは、寂しいもんさ」

目を細めてそんなことを言うぬらりひょん。

彼の瞳は、どこか儚げで、どこか寂しそうだった。