軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2「妖怪がなんか用かい? じゃね?」

「ってことで、妖怪の総大将! ぬらりひょん・善也とは俺のことだぜ! ぬらぬら!」

「……ぬらりひょんだから、ぬらぬら、なのね。わかったらわかったで、しょーもな! ぬらぬらしょーもな!」

「まさか、警察の厄介になるとは思わなかったぜ。おじちゃん、ちょっと涙がでちゃった」

「朝っぱらから中学生を全力ダッシュで追いかけるからだよ。最近は、世間の目が厳しいんだよ」

「ぬらぬら、反省」

「そのぬらぬらってやめない!?」

河原で並ぶ夏樹とぬらりひょん。

夏樹はミネラルウォーターを片手に、ぬらりひょんは煙管を片手に話をしていた。

「とりあえず、なんかスルーしてごめんね」

「いいってことよ。おじさんこそ勝手におうちに入ってきてごめんね」

仲直りの印に、夏樹とぬらりひょんは人差し指の先端をくっつけた。

「でもさ、後頭部が長くないじゃん?」

「あー、それ言っちゃう? それ聞いちゃう?」

「すっごく気になる。人生初ぬらりひょんだから」

「……あのね、おじちゃん、あんまり外見に個性がないのよ。河童とかろくろっ首とかあの辺に比べたらインパクトに欠けるのよ。だから、ね。ちょっと盛っちゃった」

「盛っちゃったかぁ」

「盛っちゃったのよ」

「いやいや、盛るところ違くない!?」

なぜ後頭部を盛ったのか夏樹には理解できなかった。

もっと別の個性の出し方があっただろうに、と心から思う。

「いやさ、語尾つけたりしたんだけど、絵姿だと口調とかわからないじゃん。一応、ぬらりん、がかろうじて現代にも残っているけど、もっと頑張ったんだぜ」

「頑張ったんだ」

「いいよなぁ。河童ってインパクトの塊じゃん。会ったら絶対、あ! ってなるだろ。雪女は美人だし、ろくろっ首も個性強めじゃん。猫又とかずるいよなぁ、尻尾が二本になっただけでチヤホヤされやがって!」

「妖怪同士で個性の派閥争いみたいなことしないでよ」

「知名度があればあるほど妖怪業界じゃドヤ顔できるんだよ! もちろん、俺も知名度はあるけどよう。あのぬらりひょんでしょ。なんか頭違くない? とかJKに言われるのよ」

「なんでJKが出てくるのかな?」

「それはともかく!」

立ち上がったぬらりひょんは、煙管の鋒を夏樹に向けて不敵に笑った。

「みずちを倒し、神々ともよろしくやってる由良夏樹に、妖怪勢からも挨拶に来たぜ! よろしくな! ぬらぬら!」

「あ、語尾は続けるんだ?」

「個性だもの! さーて、ぬらぬら。予定としては挨拶だけだったが、ぬらりひょん的にも興味が湧いちまった」

くいっ、と親指を立てたぬらりひょん。

「ぜひ遠野に招待するぜ。もちろん、ぬらぬら遊びに来るだろ?」

「いえ、これから学校なんで無理です」

「……え?」

「せっかく誘ってもらったのですみません。今年、受験生なんです」

「は?」

「今日は久しぶりに学校行く気だったんで。それにぬらりひょんさんがお弁当作ってくれたし。次の休みじゃ駄目ですか?」

ちょっとファンタジー疲れをしている夏樹は、普通の学校の日々を送りたかったのだ。

「そりゃないぜぇえええええええええええええええええええええ! 神や魔族は相手してるのに、妖怪だけ邪険じゃね!? 妖怪にも優しくしてよ! 日本人なら、妖怪贔屓してよぉおおおおおおおおおおおおおお! ぬっらぬらにすんぞぉおおおおおおおおおおお!」

「こりゃ、今日も明日も学校に行けないぞー!」

――もちろん、夏樹の予想通り、学校へは行けなかった。