軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1「ぬらぬらとか怖くね?」

夏樹は、通学途中の河原で体育座りをしていた。

「ぬらぬら言ってる変なおじいちゃんがいたんだけど、なんだったのだろう。あれ。怖いなぁ、なんか怖いなぁ。小梅ちゃんと銀子ちゃんが気付いていないフリした方が面白くなるってメッセージ送ってきていたから、いつも通りに振る舞ったけど、マジで誰?」

起き抜けに携帯を確認すると、小梅と銀子から侵入者がいるが気にするな、とメッセージが入っていた。

夏樹は異世界の経験から、敵意がある者が近づけば寝ていても起きるし、近づかれたら無意識に迎撃もできる。

なによりも、聖剣さんが夏樹以上に敵意に厳しいので、夏樹が何かする前に黒焦げになるだろう。

実際、異世界では夏樹と既成事実を作って良いように操ろうとした貴族の子女が何人も黒焦げになっている。

「あのおじいちゃん、普通にご飯作ってたし、美味しかったけどさぁ。マジで誰?」

最初こそ、神や魔族がまた遊びに来たのかと思ったのだが、なにやら雰囲気が違う。

人外のような気がするが、気配がのらりくらりとしていて掴めなかったのだ。

若干の不気味さがあったが、陽気にニコニコしている老人に問答無用で攻撃する趣味はなく、小梅と銀子がにまにましているので放っておくことにしたのだが、気になりすぎて学校に行けない。

なんだかまたファンタジーの予感がして、家に戻った方がいいような気がしていた。

「ていうか、お母さんが帰ってきたときにあのぬらぬらおじいちゃんがいたら面倒臭くなる予感がする! やっぱり帰ろ――げ」

腰を浮かせた夏樹が動きを止める。

視線の先には河川敷を爆走してくるぬらぬらおじいちゃがいたのだ。

「おい、こら! 坊主、今、げ、って言ったろ! 言ったな! やっぱり気づいてたのにスルーしやがったな! ぬらぬらすんぞ! めっちゃぬらぬらすんぞ! おい! ぬらぬらにしてやんかならな!」

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああ! ぬらぬらおじいちゃんが陸上部真っ青な速さで河川敷をダッシュしてくるぅううううううううううううう!」

「おい、こら、逃げんな! おい、ぬっらぬらにすんぞ! ぬらぬらってんだよ! こっちはずっとぬらぬらってんだからな! あんまりぬらぬらさせるんじゃねえぞ!」

「なんかきもいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

異世界帰りの勇者でも、ぬらぬらおじいちゃんが怖くなって逃げ出す。

すると、速度を増して追いかけてくる。

控えめに言って恐怖だった。

途中、クラスメイトとすれ違うが、そんなこと気にならないほど必死で逃げた。

――おかげで、学校に来ない由良がなんかぬらぬらしながら河川敷をダッシュしていた、という愉快な噂が学校に広がった。