作品タイトル不明
63「風間さん家の次女じゃね?」①
院に所属する風間家の一室にて、次女風間まつりが満面の笑みを浮かべて渾身のガッツポーズをしていた。
「だらっしゃぁああああああああああああああああああ!」
十六歳の少女が出す声ではなかったが、それだけ喜ばしいことが起きているのだと思われる。
新興一族の風間家ではあるが、元々、現当主の曽祖父が海外の呪具などのコレクターをしていたことをきっかけに、霊能関係に関わるようになり、祖父の代から正式に院に所属していた。
現在は、新興一族ではあるが、海外とのパイプや所属する霊能力者の数、また一般家系に生まれてしまった霊能力者を導くこともしている。
院の上層部からは評価が高い一族だ。
そんな風間家の次女まつりは、父から聞かされた長女朱美を絶縁する話に、これでもかというほど喜んでいた。
「……征四郎様を弄んだくせに我が物顔で神奈家で生活していた女が絶縁とか、ざまあみろなんですけど!」
まつりは、黒髪ロングの清楚な美少女なのだが、今だけは整った顔に深い笑みを浮かべている。
その理由は、長女の朱美にあった。
まつりと、三女の柚子は、風間家当主風間光太郎の実子であるのは間違いないのだが、朱美とは母が違う。
朱美は前妻の子で、母親は生きているようだが、離婚している。その後、縁あって再婚したのがまつりたちの母尚美だった。
これだけならよくある話なのだが、朱美は義母となった尚美をひどく毛嫌いした。
年頃の少女に義理の母ができるというのもおもしろくないだろうと、両親もあまり咎めずにいたのだが、その矛先はまつりと柚子にも向かい、顔を合わせる度に嫌味を言われていた。
暴力こそ振るわれていなかったが、母もまつりたちも決していい感情を朱美に抱くことがなかった。
そんな朱美の幼馴染みで婚約者であるなら、さぞ嫌な男なのだろうと思っていたが、神奈征四郎は真面目な性格をした優しい男性だった。
初めて挨拶をしたときに、優しい笑顔を浮かべる素敵な征四郎に当時八歳だったまつりは恋に落ちた。
だが、現実は残酷だ。
朱美と征四郎は家と家が決めた婚約者だ。
まつりは恋心を抱いた瞬間に、失恋したのだ。
だが、征四郎という婚約者がいながら、不誠実な姉にまつりは憤りを抱いた。
神奈礼央という、征四郎の弟とふたりで会っていることはもちろん、学生時代の友人という男性とも会っていた。
姉の男関係を征四郎に言うべきではないかと考えたが、決定的な証拠がないため、黙っていることしかできなかった。
父にそれとなく話をし、姉は注意されたが、態度が改まることはなかった。
そして、征四郎が決闘により神奈家に伝わる魔剣を奪われてしまったことをきっかけに、姉は一方的に征四郎と婚約破棄をした。
そのときにはすでに、征四郎の弟の礼央と関係があったというのだから驚きだ。
姉が婚約破棄をしたのなら、ぜひ私が――と父に征四郎への想いを訴えたのだが、その時には彼は次期当主の座を降ろされ、絶縁されていたのだ。
父はそれでも話を持っていってくれたのだが、神奈家に一蹴されてしまい、話は終わったはずだった。
そう、はずだったのだ。