軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62「河童さんと春キャベツじゃね?」②

「なんてことっすか……まさか、警察のほうで追っていた河童キングがこんなところで現れるとか」

「銀子さん!? この八頭身の可愛くない筋肉モリモリの河童を知ってるの!?」

「知ってるもなにも、向島市だけじゃなく、様々な土地で野菜や家畜を盗む河童界では最悪の個体っすよ」

「肉も食うのかぁ」

「ちょ、なんでテンション下がってるっすか! 河童が好きなら、河童中の河童が目の前にいるっすよ! もっと喜ぶとかしてもいいんじゃないっすかね!?」

銀子はそう言うが、夏樹には河童キングは――マッチョなおじさんが身体を緑色に塗りたくって、甲羅と皿を装備して海パンを履いただけにしか見えない。

霊力も強いには強いが、千手と同じくらいだ。

「ほう、青山銀子がいるとは……我が同胞の皿という皿を割りまくる大罪人が、よくも河童キングの前に顔を出せたものだ」

「いや、こっちが出したんじゃなくてそっちが勝手に現れただけなんっすけどね」

「……銀子さん、そんなに河童さんのお皿を割りまくってるの?」

「言っておきますけど、盗人ですから! 捕まえようとして抵抗されちゃ、誰だって皿を割りますからね! 河童の皿は後で治りますから、ぶっ殺さないだけ感謝してほしいっす!」

河童キングと睨み合っていると、三頭身の可愛いほうの河童さんが夏樹の背中に隠れて怯えている。

河童ハンターの銀子が怖いのかと思ったが、河童さんの視線は河童キングにある。

「……どったの? よかったら、力になるよ?」

「あいつは……河童キングなんて言っているけど、河童じゃないんです」

「――なんだと?」

想定外の答えが河童さんから返ってきたことに、夏樹は動揺した。

「あいつは……人間なんです」

「――は?」

「なんでも河童研究会とかいう人間の組織にいたそうなんですが、自ら河童になるためあんな姿を……私たちも隠れていたのですが、見つかってしまい無理やり仲間に加わったんです」

「……つまり、ただの河童の真似した泥棒でオーケー?」

「はい。お、おそらく、霊能力者です!」

「はぁ……殺そう」

夏樹は異世界の戦場で拾った無駄にトゲトゲのついた棍棒をアイテムボックスから引き抜く。

よく見ると、河童キングの肌の色がところどころ剥げている。おそらくペンキかなんかで塗っただけなのだろう。

「……甲羅も背負ってる紐が見えてるし! 警察も銀子さんも今までなんで気づかなかったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

地面を蹴って宙を舞うと、くるり、と一回転して棍棒で河童キングの頭頂部の皿を叩き割った。

ぐしゃり、と皿以外が割れる感触と音が響き、河童キングは河原に倒れた。

「ちょ、夏樹くん!? 河童さんが好きなわりには容赦がないというか、なんといいますか」

「皿を割るにしても、ちょっと小突く程度でよかったじゃろうて! なんじゃ、そのエグい棍棒は!?」

夏樹の凶行に絶句する銀子と小梅。

千手だけが冷静に、しぶとく生きている河童キングに近づいていく。

「……あ、おいおい、お嬢さん方、こいつ……連続殺人犯の山本田中花尾じゃないか?」

「山本田中花尾!? どこまでが苗字なの!?」

「山本田までが苗字で、中花尾が名前だよ。そうじゃなくて、こいつは院がずっと探している凶悪犯だぞ。まさか河童のふりをしていやがったとは……どうりで院が見つけられねえわけだ」

「――院、無能!」

「警察もめちゃくちゃ探していたっすよ!」

「――警察も、無能!」

いそいそと捕縛をする銀子と千手。

なんでも、霊能力を使った犯罪者なので懸賞金もかかっているらしい。

懸賞金と聞いて捕縛に小梅も加わった。

「……よくわからないけど、河童キングが河童さんじゃなくてよかった」

河川敷に転がるキャベツを回収し風呂敷に包んだ夏樹は、河童さんに渡した。

「どっから盗んだのかわからないから、とりあえず逃げちゃえ。でも、銀子さんみたいな河童ハンターがいるから、盗みはもうしちゃだめだよ」

「……ありがとうございます。一族と相談して畑でも始めてみようと思います」

河童さんはぺこりとお辞儀をする。

「とても強い人間さん。あなたのことは忘れません。いつか恩返しに参ります」

「河童の恩返しか……あはははは、楽しみにしてるよ」

手を振りながら河童を見送る夏樹は、

「あ、ツチノコが存在するのかどうか訊いてみればよかった」

ちょっと失敗したと思うが、気持ちを切り替える。

河童に会えたのなら、いつかツチノコにも会えるだろう。

「懸賞金とったどぉおおおおおおおおおおおおおお!」

「五百万っ! 五百万っ!」

「今夜は焼肉じゃぁあああああああああああああああああああ!」

懸賞金はどうやら高額らしい。

楽しそうな三人を眺めていた夏樹だが、ふ、と空を見る。

雲ひとつない青空が広がっていた。

「……明日は学校行こうかな」

――とある遠野。

武家屋敷の一室で煙管を咥えていた老人が、震えるスマホを取り出し電話に出た。

「おう、ぬらぬら? ほうほう、そうか。今、話題の由良夏樹と会ったか。ははははは、河童を見て喜ぶとは、純粋じゃねえか。心配しなさんな、敵対するつもりはねえ。だが、妖怪側としても一度挨拶しておかないとな」