作品タイトル不明
57「終わりの時間じゃね?」②
「……この期に及んで黙りとは……愛想が尽きました」
「こひゅー」
「我が子と思い、愛情を持って接していた私が愚かでした。あなたもこの家から出て行きなさい! 最後の情で、あなたの性根を鍛え直してくださる場所へ送ることにします。誰か! この子を連れて行きなさい!」
妙子の命によって、礼央が使用人によって引きずられていく。
(あれぇー? これももしかして俺のせいじゃね? 罪悪感が……わかなーい! 全然、わかなーい!)
基本的に、夏樹は礼央のような男が嫌いだ。
なので、自分の蹴りによってまともに受け答えできない状況であるが、母親に察してもらえず終了した礼央に微塵も同情しなかった。
そして、それは小梅や銀子たちも同様のようだ。
「……お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございませんでした。あのふたりのことはこちらに任せてください。放り出して終わり、ということはしませんので、ご心配なくいただけば」
「あの、母上。礼央には息子がいるようですが」
「ええ。子供に何かするつもりはありません。礼央の実母も、神奈家の者ではありませんが、遠縁のようですので、なんとかしましょう。ただ、その子に神奈家を継がせることはできません」
夏樹たちは妙子の言葉を信じようと思った。
「後継に関しても、分家に妹が嫁いでいるので、血の濃さで言えば本家と変わりませんので、向こうに神奈家を継がせても問題ありません」
「はい」
「本来ならば、征四郎に家に戻ってきてほしいのですが、神剣を二本も持つあなたを魔剣の一族に置いておくのは問題ですし、院からは、あなたには新たに一族を興してほしいと言われていますので」
「わ、私がですか!?」
素盞嗚尊と月読命と接触し、神剣まで授けられた征四郎をこのまま放置するのは院としては難しいのだろう。
特に、知る者は限られているが、院のトップは素盞嗚尊だ。
そんな素盞嗚尊から十束剣を受け取ったのだ、院以外の霊能組織に引き込まれたら大事件だ。
もっとも、素盞嗚尊はそんなことまるで気にしないだろうが。
「ええ、強制はしないようですが、考えておいてほしいそうです」
「…………」
征四郎は言葉もない。
神奈家の次期当主を降ろされ、絶縁され、出奔した。
十束剣を盗み、すべての始まりである魔剣を奪った青山銀子に復讐を企んだ。
だが、蓋を開けてみると、征四郎が想像もしていなかった展開ばかりだ。
素盞嗚尊に命を狙われ、少年に庇われた。
神と対等に戦える人間の強さを目にし、強い衝撃を受けたのは言うまでもない。
そして、神剣を二本も譲り受けたのだ。
素盞嗚尊にも、月読命にも恥じない強さを得たいと強く思う。
「……つまり。征四郎が浮気女と結婚しなくて済んだのも、神剣をもらえたのも、新たな一族を興せることも、すべては私のおかげってことっすね!」
征四郎が感慨深くしていると、銀子の声が響いた。
この場にいる全員が信じられないものでも見るような目で銀子を見た。
「いやぁ、無意識にみんなをいい方向に導けるって言うのは、こうなんといいますか、天性ものがあるっすねぇ。さすが銀子ちゃん!」
「んなわけねーだろっ!」
征四郎と、妙子を含めて、この場にいる全員が、心をひとつにして怒鳴った。