作品タイトル不明
間話「パピーじゃね?」
ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻は、由良家の間借りしている部屋の一室にて、宙に浮いた映像に映る父ジョニー・ドランナック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻と会話をしていた。
「……ジャック。地球に婚前旅行は許したが、地球人を宇宙に連れ出すことは許した覚えはないぞ」
「すみません、ダディ」
「私のことはパピーと呼べといつも言っているだろう!」
「はい、パピー」
本来のグレイの姿に戻っているジャックは、父ジョニーと瓜二つにしか見えなかった。先ほど、挨拶をした夏樹にも見分け方がわからない。
ジャックとナンシーの場合は、ナンシーの身体が曲線を描いているので、わかりやすいのだが、おそらくグレイの女性と並べばわからなくなるだろう。
「先ほど挨拶をさせてもらったが、由良夏樹君といったね。いい子だと一目見ればわかる。幼いようだが、瞳からたくさんの辛い経験をしたように感じ取れた。ジャックとナンシーが友と認め、交友を深めるのはいい。だが、やはりやりすぎだ」
「私もまさか二度も海賊を叩く羽目になるとは思いませんでした」
「一度目はわかる。ジェシーの危機だった。由良夏樹君の活躍にも感謝しているが……宇宙船両断はどうなのだろうか? 本当に人類?」
「……彼は強いので」
「強いで済ませていい強さではないと思うのだが……ドップニャーニャー海賊団の幹部たちが、そろって地球怖い、地球人怖いと未だに震えているそうだ」
ジャックとしても笑う他ない。
夏樹の強さを知っていたつもりだが、宇宙という障害がない場所だからと遠慮なく力を解放した彼があんなにも強いとは思っていなかった。
「三原一登君、七森千手君もかなり活躍をしてくれたようで……宇宙警察は感謝状を出したいと考えているようなのだが、地球人を連れ出していたとなると、いろいろ問題だ。すでに、なんとかして三人とコンタクトを取ろうと動き出している者たちもいる」
「……取り込みですか?」
「取り込みというか、婿取りをしたいそうだ」
「……なぜでしょうか?」
「ジャックもドップニャーニャー海賊団の被害は知っているだろう。奴らを壊滅させた由良夏樹君たちは英雄だ。地球人だから報道は最低限だが、いずれ目敏い奴らは気づくだろう」
「確かに、ありえますね」
すでに『宇宙的動画配信サービス』では、一部の動画配信者がドップニャーニャー海賊団の壊滅に地球人が関わっているのではないか、というネタで動画を発信していることをジャックも知っている。
海賊団の被害者は多く、夏樹たちに助けられた者たちもたくさんいる。
全員が口を噤むのは難しいだろう。
中には、命の恩人が報道もなにもされていないことに不満を持って動画配信者に情報提供しているという話もある。
「商人や、有力者たちは、取り込みたい気持ちもあるだろうが、感謝を示したいのだろう。まあ、それでわかりやすく自慢の娘の婿に、となるのだろう。聞けば、名家ばかりだ」
「……しかし、その、夏樹たちは地球人です。人型でなければ難しいと思います」
「そうだったな。まあ、その辺りはうまくやろう。そうそう、ジャックたちと共に戦った警察官だが」
「ボブ・モラレス・ウィン・ダーナー・スイトミー・牧原ですね」
「彼は、正義感が強いゆえに上司から左遷されていたようだが、この度、出世が決まった」
「それは素晴らしい」
「ついでにその上司たちの悪事も明るみになってね。ドップニャーニャー海賊団と繋がっていたようだ。聞けば、ご家族とも離れていたせいで関係が悪いようでね。彼も今や英雄だ。数年休みを取ることになったそうだ」
「……その話をするということは、まさか」
「ぜひ休暇を地球で過ごしたいようだ。彼も由良夏樹君たちと友情を築いたそうじゃないか。地球へ観光する約束をしていたようなので、許可が出たのだよ。いずれそちらに行くだろうから、力になってあげてほしい」
「わかりました」
ボブが地球に来ると知ったら夏樹もさぞ喜ぶだろうと、ジャックは微笑んだ。
「……ジャックよ、変わったな。前は、気を張り詰めていたようだが、今はいい具合に肩の力が抜けている。それに、よく笑うようになったな」
「きっと地球で多くの経験をしたおかげでしょう」
「うむ。ナンシーが危険な目に遭ったと知った時は、艦隊を率いろうかと思ったが、無事でなによりだ。まだしばらく地球にいると思うが、たくさんのことを経験し、学びなさい」
「はい、パピー」
「今度、時間があればマミーにも連絡しなさい。ナンシーは連絡をくれているが、通信越しでも顔を見て話をしたいだろうからね」
「わかりました」
「よろしい。では、また」
通信を切り、ジャックは人化する。
最初こそ、慣れなかったが、しばらくこの姿で過ごしていると悪くない。
「夏樹と出会いまだ数日だが、毎日が新鮮で美しい。彼と、彼の家族友人と出会えたことに感謝します。――創世の神々よ」