軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54「ざまぁじゃね?」①

「待って、征四郎さん! わたくし、騙されていたの! まさか、こいつがお母様の血を引いていないなんて知らなかったのよ!」

「……なんだと?」

「征四郎様だって驚くわよね!? なにが次期当主! お父様が外でつくった女との間にできた子よ!」

「朱美……お前は知らなかったのか?」

「――え?」

まるで脈のない征四郎に、なんとか擦り寄ろうと朱美は礼央の出自を暴露したのだが、征四郎は逆に驚いた顔をした。

「礼央は父が連れてきた子なので、俺は幼い頃から母が違うとわかっていた。お前は幼馴染みなのに、知らなかったのか? いや、気づきもしなかったのか?」

「気づくわけ、ないじゃない! あなたもお母様も、そんな素振りを見せなかったじゃない!」

「そんなこと当たり前だ。礼央は礼央だ。出自など関係なく、俺の弟だ。母だって、同じ気持ちで育ててくださったはずだ」

「な、ななな」

「そもそも、家で働いてくれている人たちも知っていることだぞ。礼央の耳に入らないよう気を使っていたのだが、むしろ、なぜお前がなにも知らないのか不思議でならない」

征四郎の告白に、朱美はぱくぱくと口を動かしている。

なにか言おうとしているようだが、なにを言うべきか言葉が出てこないらしい。

夏樹は「ざまぁ」と書かれたうちわを振るい出した。

「だが、お前にとってそんなことは関係あるまい」

「なんでそんなことを言うの!?」

「それはこちらの台詞だ。俺が魔剣を奪われ、次期当主でなくなった時、お前は俺に立場など関係なく礼央を愛しているから結ばれたい、と言ったではないか。幸せになる邪魔をするな、と言ったのではないか」

「そ、それは」

夏樹に続き、千手と祐介もうちわを振るい始めた。

「ていうか、さっきからなんなのよ! そのうちわは! こっちは真面目にやってるの! ふざけないで!」

「お前がふざけんな! 人様のお家事情だから黙っていたけど、征四郎さんを捨ててそこのプリンみたいな頭をした弟に乗り換えて、子供までいるのに、今さら征四郎さんに戻ろうなんて意味わからなすぎるぞ!」

「子供は黙ってなさい!」

「黙んねーよ、このブス!」

「――な、なんですって」

「いや、そんな驚かれてもこっちが困るんだけど。あんためちゃくちゃブスじゃねえか。性格もだけど、今の顔を見てみろよ、すごい顔してるぞ」

夏樹の言葉通り、朱美はとても醜悪な顔をしていた。

容姿がどうこうではなく、自分のことしか考えず、征四郎のことを、礼央のことを、妙子のことを、そして子供のことさえ考えていないのがはっきりわかる。

彼女のそんな顔を『ブス』以外に表現する方法を、夏樹は知らなかった。

「こっちに帰ってきて色んな奴に会ったけど、あんたが一番ブスだわ。異世界人並み! 誇っていいよ!」

「いつまでも馬鹿にして! さっきは青山銀子に馬鹿にされたけど、風間家は新興とはいえ、それでも家の力があるのよ! あんたがどこの誰だか知らないけど、中学生くらいなんとでも」

「家ごと潰したらぁ! かかってこいやぁあああああああああああ!」

バチバチと放電を始め、やる気満々になってしまった夏樹を銀子と小梅が羽交い締めにして、引きずっていく。

「ちょ、待って、あのブス殴れない!」

「なーんで、夏樹くんがブチ切れてるっすか!」

「よく見てみぃ、なんかいろいろ言おうとしていた征四郎がタイミング失ってしょんぼりしておるでないか!」

「やー! あのブス殴る!」

「なんすか、急に!? 子供みたいにならないでくださいっす!」

「おまっ、義理の妹とか、自称幼馴染みにはあんなにドライじゃったのに、なんでこんな醜女にガチギレしとるんじゃ!?」

「――わ、わたくしが醜女ですって!?」

「俺様の足元にも及ばんじゃろうが!」

醜女と言われ朱美が過剰に反応するが、小梅に睨まれて黙り込んでしまう。

朱美も容姿は整っている方だが、どこか神秘的な美女であり、モデル顔負けのスタイルの小梅と比べられるのは嫌なようだ。

「――奥様! 征四郎様! お客様が来ている中、申し訳ございません。風間家から式による急ぎの手紙が届きました!」

夏樹以外にも、そろそろ千手や祐介も限界だったところに、神奈家の使用人が慌てふためいた様子で現れた。

使用人は夏樹たちに深々と礼をすると、妙子に手紙を渡す。

急ぎということもあり、妙子は「失礼します」と断りを入れてから、手紙を読んだ。

そして、しばらくして、朱美に視線を向けた。

「朱美さん。風間家のご当主である、あなたのお父上から手紙が届きました」

「ち、父はなんと!?」

「あなたを絶縁するそうです」

「――は?」

朱美だけではなく、この場にいた全員が目を見開いた。

「ざまぁ来たぁあああああああああああああああああ!」

理由はよくわからないけど、夏樹はとりあえず叫んだ。