作品タイトル不明
51「ざまぁが始まるんじゃね?」①
「ま、待て、なんなんだ! なんのつもりだ一体!」
征四郎は、突如抱きついてきた女性を無理やり引き剥がした。
夏樹たちも何事かと目を丸くする。
「先ほど、院の上層部から連絡があり、征四郎様が素盞嗚尊様と月読命様にお認めいただいたこと、神剣を預けられたことをお聞きしました!」
「……それと、俺に抱きつくことと何の関係があるんだ」
「つれないことを言わないでください。わたくしたち……婚約していたではありませんか」
女性の言葉で、夏樹たちはすべてを察した。
彼女こそ、征四郎を捨てて、彼の弟と結婚した元婚約者だ。
夏樹は、ざまぁ、の準備をするために、アイテムボックスから「ざまぁ」と書かれたうちわを取り出し、みんなに配った。
「ふざけるな! お前は、私を捨てて弟と結婚し、子供もできたと聞いている!」
「ふざけてなどいませんわ! 息子も、征四郎様を父と呼ぶことができて嬉しいそうです!」
「……お前、正気か?」
夏樹は、みんなから「ざまぁ」と書かれたうちわを回収し、アイテムボックスにしまった。
思いっきり笑ってやるつもりだったが、笑えない状況だったので空気を読んだのだ。
誰か止めてあげろよ、と視線を向けるも、誰もがお前が行けよ、と譲り合っている。
絶対に関われば嫌な思いをしそうな雰囲気の中、押し付けあっていると、征四郎と元婚約者の話が進んでいく。
「正気ですとも! わたくしはもともと征四郎様の妻になるはずだったのですから、元に戻るだけです!」
「ふざけるな! ――朱美! お前が、俺を捨てておきながら、今度は弟のことを捨てるというのか!」
「あんな男、どうだっていいのです」
「――な」
女性――朱美は、征四郎の弟と浮気して結婚したというのに、ひどい言い草だった。
これにはまともに恋愛経験どころか、結婚という将来を予想したこともない夏樹もドン引きだった。
(このおばさん、こわー。超こわー。顔は笑ってるのに、目が必死で超こわー)
「良い加減にしろ! お前、仮にも神奈家次期当主の妻であり、いや、子供の親でありながら、その言動……恥はないのか!」
「ええ、そうです。わたくしは神奈家の次期当主に嫁いだのです! あのような、次期当主の座を降ろされた男などわたくしの夫ではありません!」
「なんだと? なにが起きている?」
征四郎の弟が次期当主を降ろされたことを初耳な征四郎たちはぎょっとする。
このままではさすがにまずいと考えた千手が、征四郎と朱美の間に割って入った。
「落ち着けよ。とりあえず、俺たちは客だ。茶を出せとは言わないが、家の中にくらいあげてくれよ」
「……あなた方はどなたですか?」
「今更かよ」
不審者でも見るような目で見た朱美に、千手と夏樹たちは頷き合い、名乗ることにした。
「俺の名は由良夏樹。嫁レッド!」
「俺は七森千手。側室ブラック!」
「僕は佐渡祐介。奴隷グリーン!」
「俺様は、ルシファー・小梅! 愛人ブルー!」
「私は青山銀子! 愛人シルバー!」
「――は?」
「五人揃って、征四郎さんハーレム戦隊ざまぁレンジャー! ばーん!」