作品タイトル不明
間話「魔界で会議じゃね?」②
「……聞かなかったことにしろ。由良夏樹は一般人だ。関わるな。いいな?」
「いや、無理だろ」
無茶振りをするルシフェルに突っ込んだのはサタンだった。
「申し訳ございません。つい、未来の義弟自慢をしてしまいました」
「あ、うん。それは、いいんだけど」
サタンはルシフェルがこんなにも夏樹のことを気に入っていることに少々驚いていた。
ルシフェルは、かなり好き嫌いが激しい。
堕天したのも、父であるサタンについてきたというよりも、天使が嫌いだったからである。
若気の至りで大暴れしていたこともあるが、今は真面目な魔族――と思われているが、基本的に、他の魔族に対して興味がないのだ。
唯一、同じ魔族として認識しているのが数人くらい。そんなルシフェルが、夏樹をいたく気に入っていることはいいことだ。
サタンとしても、将来の兄と弟が仲がいいことは望ましい。
だが、それを口にするのは無粋だと思って、やめておいた。
「さて、久しぶりの会議だから黙っていたが、俺が話をしよう」
サタンが仕切り直すと、魔族たちが背筋を伸ばし、呼吸さえ整えた。
「由良夏樹は、強い。それは間違いない。俺としては、未来の息子になるのだから大事にしたい。ああ、勘違いするなよ。魔族に引き込もうってわけじゃない。由良夏樹は人間だ。人間だから、俺たちにはない強さがある。だから、こちら側にスカウトはしない」
サタンの声は、大きくはないが、この場によく響いた。
反論の声はない。
「まあ、魔族らしくいこうぜ。一番強い俺が命ずる。由良夏樹に手を出すな」
威圧を込めた声を出したサタンだったが、にやり、と笑う。
「だが、お前らが俺の命令を押し切って由良夏樹にちょっかいをかけるというのなら、勝手にしろ。ただし、責任はてめぇで取れ。死んだらそれまでだ」
「はーい、サタン先生」
「なんですか、リヴァイアサンくん」
「……そこはリヴァイアサンちゃんって言えよ」
「……あらやだ、すごくドスの効いたお声」
「あー、ごほんごほん。手を出すなっていうけど、それは敵意的な意味で? それとも性的な意味で?」
「どっちもだよ!? というか、手を出す気なの? 多様性の時代なのかもしれないけど、中学生の男の子に男の娘でしかもロリバ……じゃなくてショタジジィはきついんじゃない?」
「いけるいける!」
「いけねえよ! 童貞ボーイにあまり過激なことしちゃだめぇ!」
引き締まっていた空気が弛緩していくのがわかった。
中には、リヴァイアサンの言動に感謝する魔族さえいた。
「手を出してもいいけど、それこそ自己責任だからな」
「大丈夫! ちゃんと日本で戸籍ゲットして結婚するから!」
「そういう責任じゃねえよ!」
「もうサタンは心配性だなぁ。僕も処女だから相性いいって。強いとか弱いとか、僕は気にしないんだよねぇ。好みか好みじゃないかだから、ね」
「ね、じゃなくて! 俺の話聞いてた!?」
サタンの警告は、大半の魔族に通用した。
だが、リヴァイアサンをはじめ一部の魔族には逆に興味を持たせる形になってしまった。
(――春子さん、僕、頑張りました。やっぱり魔王業やだなぁ、来週のダンス教室が僕の生きがいです)
しかし、サタンが釘を刺したことで、多くの魔族が夏樹への干渉を止めようとしたのは事実だ。
中には、マモンを倒した夏樹を倒し、一旗あげようとする魔族もいた。
さらに言えば、襲撃はもちろん、人質を取ることを考える魔族もいる。
この場にいない、弱い魔族ほど汚い手を使おうとする。そんな魔族も、爵位を持つ魔族に睨まれれば、終わる。
貴族の中にも、さほど力がない魔族もいる。
貴族たちは、領民である魔族が馬鹿なことをしないように見張るだろう。
(とりあえず、癖のある奴ら以外はビビったな。ったく、北欧のほうで興味持たれたようだし、魔族くらいは抑えておかないとな。――未来の息子のために! きっとこれで夏樹の中で俺の株があがり、慕うだろうな。そうすると、春子さんも俺をパパにと思うかもしれない! やだー、僕って天才ー!)
結局、サタンはサタンだ。
夏樹のためもあるが、大部分は私利私欲だった。