作品タイトル不明
49「ざまぁ日和じゃね?」①
「いい天気だ。絶好のざまぁ、日和だなぁ」
制服姿の夏樹は太陽の光を浴びて、とても「イイ」笑顔を浮かべていた。
「どんな日和じゃ」
「絶好調っすね、夏樹くん」
夏樹の雰囲気に、小梅と銀子が呆れた仕草をするが、彼女たちも内心楽しみであることが隠せていない。
異世界から帰還して十日目。
神と戦ったり、魔族と戦ったり、ファンタジーな日々だったが、今日は少し違う。
「異世界から帰還したら地球もかなりファンタジーでした。今日は戦った相手の浮気者婚約者と寝取り弟にざまぁしに行きます」
「なんでラノベ風に言ってるんじゃ?」
「太陽に語りかけても、きっと太陽神さんはまだ寝ていると思うっすけど」
普段の夏樹ならば、こうも他人の不幸でテンションを高くしたりはしない。
今朝、母に昨晩の遅い帰宅をしこたま怒られていると、三原家から三原優斗が亡くなったと警察から連絡があった旨の電話がかかってきた。
すでに知っていた夏樹は、驚くふりをしたが、本当に驚いた母は夏樹への説教をやめて三原家に向かった。
母に隠し事をしているようで気分が悪いが、巻き込みたくないという感情が強い。
しかも、優斗は自分や弟の一登を殺そうとして、愛の女神の力を過剰にもらい――内側から破裂するというなんとも言えない死に方をしている。
サマエルのおかげで肉体のガワだけ修復してもらったので、両親にちゃんと亡骸を届けることができた。
それでも、心にもやもやしたものが残るのも事実だ。
優斗に対しては、死んでくれてせいせいしたくらいにしか思わないが、ご両親のことを考えると胸が痛む。
「……それはそれとして、ジャックとナンシーが来られないのは残念だよなぁ」
本来なら、観光を兼ねて神奈家にお邪魔する予定だったジャックたちだが、現在母星のジャックパパと通信中だ。
なんでも、昨日、夏樹、ジャック、千手、そしてボブを巻き込んで宇宙海賊相手に大立ち回りをしたことがジャックパパの耳に入り、怒っているようだった。
感謝状が出るという話もあるそうだが、そもそも無断で地球人を宇宙に連れて行った挙句、宇宙海賊の戦艦をはじめいくつもの船を宇宙の塵にしてしまったことも問題らしい。
夏樹にはよくわからなかったが、ジャックパパがいろいろ手を回してくれたそうだ。
夏樹もジャックパパにはご挨拶をしたが、普通にグレイだった。
「私、ちょっと神奈家について調べたんすよ」
「ほうほう。銀子にしては良い心掛けじゃな。観光地のことを事前に調べるのは、旅行の基本じゃ」
「さすがにガイドブックではないっすけど、知り合いにいくつか聞いてみたところ、神奈家ってかなり落ち目らしいっすね」
「……おどれが魔剣を奪ったからじゃろうて」
「違いますって! 今の当主さんは前から話にならなかったっすけど、次の当主……えっと、征四郎の弟っすね。が、かなり使えねえらしくて有名みたいっすよ」
はて、と夏樹と小梅が首を傾げた。
「業界の噂って、割と裏で聞けるらしいんすけど、ほら私って光で生きているじゃないっすか、だから今まであまり耳に入ってこなかったんすよねぇ」
「嘘言え、深淵の中で生きとるじゃろうて」
「そこまで深い闇で生きてねぇっすよ!」
「それは別にいいんだけど、征四郎さんの弟さんがなんだっていうの?」
「クソ弱いらしいっす」
「――え?」
「――は?」
夏樹と小梅は耳を疑った。
仮にも、霊能関係の一族で次期当主を務める人間が、「クソ弱い」はありえないだろう、と。
「待って待って、征四郎さんってかなり正統派の剣士でかなりの使い手だったんだけど!? その弟が、クソ弱いの?」
「らしいっすね。なんでも、格下の相手を痛めつけることは得意らしいんすけど、基本的に声がでかいだけの小心者らしくて、征四郎に模擬戦で勝てないどころか一撃も入れたことがないみたいっすよ」
「俺様知っとる! 実戦なら勝ってたとか、根拠なく言う奴じゃろ!」
「小梅さんって変な知識ありますよね。まあ、そうなんすけど。それで、一応霊剣を持っているらしいんすけど、現場に行くとビビって使い物にならないみたいっすね」
「あのさ。そんな男のなにがよくて征四郎さんの元婚約者も浮気っつーか、乗り換えたの?」
「さあ?」
「なんでじゃろうなぁ?」
話を聞く限り、征四郎の弟に魅力は皆無だった。
「だけどさ、そんな口だけの虚勢張ってる雑魚にこれからざまぁしにいくとなると、こう面白くて今から笑いが止まらないっすねぇ」
「そうじゃなぁ、スマホの充電は完璧じゃろうな?」
「もちろんっす! 今日のために、容量を空けときましたんで!」
にちゃぁ、と夏樹、小梅、銀子は、これからのイベントに心を馳せて微笑むのだった。