作品タイトル不明
46「聖剣さんいらっしゃいじゃね?」③
決して愛想の良い態度ではない聖剣さんではあったが、小梅と銀子がナンシーとジャックと一緒に晩酌を本格的に始めると、差し出されたビールを受け取った。
だが、そこで待ったをかけたのが夏樹だ。
「待って待って、聖剣さんは幼女なんだからお酒を飲んだらまずいんじゃないかな!」
「誰が幼女よ!」
文句を言う聖剣さんだが、誰がどう見ても幼女だ。
「そうじゃったな。すまんすまん。俺様としたことが酔いが回っておったようじゃ。そろそろ、酒ではなくお茶に切り替えるとするかのう」
「私も反省っす。懲戒免職ものっすね。人外さんと関わってばかりだったので、つい、薦めてしまったっす」
小梅と銀子は幼女に酒を薦めてしまったことを深く反省し、お茶をぐびぐび飲み始めた。
「あたし、これでも千年以上前から存在しているんですけど!」
「ロリババぁっすか?」
「誰がババァよ!」
「古き良き時代のツンデレで、ロリババァ、桃色ツインテールとか、属性盛りすぎじゃろ。ちょっと自重せんかい」
「あんたも何言ってんのよ! というか、属性ってなんのことよ!? 雷属性のこと!?」
お酒からお茶に切り替えたとはいえ、良い感じに酔いが回っている銀子と小梅に、聖剣さんは振り回され気味だ。
さすがの聖剣さんも、ロリババァや、ツンデレという概念を知らないようで、首を傾げていたが、馬鹿にされているとわかったらしくツインテールを振り乱してぷりぷりしている。
(……聖剣さんの属性マシマシは否定できないんだけど、小梅ちゃんもサタンとリリスの娘で天使で、俺様口調とか属性モリモリなんだよねぇ。銀子さんも、口調もそうだけど、警察官だけど霊能力者で魔剣好きで同人誌描いてるし、天照大神さまと親友だし……ふたりとも負けてねーよ)
口にすれば、酔っ払い女子にどんな目に遭わせられるのかわかったものではないので、我慢したが、できれば思い切り言いたかった。
ジャックとナンシーなんて、宇宙から婚前旅行にやってきたグレイだし、名前がめちゃくちゃ長いし、とやはり属性が多い。
(……まったく、この中で普通なのって俺だけじゃん!)
やれやれ、と肩を竦める夏樹が晩御飯を綺麗に食べ終え、烏龍茶を喉を鳴らして飲み終えると、手を合わせて「ご馳走様でした!」と言って、シンクに食器を置く。
洗い物は明日にするとして、今日はいろいろあったので、正直、もう眠い。
気を抜けば、瞼が落ちてきそうだ。
「……ふぁ。ごめん、もう寝るよ。なんか、めちゃくちゃ眠い」
「そりゃそうよ。本来なら使えないあたしの力を使いまくったんだから。ふんっ、別に心配してないけど、ちゃんと布団をかけてお腹冷やさないように寝なさいよね!」
「……あ、ありがとうございます」
(めっちゃ心配してくれてるー)
顔を赤くして、ふん、とそっぽを向いている聖剣さんに、夏樹は笑みが漏れてしまう。
聖剣さんに向かって手を合わせて「ツンデレありがとうございまっす」と拝んでいる酔っぱらいは見ないことにした。
「というか、あんたが寝るならあたしも寝るわ。じゃあね、宇宙人と、天使と腐った女」
「名前で呼ばんかい!」
「その腐ったっていうのやめてほしいっす!」
「よい夜を、聖剣殿」
「おやすみなさい」
それぞれが挨拶をすると、「お、おやすみ」と言い残し、聖剣さんは一瞬放電すると、夏樹の中に戻った。
「……あ、戻るんだ。んじゃおやすみー」
階段を上がっていく夏樹を手を振り見送る小梅たち。
しばらくして、小梅と銀子は手を止めて顔を見合わせた。
「……あの小娘、夏樹の中にいるんじゃが、一緒に寝ていることにならんか?」
「奇遇っすね。私も同じこと思ってたっす。なんなら、夏樹くんが寝た瞬間に、実体化してあんなことやこんなことをする可能性も」
「待ちたまえ、いくらなんでもそれはないだろう」
まともなジャックがふたりを止めようとするも、声は届いていないようで、妄想が翼を広げて羽ばたいていく。
ナンシーはジャックに向かい、首を横に振った。
「行くか!」
「行くっすね!」
なにやら結論に至ったふたりが、「ご馳走様でした!」と声を揃えると、そのまま夏樹の部屋へ向かってしまう。
「ふっ、夏樹も大変だな」
「うふふ、本当ね」
ジャックとナンシーは、きっと戸惑う夏樹を思い浮かべ苦笑した。
■
「なーんで、小梅ちゃんと銀子さんが一緒のベッドに寝るかなぁ。俺、眠いんだけど、ふたりに挟まれてどうすりゃいいの? しかも、寝入っちゃってるし。ああ、もう、ふたりの吐息にドキドキ……しねーよ! 酒くせーよ!」