軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45「聖剣さんいらっしゃいじゃね?」②

「……うるさい天使と腐り女ね」

叫んだ小梅と銀子に、聖剣さんは耳を塞いで不快そうな顔をした。

「って、待つんじゃ! この小娘が夏樹の聖剣だと言うんなら、俺様の翼をこんがり美味しそうに焼いたのはおどれかぁ!」

「いやいや、小梅ちゃん! 美味しそうって言っちゃ駄目ぇ!」

「知らないわよ。ていうか、夏樹の聖剣じゃないわ。あたしの夏樹なんだから、そこら辺勘違いしないでよね」

数日前に、翼を雷で焼かれた小梅が恨みを晴らさんと唸るが、夏樹がまあまあ、と宥める。

神鳴りの剣の言葉通り、彼女には小梅にどうこうした記憶はない。あくまでも戦っていた夏樹が、敵対していた小梅への攻撃として聖剣の一部である雷を放ったのだ。

「そんなことよりも! さっきから、私のこと腐ってるとか言ってるっすけど、どういうことっすか!? こーんなピッチピッチな女の子捕まえて、なーにが腐ってるっすか!」

「おま……自分で女の子とか言ってて悲しくないんか? もうええ歳じゃろう」

「紀元前から生きている小梅さんにだけは言われたくねーっす! 私はまだまだっすよ、制服きたらJKに間違えられちゃいますからね!」

「ないわー、それはないわー」

自称女の子の銀子であるが、小梅から見ても女子高生には流石に見えないようだ。

「聖剣さん、銀子さんが腐ってるってどういうこと?」

夏樹も理由を知りたかったのか、尋ねるも、ツンケンしているはずの聖剣さんは夏樹に珍しく優しい目を向ける。

「お子様なあんたはまだ知らなくて良いのよ。それに、知ったって、人生になにも影響しないから。まるでプラスにならないから」

「うん?」

「ちょっと待ってほしいっす! 散々の言われようすぎて、泣くっすよ!」

「……あたしね、あんたらが婚約者に弟を寝取られて自棄になっている男と相対している男が持っていた薄い本をこっそり見てみたのよ」

「そこまで詳細を覚えているのなら、名前を呼んであげましょうよ。――って、まさか、あれを見たんすか?」

「見たわよ。あんなエグい内容、異世界の腐った貴族だってやってなかったわよ」

「……ま、まってください。言い訳を、言い訳を聞いてほしいっす。若気の至りと言いますか、十代の妄想力というのはどこまでも羽ばたいていく渡り鳥のごとく」

「意味わかんないから。とにかく、あたしの夏樹に変な影響を与えないようにしなさいよ」

「申し訳ないっす。自重するっす」

「わかればいいのよ!」

満足そうに頷く聖剣さん。

小梅が銀子を引っ叩いた。

「なんで負けとるんじゃ。いつものペースで言い返さんかい!」

「申し訳ねぇっす。あの同人誌に触れられると、私は、私はぁ」

「……どんなエグい内容なんじゃ。逆に興味が湧いてきたんじゃが」

「そんな腐った女の創作物はいいのよ。それよりも、夏樹!」

「へい!」

「あんた、なんでそんなに弱っちくなってるの? 今、気づいたけど、出会ったときの姿になってるし、どういうこと? 過去にでも戻ったの? 向こうで神殺ししてから、ずっと眠っていたからよくわかんないのよね。説明して」

「あー、それはですね」

夏樹は、聖剣さんに説明をした。

異世界から地球に帰還したら、なぜか時間が巻き戻っていたこと。

それにより肉体も過去のままで、力も弱体化してしまったこと。

「ふぅん。あんたも弱くなったなら弱くなったで、こっそりしてなさいよ。なんで、この世界の神と喧嘩してるの? 馬鹿なの?」

「ごめんなさい」

「ふんっ。あんたは弱っちいんだから、戦うとかしないで、普通の生活を送っていれば良いのよ」

「うっす」

聖剣さんに文句を言われる夏樹に、小梅と銀子が首を傾げる。

「のう。なんで、夏樹はこんな小娘に下手に出てるんじゃ?」

「弱みでも握られているっすか?」

「んなことするわけないでしょう! あんたら、発想が頭悪すぎじゃない!?」

「……口の悪い幼女じゃのう」

「そろそろわからせる必要があるかもしれないっすねぇ」

少々、口の悪い聖剣さんに、小梅と銀子も顔を引き攣らせている。

「落ち着くんだ、ふたりとも」

喧嘩腰の小梅と銀子を、落ち着いた声でジャックが制した。

「なんじゃ、小娘に味方するんか?」

「ジャックさん、そりゃないっすよ」

「そういうわけではない。だが、君たちは、少々誤解をしているようだ。彼女は少々、口が悪いようだが、夏樹のことを心配していることがよくわかる。きっと素直になれないのだろう。夏樹の家族として、ここは理解し、友情を深め、新たな家族を歓迎しようではないか」

ジャックにはわかっていた。

聖剣さんは、弱くなったのなら戦わずに普通にしろと言った。つまり、夏樹に傷ついてほしくないのだ。

それだけわかれば、夏樹を支えてきた人として、ジャックたちと同じ家族であり友人であるとわかる。

「――おっと、自己紹介が遅れてしまった。私は、ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻」

「婚約者のナンシー・ピィーティー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星です」

「…………名前なっが!」

どうやら異世界の聖剣でも、宇宙人の名前は長いようだった。