作品タイトル不明
43「明日が楽しみなんじゃね?」
「よし! んじゃ、打ち上げ……と、言いたいけど、もう疲れた。打ち上げは明日にして、今日は帰ろっか」
「打ち上げはやるのかよ。まあ、いいけどさ」
あくまでも打ち上げをしようとする夏樹に、千手が突っ込んだ。
「いやいや、打ち上げは大事っす! そこのおっさんのおごりでやりましょう!」
「――俺か!?」
「あんたに決まっているじゃないっすか! あんたがか弱い銀子ちゃんを狙ったりするから、マザコン神まで出てきて夏樹くんが大変だったんすよ! 挙句の果てに、神剣を二本ももらって、いいないいなー!」
「……お前を狙ったのは反省しているが、お前だって魔剣を二本も持っているじゃないか! 異世界の魔剣とか、ずるいぞ!」
「ははーん、魔剣太郎も魔剣花子も自分のもんっすからね! そもそも魔剣花子だって、所持しておきながらちゃーんと契約できなかったのが悪いんじゃないっすか!」
「ぐっ……魔剣は気難しい。俺の父も、祖父も契約できなかったんだ! 扱えるだけでも、十分すごいことなのだぞ!」
「私はー、契約者としてー、認められていますけどー?」
「……ぐぬぬ」
「リアルでぐぬぬって言う人初めて見ましたっす!」
「やめい!」
征四郎を煽る銀子の頭を、小梅がチョップした。
「あだっ、あの……小梅さん、舌噛んじゃったんすけど」
「おどれは、そうやってまたそやつを闇堕ちさせるつもりか! もう俺様は面倒なのは嫌じゃからな! 早く帰って、風呂入って、一杯やりたいんじゃ!」
「そういえば、ビールを切ってしまったな。それに関しては謝罪する。弁償もしよう」
征四郎はビールを台無しにしたことを思い出し、財布から五千円札を抜き小梅に手渡す。
「……ま、まさか」
「釣りはいらん」
「ほーれ、見ろ! 銀子! お前の恩師は素晴らしい御仁じゃった! これからは尊敬せい!」
「この酒天使! ちょろすぎるでしょうに!」
ギャーギャー喧嘩を始める銀子と小梅から視線を外し、征四郎は夏樹に頭を下げた。
「この度は申し訳ないことをした。しかも、俺のせいで素盞嗚尊と戦わせることになってしまい……本当にすまない」
「気にしなくていいですよ。あーんなマザコン野郎なんて余裕でしたから」
「……死にかけていた気がするが」
「死んでないから! 一時的に、聖剣さんに呼ばれていただけで、半分くらいしか死んでないから!」
「それはそれで問題な気がするが」
根が真面目なのだろう。
今回の件も、いろいろ追い詰められたせいで行なってしまったようだし、夏樹としては文句を言うことはしない。そもそも征四郎を責める気はないのだ。
異世界にも征四郎のように復讐をしようとした人間がいた。
その復讐者は、それなりの商家をしていたが、裏で汚い事をやっていたのがバレて、国から私財を没収された。
復讐者は、自分の悪事を暴露させた同業者を襲った。それだけなら、よくある話だし、特に気にもしなかったが、あろうことか同業者の青年の前で婚約者の女性を殺し、ふたりの家族も殺した。
その後、堕ちるところまで堕ちた復讐者は、たまたま居合わせた夏樹によって首を刎ねられて人生に幕を閉じたが、もっと早く殺しておけばよかったと思ってしまう人間だった。
もっとも、復讐された人間側もかなり悪どいことをやっていた人間だったので、自業自得ではあるが。
征四郎も、銀子への復讐の手段として家族を傷つけることができたはずだ。しかし、しなかった。
それは、征四郎の根っこが善であるからだ。
「ま、とりあえず、神奈は俺の拠点に来いよ。一晩くらいは、泊めてやる」
千手の申し出に、征四郎は素直に礼を言った。
「で、だ。明日、実家に戻るんだよな?」
千手がにまーっとした笑みを浮かべると、夏樹と祐介もにんまりしていた。
小梅と銀子に至っては、邪悪な笑みを浮かべている。
蓮だけがよくわからず、首を傾げていた。
「そりゃ行くでしょう! 俺たちも行くさぁ! 神剣二本ゲットした征四郎さんをご実家はどんな顔をして迎えるんだろうね! しーかーもー、月読先生とマザコン神から直々にもらった神剣だぜー!」
「幼馴染みの婚約者とか、手のひらくるっくるになること間違いないっすよ!」
「一族総出で土下座じゃな!」
銀子と小梅は言わずもがな、珍しく夏樹もノリノリだ。
「俺は写真撮影してやるよ!」
「じゃあ、僕はスマホで動画撮影かな!」
千手と祐介まで、神奈家に行く気満々だ。
悪ノリしている一同を見て、
「うわぁ」
「……なんて邪悪な奴らだ」
蓮と征四郎は引いていた。